延納できる所得税の計算


今回は、延納できる所得税(延払条件付譲渡の延納)の計算を確認してみましょう。

延納できる所得税は2つ

所得税には、2つの延納(納付期限を延期する特例)があります。
・通常の延納
・延払条件付譲渡の延納(山林、不動産等を売却した場合の特例)

延払条件付譲渡の延納のポイントは、次の2つです。
・延納できる所得税は、所得税の1/2超
・納付延期は、5年以内

今回は、延納できる所得税の計算を確認してみましょう。

参考規定はこちら↓

4 第一項に規定する延払条件付譲渡に係る税額とは、同項第一号に規定する申告書に記載された第百二十条第一項第三号に掲げる所得税の額のうち、その延払条件付譲渡に係る契約において定められている支払の期日がその年の翌年以後に到来する延払条件付譲渡に係る賦払金の額(その年において既に支払を受けたものを除く。)の合計額に対応する山林所得の金額又は譲渡所得の金額に係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額をいう。

所得税法第132条第4項、施行日令和6年5月17日

延納できる所得税(延払条件付譲渡に係る税額)は、
確定申告書に記載した所得税のうち、
延納の対象となる山林所得や譲渡所得に係る部分をいいます。
詳しくは政令を確認する必要があります。

延払条件付譲渡に係る税額の計算

先に参考規定を確認してみましょう。

(延払条件付譲渡に係る税額の計算等)
第二百六十六条 法第百三十二条第四項(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額とする。
一 法第百三十二条第一項第一号に規定する申告書に記載された法第百二十条第一項第三号(確定所得申告に係る所得税額)に掲げる所得税の額
二 前号に規定する申告書に記載された法第百二十条第一項第一号に掲げる課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額から、これらの金額の計算の基礎となつた譲渡所得の金額(法第三十三条第三項第二号(譲渡所得の金額)に掲げる所得に係る部分については、その金額の二分の一に相当する金額)又は山林所得の金額に、イに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額を控除した金額につき法第二編第三章(税額の計算)の規定に準じて計算した所得税の額
イ 当該課税総所得金額又は課税山林所得金額の計算の基礎となつた譲渡所得又は山林所得に係る総収入金額
ロ 法第百三十二条第四項に規定する賦払金の額の合計額

所得税法施行令第266条第1項、施行日令和6年4月1日

算式で書きますと
・延払条件付譲渡に係る税額=第1号の金額-第2号の金額
となります。

第1号は、確定申告書に記載した所得税です。
第2号で、延納できない所得税を計算します。

まとめると
・延納できる所得税=所得税-延納できない所得税
となります。

延納できない所得税

算式で書きますと
課税される所得(課税総所得金額等)
-(譲渡所得や山林所得×ロの金額÷イの金額=延納できる部分)
=延納できない部分
となります。

イの金額は譲渡所得や山林所得の売却収入、
ロの金額は売却した年にまだ回収していない代金となります。

所得全体から延納できる部分をマイナスして延納できない部分を計算します。最後に延納できない部分に対応する所得税を計算します。

計算例

次の場合で計算を確認してみましょう。
・不動産の売却収入 1億円
・売却した不動産のコスト 1000万円
・売却した年に回収した代金 2000万円(8000万円は未回収)
・税率 20%
・延払条件付譲渡の延納の要件を満たしている。
・その他の所得等は考慮しない。

1、延納しない場合の所得税
・売却代金1億円-コスト1000万円=売却益9000万円
・売却益9000万円×税率20%=所得税1800万円

2、延納できない部分の所得税
・売却益9000万円-(売却益9000万円×未回収8000万円÷売却収入1億円=7200万円)=延納できない課税所得1800万円×税率20%=360万円

3、延納できる所得税
所得税1800万円-延納できない所得税360万円=延納できる所得税1440万円

代金の未回収部分の8,000万円に対応する所得税1,440万円については、5年以内の延納が可能となりますが、延納する所得税に応じて担保の提供が必要となります。

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