所得税の確定申告の種類


3月15日が所得税の確定申告期限ですので、今回は所得税の確定申告の種類や期限について確認します。所得税の確定申告の種類は、確定所得申告、確定損失申告、還付等を受けるための申告の3つあります。

確定所得申告

確定申告書を提出しなければならない要件は2つです。

  • 所得>所得控除
  • 所得税>一定の控除額

    所得税=(所得-所得控除)✕所得税率で計算します。

納めるべき所得税がある場合は確定申告が必要です。
この確定申告の期限は3月15日までです。
納めるべき所得税がない場合は確定申告書を提出する義務がありません。

確定損失申告

所得があれば所得税はかかりますが、赤字であれば所得税はかかりません。

所得税がない場合、確定申告の義務はありませんが、確定申告は可能です。

例えば、本年生じた赤字を翌年以後に繰り越す場合に確定申告できます。
損失を繰り越すためには確定申告が必要だからです。

確定損失申告は、次の3つのいずれかに該当するときに
3月15日までに可能です。

  • 本年、赤字が生じた
  • 本年の雑損失の金額>本年の所得
  • 過去3年に生じた赤字>本年の所得

1つ目
本年が損失であれば翌年以後3年間、損失を繰り越すことができます。
この損失を繰り越す場合に確定損失申告します。

2つ目
災害・盗難・横領による損失が生じた場合、
雑損控除(所得控除の1つ)が使えます。
この雑損控除は所得控除の1つですが、
損失の影響が大きいため損失を3年間繰り越すことができます。
この損失を繰り越す場合も確定損失申告が必要です。

3つ目
過去に生じた損失が本年の黒字と相殺しきれない場合です。
相殺しきれない損失を持ち越す場合も確定損失申告が必要です。

一定の場合には、本年の赤字を前年の黒字と相殺して、
支払った所得税の還付を請求する制度(繰戻し還付)を
使うときも確定申告が必要です。

還付等を受けるための申告

本年に所得税がある場合は確定所得申告、
本年に所得税がなくても損失を持ち越す場合は確定損失申告となります。

最後に、黒字でも赤字でもない場合の確定申告を確認します。

還付等を受けるための申告の具体例

「還付等を受けるための申告」とは、
控除しきれなかった税金の還付を受ける場合の確定申告です。

例えば、次の場合の確定申告の判定をします。

本年の所得 1,000
所得控除 1,500
源泉徴収税額 100

1_確定所得申告の判定
 所得1,000-所得控除1,500=課税される所得0。課税される所得がないため、確定所得申告の義務はありません。

2_確定損失申告の判定
 控除しきれない所得控除500は翌年以後に繰り越しできず、赤字がありませんので、確定損失申告ができません。

3_還付等を受けるための申告の判定
 1・2による確定申告ができません。源泉徴収税額100は、所得税から控除できないため、控除しきれない所得税として「還付等を受けるための申告」が可能となります。

 この還付等を受けるための申告については、申告期限がありません。3月15日を過ぎても還付等申告が可能です。ただし、5年の時効があるため実質的には期限があります。

(還付金等の消滅時効)
第七十四条 還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する。

国税通則法

還付金を請求する権利は5年で消えます。
請求できる日は、還付等申告については1月1日です。

例えば、平成28年分の所得税の還付を請求できる日は平成29年1月1日ですので、還付等申告の(実質的な)期限は令和3年12月31日までとなります。

平成28年分の還付金については時効により消滅していますが、平成29年分以後の還付金については、まだ消滅していないため所得税の還付申告が可能です。

実務上の取扱い

実務上、確定所得申告書、確定損失申告書、還付等を受けるための申告書という申告書はありません。

現在あるのは、確定申告書A(簡易版)と確定申告書B(正式版)の2つです。確定申告書Aは令和5年1月から廃止され、確定申告書Bに統一されるので、確定申告書Bを見たことがない人は、次の申告までに一度確認しておきましょう。

参考規定

(確定所得申告)
第120条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるときは、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。

この場合において、その年において支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等で第百九十条(年末調整)の規定の適用を受けたものを有する居住者が、当該申告書を提出するときは、次に掲げる事項のうち財務省令で定めるものについては、財務省令で定める記載によることができる。

所得税法

 前号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合には、その控除しきれなかつた金額
 前号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた源泉徴収税額がある場合には、その控除しきれなかつた金額
 前号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合には、その控除しきれなかつた金額

所得税法120条1項

(還付等を受けるための申告)
第122条 居住者は、その年分の所得税につき第百二十条第一項第四号、第六号又は第八号(確定所得申告)に掲げる金額がある場合には、同項の規定による申告書を提出すべき場合及び次条第一項の規定による申告書を提出することができる場合を除き、第百三十八条第一項(源泉徴収税額等の還付)又は第百三十九条第一項若しくは第二項(予納税額の還付)の規定による還付を受けるため、税務署長に対し、第百二十条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
 省略(外国税額の繰越等)
 省略(準用規定)

所得税法

(確定損失申告)
第123条 居住者は、次の各号のいずれかに該当する場合において、その年の翌年以後において第七十条第一項若しくは第二項(純損失の繰越控除)若しくは第七十一条第一項(雑損失の繰越控除)の規定の適用を受け、又は第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)の規定による還付を受けようとするときは、第三期において、税務署長に対し、次項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
 その年において生じた純損失の金額がある場合
 その年において生じた雑損失の金額がその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額を超える場合
 その年の前年以前三年内の各年において生じた純損失の金額及び雑損失の金額(第七十条第一項若しくは第二項又は第七十一条第一項の規定により前年以前において控除されたもの及び第百四十二条第二項の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。次項第二号において同じ。)の合計額が、これらの金額を控除しないで計算した場合のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額を超える場合

所得税法

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