所得税のリースバック


今回は、所得税のリースバックを確認してみましょう。

リースバックとは

賃貸借契約のうち、税法上の要件を満たすものについては、
「リース取引」となり、資産の売買処理が必要となります。

このリース取引については、さらに
・所有権が移転するもの
・所有権が移転しないもの
の2つに分かれますが、
この他に「リースバック」と呼ばれる特殊なリース取引があります。

リースバックとは、
賃貸(リース取引)を前提とする資産の売買をいいます。
(資産を売却しますが、リース取引で資産が戻ってきます。)

リースバックの要件を満たす場合、
資産の売買ではなく、金銭の貸し借りがあったものとして
所得税の計算が必要となります。

リースバックの考え方

資産の所有者は、資金を確保するために
リース会社等に資産を売却します。

売却の仕訳例

借方貸方
現預金 1000万円資産 800万円
売却益 200万円
売却の仕訳例

売却後、リース会社等から資産を借ります。
(リース取引に該当するものに限ります。)

借方貸方
リース資産 1100万円リース債務 1100万円
リース取引の仕訳例

2つの取引を合わせてみましょう。

借方貸方
現預金 1000万円資産 800万円
売却益 200万円
リース資産 1100万円リース債務 1100万円
仕訳のまとめ

売却した資産の所有権はリース会社等に移転しますが、
賃貸借(リース取引)により売却前と同様に資産の使用が可能となるため、
資産の売買はなかったと考えることができます。

借方のリース資産と貸方の売却資産を消してみましょう。
借方の現預金と貸方のリース債務(実質借入金)が残ります。

借方貸方
現預金 1000万円リース債務(借入金) 1100万円
リースバックの場合

お金を借りた状況と似ています。

上記の状況が
・実質的に金銭の貸し借りと認定
される場合は、リースバックの処理が必要となります。

反対に実質的に金銭の貸し借りと認定されない場合は、
リースバックではなく
・資産の売買
・資産の賃貸借(リース取引)
の2つの処理が必要となります。

参考規定、リースバックの取扱い

2 居住者が譲受人から譲渡人に対する賃貸(リース取引に該当するものに限る。)を条件に資産の売買を行つた場合において、当該資産の種類、当該売買及び賃貸に至るまでの事情その他の状況に照らし、これら一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められるときは、当該資産の売買はなかつたものとし、かつ、当該譲受人から当該譲渡人に対する金銭の貸付けがあつたものとして、当該譲受人又は譲渡人である居住者の各年分の各種所得の金額を計算する。

所得税法第67条の2第2項、施行日令和6年5月17日
リースバックに該当しない場合

実質的に金銭の貸し借りと認定されない場合は、
リースバックの処理は不要となります。

認定されない例については、
所得税基本通達で2つ挙げられています。

1、先にリース会社等が資産を購入するのではなく、
資産を売却する事業者が購入することに相当の理由がある。

相当の理由の例
・資産を利用する事業者が購入した方が効率が良い。
・通関事務等に知識が必要となる。
・売却する事業者が購入した方が安い。

相当の理由がある場合は、
事業者が立替金や仮払金等として経理した上で、
購入価額と同額でリース会社等に売却する必要があります。

2、資産の管理事務の省力化等

資産を所有すると各種税金の支払いや
メンテナンスが必要となります。

管理事務を省くために資産の売却をして
賃借(リース)することは、
お金を借りることが目的ではないため、
リースバックの処理は不要となります。

参考通達、リースバックに該当しない場合

(金銭の貸借とされるリース取引の判定)
67の2-4 法第67条の2第2項に規定する「一連の取引」が同項に規定する「実質的に金銭の貸借であると認められるとき」に該当するかどうかは、取引当事者の意図、その資産の内容等から、その資産を担保とする金融取引を行うことを目的とするものであるかどうかにより判定する。したがって、例えば、次に掲げるようなものは、これに該当しないものとする。(平19課個2-31、課審4-44追加)
(1) 譲渡人が資産を購入し、当該資産をリース取引(同条第3項に規定するリース取引をいう。以下67の2-5において同じ。)に係る契約により賃借するために譲受人に譲渡する場合において、譲渡人が譲受人に代わり資産を購入することに次に掲げるような相当な理由があり、かつ、当該資産につき、立替金、仮払金等として経理し、譲渡人の購入価額により譲受人に譲渡するもの
イ 多種類の資産を導入する必要があるため、譲渡人において当該資産を購入した方が事務の効率化が図られること。
ロ 輸入機器のように通関事務等に専門的知識が必要とされること。
ハ 既往の取引状況に照らし、譲渡人が資産を購入した方が安く購入できること。
(2) 業務の用に供している資産について、当該資産の管理事務の省力化等のために行われるもの

所得税基本通達67の2-4
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