所得税の減価償却の概要


今回は、所得税の減価償却について確認します。
細かい内容や具体的な計算方法については省略しています。

減価償却の目的

減価償却の目的は、「適正な期間損益計算」を行うことです。
損益計算すれば、自分(自社)が行っている事業が
儲かっているか儲かっていないかが確認できます。

損益計算は人為的に区切ってします。通常は1年です。
区切ると期間損益計算となり、減価償却の考え方が生じます。

今回は所得税の減価償却を確認します。
法人税の減価償却も基本は同じですが、考え方が異なるため今回は省略します。

減価償却の対象となる資産

法令の「減価償却資産」や「固定資産」を確認します。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十八 固定資産 土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産(山林を除く。)で政令で定めるものをいう。

所得税法

固定資産とは、土地、借地権、減価償却資産、電話加入権等です。
政令を確認します。

(固定資産の範囲)
第五条 法第二条第一項第十八号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券、資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する暗号資産及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるものとする。
 土地(土地の上に存する権利を含む。)
 次条各号に掲げる資産
 電話加入権
 前三号に掲げる資産に準ずるもの

所得税法施行令

固定資産には、次の資産を含みません。

  • 棚卸資産(売るための商品)
  • 有価証券(株式など)
  • 暗号資産(通貨のようなもの)
  • 繰延資産(税法特有の資産)

棚卸資産を除きます。同じ車両であっても、売り物である車両は棚卸資産、売り物でない車両は固定資産になります。次に減価償却資産を確認します。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十九 減価償却資産 不動産所得若しくは雑所得の基因となり、又は不動産所得、事業所得、山林所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供される建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。

所得税法

所得税の計算上、不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得の仕事に使用する建物、車両等が減価償却の対象となります。政令を確認します。

(減価償却資産の範囲)
第六条 法第二条第一項第十九号(定義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
 機械及び装置
 船舶
 航空機
 車両及び運搬具
 工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
 次に掲げる無形固定資産(以下省略)

所得税法施行令

時の経過によりその価値の減少しない資産を除きます。

例えば、土地、電話加入権、高級な美術品です。
土地等は使用しても価値が下がらず、
費用を使用した期間に配分できないため、減価償却資産に該当しません。

需要と供給から生まれる価値の変動(増加・減少)は、
「評価損益」であるため、今回の減価償却とは別の取扱いがあります。

減価償却の方法

法令上の細かい計算ではなく概要を説明します。
減価償却の方法は、次の2種類で判断します。

  • 取得した減価償却資産の種類(建物、車両など)
  • いつ取得したのか(昔なのか、最近なのか)

1の減価償却資産の種類によって、減価償却の償却方法が決まります。
大きく分けて次の2つです。

  1. 定額法
  2. 定率法

定額法は、毎年、減価償却費が同じ(定額)となる方法です。

例えば100万円の減価償却資産を10年で使う場合、
1年間の減価償却費は100万円÷10年=10万円となります。
2年目から10年目まで同じ計算をします。

定率法は、毎年同じ償却割合を使う方法です。

例えば、100万円の減価償却資産を10年で使うとしたら、
1年目の減価償却費は、100万円✕10%=10万円となります。
2年目の減価償却費は、90万円(=100万円-10万円)✕10%
9万円となります。

2の取得時期については、平成19年4月1日を境に償却方法の大きな改正があったため、同じ種類の資産であっても、償却方法が異なります。

平成19年3月31日以前に取得したものを「旧定額法」や「旧定率法」、
平成19年4月1日以後に取得したものを「定額法」や「定率法」といいます。

法定償却方法

法令で定める償却方法です。減価償却資産については、
自由に償却方法が選択できるものと選択できないものがあります。

自由に償却方法が選択できるものは選択した方法になります。
自由に償却方法が選択できるものを選択しなかった場合は
「法定償却方法」になります。
所得税の法定償却方法は通常「旧定額法」「定額法」となります。

法定耐用年数

Aさんが使う車両はあまり使わないので8年で償却する。
Bさんが使う車両はよく使うので4年で償却する。

このように耐用年数を決めるのではなく、
税金計算が公平になるように、種類・構造・用途等により
法令で耐用年数・償却率が細かく定められています。

例えば、一般的な車両の法定耐用年数は、
車両及び運搬具→前掲のもの以外のもの→その他のもので6年となります。

減価償却資産の耐用年数等に関する省令(参考)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340M50000040015_20200401_502M60000040026

年の中途で取得した場合の減価償却費の計算

減価償却の計算は1年が前提です。
そのため、年の途中で取得した人は、年末までの月数を考慮します。

具体例
令和3年10月3日、車両200万円を取得し、事業用として使い始めた。
法定耐用年数は6年(償却率0.167)、償却方法は定額法とします。

令和3年分の減価償却費の計算(定額法)
200万円×0.167×3ヶ月÷12ヶ月=83,500円

令和4年分の減価償却費の計算(定額法)
200万円×0.167=334,000円

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