今回は、所得税の繰戻し還付を確認してみましょう。
繰戻し還付の考え方
前年の赤字と本年の黒字を通算することを
「繰越控除」といいます。
前年の赤字が300、本年の黒字が500の場合に繰越控除を適用すると
本年の黒字は、500-300=200となります。
反対に、前年の黒字が500、本年の赤字が300の場合は、
要件を満たせば、「繰戻し還付」ができます。
例えば、次の場合で確認してみましょう。
・前年の黒字 500
・10%の所得税 50
・本年の赤字 300
本年の赤字300について繰戻し還付をすると
・前年の黒字500-本年の赤字300=前年の黒字200
・200×税率10%=所得税20
となります。
前年の確定申告で所得税50を納付していますが、
繰戻し還付により所得税が20に減少するため、
50-20=30の還付請求が可能となります。
還付請求の要件
繰戻し還付の要件は、次の3つです。
・青色申告書を提出している。
・本年に純損失の金額(赤字)が生じている。
・青色申告書の提出と同時に還付請求する。
要件を満たせば、
1、前年分の所得税
2、本年の赤字を考慮した前年分の所得税
1-2の所得税の還付請求が可能となります。
還付請求の上限
所得税の計算は、
・課税される所得×税率
で計算します。
その後、特例による控除があり、
控除した後の金額が実際に納付する所得税となります。
そのため、
1、前年分の所得税(特例の控除後の金額)
2、本年の赤字を考慮した前年分の所得税
1<2となる場合があります。
この場合の還付請求できる金額は
1-2ではなく、1となります。
例えば、前年の黒字が500、税率10%で所得税が50、
特例による控除が35があった場合、所得税は15となります。
本年の赤字を考慮した前年分の所得税が20の場合、
前年の所得税は15しか負担していないため、
還付請求できる金額は15となります。
申告要件
繰戻し還付は、
・前年分の所得税について青色申告書を提出
・本年分の青色申告書を申告期限までに提出
上記2つが必要です。
参考規定など
国税庁、A1-4 純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200002.htm
純損失の繰戻しによる還付の請求
第百四十条 青色申告書を提出する居住者は、その年において生じた純損失の金額がある場合には、当該申告書の提出と同時に、納税地の所轄税務署長に対し、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額に相当する所得税の還付を請求することができる。
所得税法第140条第1項、施行日令和6年4月1日
一 その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第三章第一節(税率)の規定を適用して計算した所得税の額
二 その年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額から当該純損失の金額の全部又は一部を控除した金額につき第三章第一節の規定に準じて計算した所得税の額
還付請求の上限計算
2 前項の場合において、同項に規定する控除した金額に相当する所得税の額がその年の前年分の課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税の額(附帯税の額を除く。)をこえるときは、同項の還付の請求をすることができる金額は、当該所得税の額に相当する金額を限度とする。
所得税法第140条第2項、施行日令和6年4月1日
青色申告書の提出が必要
4 第一項の規定は、同項の居住者がその年の前年分の所得税につき青色申告書を提出している場合であつて、その年分の青色申告書をその提出期限までに提出した場合(税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合には、当該申告書をその提出期限後に提出した場合を含む。)に限り、適用する。
所得税法第140条第4項、施行日令和6年4月1日
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新しいこと
・とある炭焼コーヒー