所得税のみなし譲渡


所得税の譲渡所得は、原則として、
売った金額-(取得費+譲渡費用)で計算します。

売った金額が0円の場合、譲渡所得の金額はマイナスになりますが、
所得税の計算上、売った時の価額で計算する特例があります。
「みなし譲渡」といいます。

みなし譲渡の対象資産と条件

みなし譲渡の対象資産は、土地・建物などの不動産、株式、
事業所得に該当しない山林等です。棚卸資産はみなし譲渡の対象外です。

みなし譲渡の対象となる条件は、次の5つです。
1、法人に対する贈与
2、限定承認を選択した相続
3、法人に対する遺贈
4、個人に対する包括遺贈のうち限定承認を選択したもの
5、法人に対する低額譲渡(時価の1/2未満)

法人に対する低額譲渡の計算例

5の法人に対する低額譲渡の計算例を確認します。
例えば、60万円で取得した株式を法人に40万円で売った場合

ケース1、時価が70万円の場合
低額譲渡の判定
売った金額40万円≧時価70万円×1/2=35万円
低額譲渡に該当しないため、実際の金額で計算します。

譲渡所得の計算
売った金額40万円-取得費60万円=△20万円

ケース2、時価が150万円の場合
低額譲渡の判定
売った金額40万円<時価150万円×1/2=75万円
低額譲渡に該当するため、時価で売ったものとして計算します。

譲渡所得の計算
時価150万円-取得費60万円=90万円

参考規定

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

所得税法

譲渡対価<山林所得、譲渡所得、雑所得の必要経費又は(取得費+譲渡費用)
→ 売った金額より簿価の方が高い。

(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
第百六十九条 法第五十九条第一項第二号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。

所得税法施行令
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