従たる給与についての扶養控除等申告書


今回は、「従たる給与についての扶養控除等申告書」について確認します。
実務で見たことはありません。

何のための書類?

前回の扶養控除等申告書については、主たる勤務先にしか提出できません。
そのため、2か所で勤務している場合は、
主たる勤務先A社に扶養控除等申告書を提出するとA社は「甲欄徴収」、
従たる勤務先B社は扶養控除等申告書が提出できないため、
B社は「乙欄徴収」となります。

この場合に、「主たる勤務先の給料<一定の所得控除」となる場合は、
所得控除の余りが生じます。この余りを従たる勤務先B社で使用するための手続きが「従たる給与についての扶養控除等申告」です。

例えば、次のような場合です。
主たる勤務先A社に「扶養控除等申告書」を提出した。
主たる勤務先A社の給与収入300万円<一定の所得控除400万円
 → 所得控除の余りが発生
従たる勤務先に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出した。

この場合に、従たる勤務先B社の給与収入200万円から、
余りを考慮した源泉徴収(乙欄)が可能となります。

乙欄徴収から控除できる金額

乙欄徴収から控除できる金額として、所得税法の月額表に「扶養親族等1人ごとに1,580円」と規定されていますが、タックスアンサー(源泉徴収税額表)には1,610円と記載されています。この30円の差は復興特別所得税です。1,580円×2.1%=33.18円≒30円。日額表は「扶養親族等1人ごとに50円」で変更ありません。

提出できる条件と記載方法

「主たる勤務先の給料<一定の所得控除となる場合」の具体的な判定方法については、「従たる給与についての扶養控除等申告書」のA欄(主たる給与の見積額等)に次の情報を記載して行います。

  • 主たる給与収入の見積額
  • 1の「給与所得控除後の給与所得」
  • 1から控除される社会保険料の見積額など
  • 配偶者(特別)控除、扶養控除、基礎控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除の合計額
  • 3+4=一定の所得控除

5の一定の所得控除>2の給与所得となる場合(所得控除の余りが生じる場合)、
「従たる給与についての扶養控除等申告書」の提出が可能です。

B欄には、この申告書の提出先の給与(従たる給与)から控除を受ける人の情報を記載します。B欄の人数が3人であれば、1,610円×3人=4,830円を源泉徴収税額からマイナスします。

C欄には、他の給与(主たる給与)から控除を受ける人の情報を記載します。主たる勤務先と従たる勤務先で、重複控除されないようにするためです。

参考規定など

国税庁、タックスアンサー
No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm

[手続名]従たる給与についての扶養控除等の(異動)申告
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_07.htm

令和5年分 従たる給与についての扶養控除等の(異動)申告書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r5bun_08.pdf

(従たる給与についての扶養控除等申告書)
第百九十五条 国内において二以上の給与等の支払者から給与等の支払を受ける居住者は、主たる給与等の支払者から支払を受けるその年中の給与等の金額の見積額につき第二十八条第二項(給与所得の金額)及び第百八十八条(給与等から控除される社会保険料等がある場合の徴収税額の計算)の規定に準じて計算した金額として政令で定めるところにより計算した金額が障害者控除の額、寡婦控除の額、ひとり親控除の額、勤労学生控除の額、源泉控除対象配偶者について控除を受ける配偶者控除の額又は配偶者特別控除の額、扶養控除の額及び基礎控除の額の合計額に満たないと見込まれる場合には、その年において、次に掲げる事項を記載した申告書を、主たる給与等の支払者以外の給与等の支払者(以下この項において「従たる給与等の支払者」という。)を経由して、当該従たる給与等の支払者から支払を受ける給与等に係る所得税の第十七条(源泉徴収に係る所得税の納税地)の規定による納税地の所轄税務署長に提出することができる。
一 当該従たる給与等の支払者の氏名又は名称
二 源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族の氏名及び個人番号(個人番号を有しない者にあつては、氏名)
三 源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族のうち、当該従たる給与等の支払者から支払を受ける給与等について第百八十三条第一項(源泉徴収義務)の規定により徴収される所得税の額の計算の基礎としようとするものの氏名
四 前号に規定する源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族が非居住者である親族である場合には、その旨
五 その他財務省令で定める事項
2 前項の規定による申告書を提出した居住者は、その年の中途において当該申告書に記載した事項について異動を生じた場合には、同項の給与等の支払者からその異動を生じた日後最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、その異動の内容その他財務省令で定める事項を記載した申告書を、当該支払者を経由して、その給与等に係る所得税の第十七条の規定による納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
3 前項に定めるもののほか、第一項の規定による申告書を提出した居住者が、その年において提出した給与所得者の扶養控除等申告書に記載した前条第一項第六号に規定する源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族を第一項第三号に規定する源泉控除対象配偶者又は控除対象扶養親族として同項の規定による申告書に追加して記載する必要が生じた場合の申告その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
4 第一項又は第二項の規定による申告書に第一項第四号に掲げる事項の記載をした居住者は、政令で定めるところにより、当該記載がされた者が当該居住者の親族に該当する旨を証する書類を提出し、又は提示しなければならない。
5 第一項又は第二項の規定による申告書は、従たる給与についての扶養控除等申告書という。

所得税法

従たる給与についての扶養控除等申告書が提出されている場合には、当該申告書に記載された扶養親族等の数に応じ、扶養親族等1人ごとに1,580円を、上の各欄によつて求めた税額から控除した金額

別表第二 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)(第百八十五条、第百八十六条、第百八十九条関係)(七)

従たる給与についての扶養控除等申告書が提出されている場合には、当該申告書に記載された扶養親族等の数に応じ、扶養親族等1人ごとに50円を、上の各欄によつて求めた税額から控除した金額

別表第三 給与所得の源泉徴収税額表(日額表)(第百八十五条関係)(七)

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