今回は、所得税の国外転出時課税と納税の猶予を受けている場合の再計算のうち、7つの要件を確認してみましょう。
目次
納税猶予を受けている場合の再計算
以前、所得税の国外転出時課税と納税猶予を受けている場合の再計算の概要を確認しました。
参考リンク
・所得税の国外転出時課税と納税の猶予を受けている場合の再計算
今回は、再計算できる7つの場合を確認してみましょう。
1、有価証券等に関するもの
2から4まで、未決済の信用取引等に関するもの
5から7まで、未決済のデリバティブ取引に関するもの
有価証券等の売却収入が減った場合
1つ目は、有価証券等に関するものです。
要件は、1が2を下回るときです。
1、有価証券等の売却収入や限定相続等の時の価額
2、国外転出の時の価額
例えば、実際の売却収入が150万円、国外転出時の価額が200万円の場合
1、実際の売却収入 150万円
2、国外転出時の価額 200万円
3、判定 1<2となるため、再計算可能です。
有価証券を買ったときの金額が130万円の場合、国外転出の時の計算は、
・売却収入200万円-買った金額130万円=売却益70万円
となります。
実際の売却収入が国外転出の時の価額より下がっていますので、再計算しますと、
・実際の売却収入150万円-買った金額130万円=売却益20万円
となります。
未決済の信用取引等の利益が減った場合
・未決済の信用取引等を実際に決済した場合の利益
・限定相続等時みなし信用取引等利益額
2つのいずれかが、「国外転出時みなし信用取引等利益額」を下回るときが要件となります。
上記の有価証券等の取扱い(値下がりした場合)と同じです。
未決済の信用取引等の損失が増えた場合
要件は、1が2を上回るときです。
1、信用取引等損失額
2、国外転出時みなし信用取引等損失額
信用取引等損失額とは、
・未決済の信用取引等を実際に決済した場合の損失
・限定相続等時みなし信用取引等利益額のマイナス(=損失)
の2つをいいます。
未決済の信用取引等の利益が発生していた場合と表現は少し異なりますが、内容は同じです。値下がりしていれば再計算が可能です。
未決済の信用取引等の利益が損失に変わった場合
要件は、国外転出の時に信用取引等の利益が発生した後に、信用取引等損失額が発生した場合です。
国外転出の時は利益(プラス)だったけど、決済したら損失(マイナス)だったという場合です。
デリバティブ取引は信用取引等と同じ。
下記3つの未決済のデリバティブ取引については、未決済の信用取引等と同じです。値下がりしている場合は、再計算が可能です。
5、利益が減った場合
6、損失が増えた場合
7、利益が損失に変わった場合
参考規定
所得税の国外転出時課税と納税の猶予を受けている場合の再計算
7つの要件
一 当該有価証券等の譲渡に係る譲渡価額又は限定相続等の時における当該有価証券等の価額に相当する金額が当該国外転出の時における第一項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める価額に相当する金額(当該国外転出の時後に当該有価証券等を発行した法人の合併、分割その他の政令で定める事由が生じた場合には、当該金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額。第十項第一号において同じ。)を下回るとき。
所得税法第60条の2第8項、施行日令和6年6月12日
二 当該未決済信用取引等の決済によつて生じた利益の額に相当する金額又は限定相続等時みなし信用取引等利益額(当該限定相続等の時に当該未決済信用取引等を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した利益の額に相当する金額をいう。次条第八項第二号において同じ。)が、国外転出時みなし信用取引等利益額(当該国外転出の時における第二項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める利益の額に相当する金額をいう。第四号並びに第十項第二号及び第四号において同じ。)を下回るとき。
三 信用取引等損失額(当該未決済信用取引等の決済によつて生じた損失の額に相当する金額又は限定相続等時みなし信用取引等損失額(当該限定相続等の時に当該未決済信用取引等を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した損失の額に相当する金額をいう。次条第八項第三号において同じ。)をいう。次号において同じ。)が、国外転出時みなし信用取引等損失額(当該国外転出の時における第二項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める損失の額に相当する金額をいう。第十項第三号において同じ。)を上回るとき。
四 信用取引等損失額が生じた未決済信用取引等につき、国外転出時みなし信用取引等利益額が生じていたとき。
五 当該未決済デリバティブ取引の決済によつて生じた利益の額に相当する金額又は限定相続等時みなしデリバティブ取引利益額(当該限定相続等の時に当該未決済デリバティブ取引を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した利益の額に相当する金額をいう。次条第八項第五号において同じ。)が、国外転出時みなしデリバティブ取引利益額(当該国外転出の時における第三項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める利益の額に相当する金額をいう。第七号並びに第十項第五号及び第七号において同じ。)を下回るとき。
六 デリバティブ取引損失額(当該未決済デリバティブ取引の決済によつて生じた損失の額に相当する金額又は限定相続等時みなしデリバティブ取引損失額(当該限定相続等の時に当該未決済デリバティブ取引を決済したものとみなして財務省令で定めるところにより算出した損失の額に相当する金額をいう。次条第八項第六号において同じ。)をいう。次号において同じ。)が、国外転出時みなしデリバティブ取引損失額(当該国外転出の時における第三項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める損失の額に相当する金額をいう。第十項第六号において同じ。)を上回るとき。
七 デリバティブ取引損失額が生じた未決済デリバティブ取引につき、国外転出時みなしデリバティブ取引利益額が生じていたとき。