所得税の繰戻し還付の特例


今回は、所得税の繰戻し還付の特例を確認してみましょう。

繰戻し還付の特例

繰戻し還付は、前年が黒字(所得税の支払いあり)で
本年が赤字の場合に、本年の赤字を前年に繰り戻す特例です。

前年が赤字の場合は、原則として繰戻し還付はできません。
所得税の支払いがないからです。

ただし、一定の事実が生じた場合は、
さらに遡って還付請求できる場合があります。

一定の事実は、次の3つです。
・事業の全部の譲渡
・事業の全部の廃止
・事業の全部の相当期間の休止・重要部分の譲渡により
本年の赤字を将来に繰り越す予定がなくなること。

上記の事実が生じた場合は、1年前だけではなく、
2年前にも遡って繰戻しの還付請求が可能となります。

2年前に遡る場合は、2年前も青色申告している必要があります。

参考規定など

国税庁、A1-4 純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200002.htm

事業の全部譲渡等があった場合の繰戻し還付の特例

5 居住者につき事業の全部の譲渡又は廃止その他これらに準ずる事実で政令で定めるものが生じた場合において、当該事実が生じた日の属する年の前年において生じた純損失の金額(第七十条第一項(純損失の繰越控除)の規定により同日の属する年において控除されたもの及び第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)があるときは、その者は、同日の属する年の前年分及び前前年分の所得税につき青色申告書を提出している場合に限り、同日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、納税地の所轄税務署長に対し、当該純損失の金額につき第一項から第三項までの規定に準じて政令で定めるところにより計算した金額に相当する所得税の還付を請求することができる。

所得税法第140条第5項、施行日令和6年4月1日

事業の廃止等に準ずる事実等

第二百七十二条 法第百四十条第五項(事業の全部譲渡等の場合の純損失の繰戻しによる還付の請求)に規定する政令で定める事実は、事業の全部の相当期間の休止又は重要部分の譲渡で、これらの事実が生じたことにより同項に規定する純損失の金額につき法第七十条第一項(純損失の繰越控除)の規定の適用を受けることが困難となると認められるものとする

所得税法施行令第272条、施行日令和6年4月1日


新しいこと
・大納言かのこ

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