所得税の分割納付の特例


今回は、所得税の分割納付の特例を確認してみましょう。

分割納付の特例

所得税は、原則として3月15日までに一括で納付する必要があります。
例外で分割納付(延納)も認められています。

ただし、延納については、本来納付する所得税の1/2以上を3月15日までに納付する必要があり、1/2以上納付できない場合は利用できません。そのため、別の延納制度(延払条件付譲渡の延納)が用意されています。

延払条件付譲渡の延納の主な要件は、次の6つです。
・山林所得、譲渡所得の対象となる資産を売却した。
・売却の条件が特例の要件を満たしている。
・確定申告書を提出期限までに提出している。
・延納の税額が確定申告書に記載した税額の1/2を超える(割合基準)。
・延納の税額が30万円を超える(金額基準)。
・延納の申請と担保提供が必要。

2つ目の特例の要件は、次の3つです。
・3回以上の分割
・資産の引渡し翌日から最後の代金を回収する期日までの期間が2年以上
・資産の引渡し期日までに支払期日が到来する代金が、売却代金の2/3以下

不動産の売却代金を5年間で1/5ずつ受け取るような場合は、特例の要件を満たします。

延納の要件を全て満たした場合、5年以内の延納が可能となります。

担保の提供が必要

延納には、延納する所得税に相当する担保の提供が必要となります。
(1000万円の延納をする場合は、1000万円相当の担保が必要)

例外として
・延納する所得税が100万円以下で延納期間が3年以下
・延納期間が3月以下
の場合は、担保提供が不要となります。

参考規定

延払条件付譲渡に係る所得税額の延納

(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納)
第百三十二条 税務署長は、居住者が山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の延払条件付譲渡をした場合において、次に掲げる要件のすべてを満たすときは、第一号に規定する申告書に係る第百二十八条(確定申告による納付)又は第百二十九条(死亡の場合の確定申告による納付)の規定により納付すべき所得税の額(延払条件付譲渡に係る税額が当該所得税の額に満たない場合には、その延払条件付譲渡に係る税額)の全部又は一部につき、その者(その相続人を含む。)の申請により、五年以内の延納を許可することができる。
一 その延払条件付譲渡をした日の属する年分の所得税に係る第百二十条第一項(確定所得申告)の規定による申告書(第百二十六条第一項(確定申告書を提出すべき者が出国をする場合の確定申告)の規定に該当して提出すべきものを除く。)又は第百二十五条第一項(年の中途で死亡した場合の確定申告)の規定による申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出したこと。
二 延払条件付譲渡に係る税額が前号に規定する申告書に記載された第百二十条第一項第三号に掲げる所得税の額の二分の一に相当する金額を超えること。
三 延払条件付譲渡に係る税額が三十万円を超えること。

所得税法第132条第1項、施行日令和6年5月17日

延納の許可

2 税務署長は、前項の規定による延納の許可をする場合には、その延納に係る所得税の額に相当する担保を徴さなければならない。ただし、その延納に係る所得税につき、その額が百万円以下でその延納の期間が三年以下である場合又は当該期間が三月以下である場合は、この限りでない。

所得税法第132条第2項、施行日令和6年5月17日

延払条件付譲渡とは

3 第一項に規定する延払条件付譲渡とは、次に掲げる要件に適合する条件を定めた契約に基づき当該条件により行われる譲渡をいう。
一 月賦、年賦その他の賦払の方法により三回以上に分割して対価の支払を受けること。
二 その譲渡の目的物の引渡しの期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が二年以上であること。
三 その他政令で定める要件

所得税法第132条第3項、施行日令和6年5月17日

延払条件付譲渡に係る要件

(延払条件付譲渡に係る要件)
第二百六十五条 法第百三十二条第三項第三号(延払条件付譲渡の要件)に規定する政令で定める要件は、当該契約において定められているその譲渡の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその譲渡の対価の額の三分の二以下となつていることとする。

所得税法施行令第265条、令和6年4月1日

延払条件付譲渡に係る税額

4 第一項に規定する延払条件付譲渡に係る税額とは、同項第一号に規定する申告書に記載された第百二十条第一項第三号に掲げる所得税の額のうち、その延払条件付譲渡に係る契約において定められている支払の期日がその年の翌年以後に到来する延払条件付譲渡に係る賦払金の額(その年において既に支払を受けたものを除く。)の合計額に対応する山林所得の金額又は譲渡所得の金額に係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額をいう。

所得税法第132条第4項、施行日令和6年5月17日


編集後記
延払条件付譲渡の延納については、延納の許可申請書の提出が必要となりますが、許可申請書のデータが国税庁のウェブサイトで見つからず。

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