帳簿と書類の電子保存


今回は、帳簿と書類の電子保存の規定を確認します。

帳簿の電子保存

(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第四条 保存義務者は、国税関係帳簿財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第一項及び第三項並びに第八条第一項及び第四項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律、4条1項

国税関係帳簿から一定のものが除かれます。

(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第二条 法第四条第一項に規定する財務省令で定める国税関係帳簿は、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)又は法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿であって、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、正規の簿記の原則(同法の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿にあっては、複式簿記の原則)に従い、整然と、かつ、明瞭に記録されているもの以外のものとする。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、2条1項

国税関係帳簿から除かれる一定の帳簿とは、「正しく作成された帳簿」以外の帳簿をいいます。正しく作成されていない帳簿は、電子保存の対象にはなりません。正しくない帳簿に電子保存を認めても意味がありませんし、誤解が生じるからでしょう。

「自己が最初の記録段階から一貫して」とは、 帳簿(例えば仕訳帳)の最初からです。個人事業者であれば1/1から12/31までです。1/1から2/28までは紙の帳簿を保存、3/1から12/31までは電子保存という方法は認められません。

財務省令で定めるところにより保存「できる」ため、帳簿の電子保存規定は任意です。財務省令の規定を見ていきます。

2 法第四条第一項の規定により国税関係帳簿(同項に規定する国税関係帳簿をいう。第六項第四号を除き、以下同じ。)に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えようとする保存義務者は、次に掲げる要件(当該保存義務者が第五条第五項第一号に定める要件に従って当該電磁的記録の備付け及び保存を行っている場合には、第三号に掲げる要件を除く。)に従って当該電磁的記録の備付け及び保存をしなければならない。

一 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類(当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項及び第六項第五号において同じ。)以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除くものとし、当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理を他の者(当該電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラムを使用する者を除く。)に委託している場合にはハに掲げる書類を除くものとする。)の備付けを行うこと。
イ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システム(電子計算機処理に関するシステムをいう。以下同じ。)の概要を記載した書類
ロ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書
ニ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類)

二 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。

三 国税に関する法律の規定による当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしておくこと。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、2条2項

1号、2号、3号の3つ。
1号は、スキャナ保存の要件の記事と同じため省略します。

2号は、出力要件です。スキャナ保存の出力要件とほぼ同じです。スキャナ保存の場合は、紙をスキャンして電子保存しますので細かい要件(整然・明瞭・拡大縮小・4ポイント)がありますが、帳簿の出力要件は細かい要件がありません。

3号は、ダウンロード要件です。「データは見せません。持ち帰りも認めません」。このような屁理屈は通りません。以上が帳簿の保存要件です。スキャナ保存と比較するとハードルは低いかもしれません。次は書類の保存要件を確認します。

書類の電子保存

2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律、4条2項

「自己が一貫して電子計算機を使用」とは、一度も紙に出力しないという意味です。一度紙に出力して、紙に情報を追記すると書類の電子保存ではなく、スキャナ保存の対象となります。細かい要件は財務省令に規定されていますので、財務省令を確認します。書類の電子保存も任意規定です。

3 前項<2条2項>の規定は、法第四条第二項の規定により国税関係書類(法第二条第二号に規定する国税関係書類をいう。以下同じ。)に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えようとする保存義務者の当該電磁的記録の保存について準用する。

この場合において、前項中「第五条第五項第一号に定める要件に従って当該電磁的記録の備付け及び」とあるのは、「当該電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(取引年月日その他の日付を検索の条件として設定すること及びその範囲を指定して条件を設定することができるものに限る。)を確保して当該電磁的記録の」と読み替えるものとする。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、2条3項

前項の規定は、施行規則2条2項です。施行規則2条2項は3つ前の引用です。スキャナ保存の要件の記事と同じため省略します。「この場合において~読み替える」は、帳簿の電子保存要件を書類の電子保存要件にそのまま使えないため、一部読み替えることを規定しています。読み替えていきます。

2 法第四条第一項の規定により国税関係帳簿(同項に規定する国税関係帳簿をいう。第六項第四号を除き、以下同じ。)に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えようとする保存義務者は、次に掲げる要件(当該保存義務者が第五条第五項第一号に定める要件に従って当該電磁的記録の備付け及び当該電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(取引年月日その他の日付を検索の条件として設定すること及びその範囲を指定して条件を設定することができるものに限る。)を確保して当該電磁的記録の保存を行っている場合には、第三号に掲げる要件<DL要件>を除く。)に従って当該電磁的記録の備付け及び保存をしなければならない。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、2条2項、読み替え後

読み替え前の「第5条第5項1号に定める要件」とは優良帳簿の要件です。読み替えると、書類のデータを検索できるようにしている場合は、DL要件は不要という意味になります。検索できない場合はDL要件(提示や持ち帰り)を満たす必要があります。

一 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類(当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項及び第六項第五号において同じ。)以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除くものとし、当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理を他の者(当該電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラムを使用する者を除く。)に委託している場合にはハに掲げる書類を除くものとする。)の備付けを行うこと。
イ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システム(電子計算機処理に関するシステムをいう。以下同じ。)の概要を記載した書類
ロ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書
ニ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類)
二 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。
三 国税に関する法律の規定による当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしておくこと。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、2条2項、柱書き

電子帳簿保存法を整理するためには、
まず紙で保存している書類の作成過程や作成方法を確認しましょう。

この書類は帳簿なのか、書類なのか。
保存されているデータは最初からデータなのか、スキャンされたデータなのか。

どういう手順で作成されているか。誰が作成しているのか。いつ作成されているのか。どこに保存されているのか。何年間保存されているのかなどです。

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