帳簿積上げ計算の疑問点


今回は、帳簿積上げ計算の疑問点を確認します。

帳簿積上げ計算の内容

先に規定を確認します。

2 事業者が、その課税期間に係る前項各号に掲げる課税仕入れについて、その課税仕入れの都度、課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の十(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の八)を乗じて算出した金額(当該金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を切り捨て、又は四捨五入した後の金額)を法第三十条第七項に規定する帳簿に記載している場合には、前項の規定にかかわらず、当該金額を合計した金額に百分の七十八を乗じて算出した金額を、同条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とすることができる。

消費税法施行令、施行日令和5年10月1日

帳簿積上げ方式の内容

1、課税仕入れの都度、
仮払消費税額等(国税+地方税)A、
仮払消費税額等(国税+地方税)B、
仮払消費税額等(国税+地方税)Cと計算して帳簿に記載します。

2、A+B+Cを合計した仮払消費税額等(国税+地方税)を計算します。

3、仮払消費税額等(国税+地方税)の合計額×78÷100で
仮払消費税額(国税)を計算して、
「課税仕入れに係る消費税額」とする方法です。

課税仕入れの都度の考え方

課税仕入れの都度の意味は、取引の都度という意味です。
取引を厳密に捉えた場合、日ごとや時間ごとという見方ができます。

仮に、取引の都度を時間ごとと捉えた場合、
朝に納品されたものと夜に納品されたものを
別々に認識(仕訳)することになってしまうため、
帳簿処理が煩雑になります。

そのため、取引を広く捉えて日ごとや時間ごとではなく、
インボイス単位で認識しても問題ないことが
インボイスQ&Aで公表されています。

(注)1 例えば、課税仕入れに係る適格請求書の交付を受けた際に、当該適格請求書を単位として帳簿に仮払消費税額等として計上している場合のほか、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税仕入れにつきまとめて交付を受けた適格請求書を単位として帳簿に仮払消費税額等として計上している場合が含まれます(インボイス通達4-4)。

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A、問123

インボイス通達4-4を確認します。

(帳簿積上げ方式における「課税仕入れの都度」の意義)
4-4令第46条第2項《課税仕入れに係る消費税額の計算》に規定する「その課税仕入れの都度、・・・法第30条第7項に規定する帳簿に記載している場合」には、例えば、課税仕入れに係る適格請求書の交付を受けた際に、当該適格請求書を単位として帳簿に記載している場合のほか、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税仕入れにつきまとめて交付を受けた適格請求書を単位として帳簿に記載している場合がこれに含まれる。

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)

具体的な例だと
取引の都度を納品の都度と考える場合は、
月30回の納品に対して30回仕訳をきります。

この方法だと帳簿処理が煩雑になるため、
30回の納品に対して月1回インボイスとなる請求書を受領する場合は、
そのインボイス(請求書)を基準に仕訳をきったとしても
帳簿積上げ方式として認められるという意味です。

いずれにしても、インボイスを基準に帳簿処理されていれば、
帳簿積上げ方式として認められます。

帳簿積上げ計算の疑問点

インボイスQ&A、問123のなお書きの取扱いを確認します。

なお、帳簿積上げ計算において計上する仮払消費税額等については、受領した適格請求書ではない納品書又は請求書を単位として計上することや継続的に買手の支払基準といった合理的な基準による単位により計上することでも差し支えありません。

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A、問123

例示では、課税仕入れの都度をインボイスを基準にしていましたが、
なお書きでは、インボイスを基準にしなくても差し支えないとしています。
支払基準は現金基準のことで実務を考慮した取扱いだと思います。

インボイス制度後の通達ではどうなっているのでしょうか。
制度後の通達を確認します。

(帳簿積上げ方式における「課税仕入れの都度」の意義)
11―1―10 令第 46 条第2項《課税仕入れに係る帳簿による消費税額の積上げ計算》に規定する「その課税仕入れの都度、……法第 30 条第7項に規定する帳簿に記載している場合」には、例えば、課税仕入れに係る適格請求書その他の書類等の交付又は提供を受けた際に、これらの書類等を単位として帳簿に記載している場合のほか、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税仕入れにつきまとめて交付又は提供を受けた適格請求書その他の書類等を単位として帳簿に記載している場合がこれに含まれる。

消費税法基本通達、令和5年10月1日以後

インボイス通達4-4と同じなので問題ないように思えますが、
なお書きの取扱いは引き継がれていません。
(注2の課税仕入れに係る支払対価の額の計算についても
引き継がれていません。)

引き継がれていないということは、
軽減税率通達やインボイス通達は廃止されますが、
インボイスQ&Aは改定して残すのでしょうね。

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