居住用賃貸建物を譲渡した場合の消費税の調整


今回は、居住用賃貸建物を譲渡した場合の消費税の調整を確認してみましょう。

居住用賃貸建物の消費税の調整

居住用賃貸建物を取得については、
原則として消費税の控除ができません。

ただし、取得した後に一定の要件を満たすことで
消費税を控除できる特例(消費税の調整)が2つあります。

1、居住用賃貸建物を課税賃貸用に使用したとき(事務所等として貸したとき)
2、居住用賃貸建物を譲渡したとき

今回は、2の居住用賃貸建物を譲渡したときの調整を確認します。

調整の要件

対象者
課税事業者(消費税を納める必要がある事業者)

要件は次の2つです。

要件1
居住用賃貸建物に係る消費税の控除ができていないこと
(消費税の控除が制限されていること)

要件2
課税事業者(注1)が居住用賃貸建物を
調整期間(注2)に譲渡したこと(注3)

注1、事業を承継した相続人、合併法人、分割承継法人を含みます。
ただし、免税事業者を除きます。

注2、調整期間
居住用賃貸建物の仕入れ等の日から
第三年度の課税期間(注4)の末日までの間

注3、譲渡として取扱う場合(みなし譲渡)を含みます。

注4、第三年度の課税期間
居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の開始の日から
3年を経過する日の属する課税期間

居住用賃貸建物の仕入れ等の日

「居住用賃貸建物の仕入れ等の日」とは、
居住用賃貸建物を購入した場合は購入した日、
自社で建設した場合は建設完了日をいいます。

関係図

調整方法

前提
居住用賃貸建物の取得に支払った消費税 2000万円
課税譲渡等割合 90%
調整前の仕入れに係る消費税額 1200万円

まず、消費税の調整税額を計算します。

消費税の調整税額(1800万円)=
居住用賃貸建物の消費税(2000万円)×課税賃貸割合(90%)

消費税の調整税額(1800万円)を
譲渡等の課税期間(要件を満たした期間)の
仕入れに係る消費税額(1200万円)にプラスします。

消費税の調整
1800万円+1200万円=3000万円

プラスした後の金額(3000万円)を
仕入れに係る消費税額として取扱います。

参考規定

消費税法
居住用賃貸建物を譲渡した場合の仕入れに係る消費税額の調整

2 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額について第三十条第十項の規定の適用を受けた場合において、当該事業者(相続により当該事業者の当該居住用賃貸建物に係る事業を承継した相続人、合併により当該事業を承継した合併法人及び分割により当該居住用賃貸建物に係る事業を承継した分割承継法人を含むものとし、これらの者のうち第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される者を除く。以下この項において同じ。)が当該居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡したとき(当該居住用賃貸建物について第四条第五項の規定により資産の譲渡とみなされる場合を含む。)は、当該譲渡をした居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税譲渡等割合を乗じて計算した金額に相当する消費税額を当該事業者の当該譲渡をした課税期間の仕入れに係る消費税額に加算する。この場合において、当該加算をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

消費税法35条の2

消費税のみなし譲渡

5 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす。
一 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用
二 法人が資産をその役員(法人税法第二条第十五号に規定する役員をいう。)に対して贈与した場合における当該贈与

消費税法4条
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