所得税の定額減税の法案を確認してみよう。


今回は、所得税の定額減税の法案を確認してみましょう。

所得税法等の一部を改正する法律案は、こちら↓
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21309001.htm

1回目の計算

規定を確認してみましょう。

(令和六年六月以後に支払われる給与等に係る特別控除の額の控除等)
 第四十一条の三の七 令和六年六月一日において給与等(所得税法第百八十三条第一項に規定する給与等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の支払者から主たる給与等(給与所得者の扶養控除等申告書(同法第百九十四条第八項に規定する給与所得者の扶養控除等申告書をいう。第三項第一号及び第二号並びに次条第二項第二号において同じ。)の提出の際に経由した給与等の支払者から支払を受ける給与等をいう。以下この項及び次項において同じ。)の支払を受ける者である居住者の同日以後最初に当該支払者から支払を受ける同年中の主たる給与等(同年分の所得税に係るものに限り、同法第百九十条の規定の適用を受けるものを除く。次項及び第五項において「第一回目控除適用給与等」という。)につき同法第四編第二章第一節の規定により徴収すべき所得税の額は、当該所得税の額に相当する金額(以下この項及び次項において「第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額」という。)から給与特別控除額を控除した金額に相当する金額とする。この場合において、当該給与特別控除額が当該第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額を超えるときは、当該控除をする金額は、当該第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額に相当する金額とする。

所得税法等の一部を改正する法律案

定額減税の基準日は令和6年6月1日。
6月1日に在籍しているかどうかがポイントです。


2024/4/5、訂正
基準日の在職者の判定については、
在籍の他に、扶養控除等申告書の提出が必要となります。

「給与所得者の扶養控除等申告書は6月1日までに提出が必要?」と
気になっていましたが、提出期限は設けられていないため、
6月1日までに提出する必要はありません。

ただし、定額控除の規定では、
「同日以後最初に当該支払者から受ける同年中の主たる給与等」
とありますので、6月1日以後最初の給与支払日までに、
「扶養控除等申告書」の提出が必要となります。

カッコ書きで、
「年末調整の規定の適用を受けるものを除く。」とあります。
6月1日以後最初の給与の支払いであっても、
年末調整となる場合は、月次給与の定額減税ではなく、
年末調整の定額減税を計算する必要があります。

源泉所得税の計算は、
・通常の源泉徴収税額-給与特別控除額(定額減税のこと)
で計算します。

例えば、次の場合
・通常の源泉徴収税額、35,000円
・給与特別控除額、30,000円

源泉徴収税額は、35,000円-30,000円=5,000円となります。

通常の源泉徴収税額<給与特別控除額の場合は、
控除額は、通常の源泉徴収税額となります。
(還付にはなりません。)

例えば、次の場合
・通常の源泉徴収税額、25,000円
・給与特別控除額、30,000円

源泉徴収税額は、
25,000円-25,000円(注)=0円となります。
注、通常25,000円<特別控除30,000円 ∴25,000円

控除しきれなかった5,000円については、
次の月次給与の計算に持ち越します。

2回目以降の計算

規定を確認してみましょう。

2 前項の場合において、給与特別控除額を第一回目控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額から控除してもなお控除しきれない金額(以下この項において「第一回目控除未済給与特別控除額」という。)があるときは、当該第一回目控除未済給与特別控除額を、前項の居住者が第一回目控除適用給与等の支払を受けた日後に当該第一回目控除適用給与等の支払者から支払を受ける令和六年中の主たる給与等(同年分の所得税に係るものに限り、所得税法第百九十条の規定の適用を受けるものを除く。以下この項において「第二回目以降控除適用給与等」という。)につき同法第四編第二章第一節の規定により徴収すべき所得税の額に相当する金額(以下この項において「第二回目以降控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額」という。)から順次控除(それぞれの第二回目以降控除適用給与等に係る控除前源泉徴収税額に相当する金額を限度とする。)をした金額に相当する金額をもつて、それぞれの第二回目以降控除適用給与等につき同節の規定により徴収すべき所得税の額とする。

所得税法等の一部を改正する法律案

1回目の計算で定額減税が控除しきれない場合、
2回目の計算で控除しきれなかった定額減税
(第一回目控除未済給与特別控除額)をマイナスします。

例えば、次の場合
・6月の源泉徴収税額、12,000円
・7月の源泉徴収税額、13,000円
・8月の源泉徴収税額、11,000円
・給与特別控除額、30,000円

6月の源泉徴収税額
12,000円-12,000円(上限12,000円)=0円
控除しきれない金額=
30,000円-12,000円=18,000円

7月の源泉徴収税額
13,000円-13,000円(上限13,000円)=0円
控除しきれない金額
18,000円-13,000円=5,000円

8月の源泉徴収税額
11,000円-5,000円=6,000円
となります。

2回目以降の計算は、
規定上「支払を受けた日後」とありますので、
6月に2回給料を受け取る場合(例えば月次給与と賞与)は、
2回目も定額減税を計算する必要があります。

給与特別控除額(定額減税)

規定を確認してみましょう。

 3 前二項に規定する給与特別控除額は、三万円(次に掲げる者がある場合には、三万円にこれらの者一人につき三万円を加算した金額)とする。
 一 給与所得者の扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者(所得税法第二条第一項第三十三号の四に規定する源泉控除対象配偶者をいい、居住者に限る。第四十一条の三の九第三項第一号において同じ。)で合計所得金額の見積額が四十八万円以下である者
 二 給与所得者の扶養控除等申告書に記載された控除対象扶養親族(所得税法第二条第一項第三十四号の二に規定する控除対象扶養親族をいい、居住者に限る。次条第二項第二号及び第四十一条の三の九第三項第二号において同じ。)
 三 第五項に規定する申告書に記載された同一生計配偶者(第一号に掲げる者を除く。)
 四 第五項に規定する申告書に記載された扶養親族(第二号に掲げる者を除く。)

所得税法等の一部を改正する法律案

月次給与計算上の定額減税を「給与特別控除額」といいます。

原則は、3万円。

次の4パターンに該当する人がいる場合は、
1人につき+3万円となります。

1、源泉控除対象配偶者(居住者限定)、合計所得金額見積額48万円以下
2、控除対象扶養親族(居住者限定)
(合計所得金額については、扶養親族の定義で48万円以下と規定あり)

3、「定額減税を受けるための申告書」に記載された
同一生計配偶者(1を除く。)
4、「定額減税を受けるための申告書」に記載された
扶養親族(2を除く。)

例えば、次の場合は12万円となります。
・本人 3万円
・源泉控除対象配偶者 3万円
・控除対象扶養親族 3万円
・扶養親族 3万円

定額減税を受けるための申告書

規定を確認してみましょう。

 5 給与等の支払を受ける第一項の居住者は、第一回目控除適用給与等の支払を受ける日までに、第三項第三号又は第四号に掲げる者に係る同項に規定する給与特別控除額について第一項又は第二項の規定の適用を受けようとする旨、これらの者の氏名及び個人番号(個人番号を有しない者にあつては、氏名)その他の財務省令で定める事項を記載した申告書を、第一項の給与等の支払者を経由して、その給与等に係る所得税の所得税法第十七条の規定による納税地(同法第十八条第二項の規定による指定があつた場合には、その指定をされた納税地。次条第四項において同じ。)の所轄税務署長に提出することができる。

所得税法等の一部を改正する法律案

「定額減税を受けるための申告書」については、
提出期限が設けられています。

提出期限は、
「6月1日以後の1回目の給与の支払を受ける日」まで。

提出先は、給与等の支払者(会社など)です。

「定額減税を受けるための申告書」は任意規定となっていますので、
提出期限までに提出できなかった場合は、
年末調整で定額減税を計算することになります。

源泉控除対象配偶者や扶養親族が重複する場合

源泉控除対象配偶者や扶養親族が重複する場合については、
政令に規定されます。

(政令への委任)
第四十一条の三の十 第四十一条の三の三第三項から第七項まで及び第四十一条の三の四から前条までに定めるもののほか、一の居住者の配偶者がその居住者の同一生計配偶者に該当し、かつ、他の居住者の扶養親族にも該当する場合その他の場合における同一生計配偶者及び扶養親族の所属の判定に必要な事項、この節の規定の適用がある場合における所得税法その他の法令の規定の技術的読替えその他この節の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

所得税法等の一部を改正する法律案

現行の政令に
・2以上の居住者がある場合の同一生計配偶者の所属
・2以上の居住者がある場合の扶養親族の所属
・居住者が再婚した場合における同一生計配偶者等の特例
の規定がありますので、
定額減税についても同様の規定になるのでしょう。

参考資料

令和6年分所得税の定額減税Q&A
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0024001-021.pdf

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