延払基準の方法により経理しなかつた場合等


今回は、延払基準の方法により経理しなかった場合等を確認してみましょう。

延払基準の経理を止めた場合

税法上の要件を満たす資産の賃貸借については、
資産の売買があったものとして、税金計算が必要です。

資産を貸した側の取引を「リース譲渡」といいます。
延払基準により経理した場合は、資産の売買があったものとした上で、
売上とコストの繰り延べが可能となっています。

繰り延べるためには、延払基準による経理が必要ですが、
仮に延払基準による経理を止めた場合はどうなるでしょうか?

規定を確認してみましょう。

(延払基準の方法により経理しなかつた場合等の処理)
第百八十九条 法第六十五条第一項本文(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期)の規定の適用を受ける居住者がリース譲渡に係る収入金額及び費用の額につき、そのリース譲渡の日の属する年の翌年以後のいずれかの年において同項に規定する延払基準の方法により経理しなかつた場合には、そのリース譲渡に係る収入金額及び費用の額(その経理しなかつた年の前年分以前の各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額及び必要経費に算入されるものを除く。)は、その経理しなかつた年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入する。

所得税法施行令189条第1項、施行日令和6年4月1日

延払経理の経理を1度でも止めた場合は、
止めた年分で繰り延べた売上とコストの残額を
一括計上する必要があります。

例えば、次の状況で3年目に止めた場合、
・繰り延べている売上 400万円
・繰り延べているコスト 280万円
については、3年目に一括計上となります。

内容1年目2年目3年目4年目合計
売上高300万円300万円300万円100万円1000万円
売上原価210万円210万円210万円70万円700万円
利益90万円90万円90万円30万円300万円
まとめ

細かい論点
規定では、「法第65条第1項本文」とありますので、
対象となる規定に、「リース譲渡の特例計算」は含まれていません。

契約解除や移転があった場合

リース譲渡の計算は、2つあります。
・延払基準の方法による経理(賦払金割合による方法、リース期間による方法)
・リース譲渡の特例計算

リース譲渡の特例計算については、
延払基準の方法による経理は、要件とされていません。
(確定申告書に計算明細書の添付が必要)
そのため、一括計上要件が別に規定されています。

具体的には、リース譲渡に係る契約を
・解除
・他の者に移転
した場合には、解除や移転があった年分で
繰り延べた売上とコストの残額を一括計上する必要があります。

繰延要件と一括計上要件のまとめ

特例の内容繰延要件一括計上要件
延払基準の方法による経理(第65条第1項)延払基準の方法による経理延払基準の方法による経理を止める
リース譲渡の特例計算
(第65条第2項)
確定申告書に計算明細書の添付リース契約の解除や移転
まとめ2
参考規定

リース譲渡の契約解除等があった場合

2 法第六十五条第二項の規定の適用を受けている居住者がその適用を受けているリース譲渡に係る契約の解除又は他の者に対する移転をした場合には、そのリース譲渡に係る収入金額及び費用の額(その解除又は移転をした日の属する年の前年分以前の各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額及び必要経費に算入されるものを除く。)は、その解除又は移転をした日の属する年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入する。

所得税法施行令189条第2項、施行日令和6年4月1日

一括計上要件が分かれている理由

リース契約の解除があった場合は、
自動的に延払基準の方法による経理が止まるので、
第65条第1項の特例計算の一括計上要件には、
「リース契約の解除」が規定されていません。

反対に、リース譲渡の特例計算については、
延払基準の方法による経理が要件となっていないため、
第65条第2項の特例計算の一括計上要件に、
「リース契約の解除」が規定されています。

リース契約の解除(2項の要件)
 ↓
延払基準の方法による経理の停止(1項の要件)

リース譲渡の取扱い
・原則 一括計上(売買処理)
・例外1 延払基準による経理→止めた場合は一括計上
・例外2 リース譲渡の特例計算→契約解除等は一括計上

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