所得税の賃上げ促進税制_本年に相続があった場合の教育訓練費の調整計算


今回は、所得税の賃上げ促進税制のうち
本年に相続があった場合の教育訓練費の調整計算を確認してみましょう。

教育訓練費の調整計算

所得税の賃上げ促進税制には、
・全事業者向けの特例
・中堅企業者向けの特例
・中小企業者向けの特例
の3つがあり、それぞれ教育訓練費の要件を満たした場合に、
所得税を割増しで控除できる特例があります。

個人事業者については、法人の場合と異なり相続により事業を承継することがあります。亡くなった人の事業を承継することで、教育訓練費が増加します。この事業の承継による教育訓練費の増加については、調整が必要となります。

調整方法は次の2つです。
1、本年に相続があった場合
2、前年に相続があった場合

今回は、本年に相続があった場合の調整方法を確認してみましょう。

本年に相続があった場合

カッコ書きを省略して規定を確認してみましょう。


一 適用年において当該個人の事業所得を生ずべき事業(注1)を相続(注2)により承継した場合 当該個人の適用年の前年の一月一日(注3)から十二月三十一日までの期間(注4)に係る教育訓練費の額については、当該個人の当該調整対象年に係る教育訓練費の額に、当該個人の当該調整対象年において事業を営んでいた月に係る被相続人(注5)の月別教育訓練費の額を合計した金額に当該個人が当該承継事業を承継した日から当該適用年の十二月三十一日までの期間の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額を加算する。

注1、以下この項及び第十九項において「承継事業」という。
注2、包括遺贈を含む。次号及び同項において同じ。
注3、当該適用年の前年において事業を開始した当該個人にあつては、当該事業を開始した日。次号において同じ。
注4、以下この号において「調整対象年」という。
注5、包括遺贈者を含む。次号及び次項において同じ。

賃上げ促進税制を利用しようする年を「適用年」といいます。
当該個人は、「相続により事業を承継した個人」を指しています。
対象となる所得は、「事業所得」に限定されています。

調整する期間は、前年1月1日から前年12月31日までの期間となります。
「調整対象年」といいます。

前年の途中で事業を開始した場合は、前年1月1日ではなく、
事業を開始した日から前年12月31日までの期間が調整対象年となります。

調整方法を確認してみましょう。

当該個人の当該調整対象年(前年)に係る教育訓練費の額(A)に、
当該個人の当該調整対象年において事業を営んでいた月に係る被相続人(注5)の月別教育訓練費の額を合計した金額に当該個人が当該承継事業を承継した日から当該適用年の十二月三十一日までの期間の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額(B)を加算する。

AにB(調整額)をプラスします。

Bは、

事業を相続した人が事業を営んでいた月(通常は1月から12月まで)を確認します。その月に対応する亡くなった人の「月別教育訓練費の額を合計した金額」に「事業を相続した人が事業を承継した日から適用年の12月31日までの期間の月数」をかけて、12で割った金額

という意味です。

例えば、次の場合で確認してみましょう。
・亡くなった人 C
・亡くなった日 X年8/31
・事業を承継した人 D
・事業を承継した日 X年9/1
・月別教育訓練費の合計額 12万円

「月別教育訓練費の額を合計した金額」は12万円、「事業を相続した人が事業を承継した日から適用年の12月31日までの期間の月数」は、9/1-12/31の4月となります。

B(プラス調整)は、
12万円×4月÷12月=4万円となります。

X年9月1日以後は、亡くなった人の事業を承継するため、教育訓練費が増加します。前年1月1日から12月31日までの期間については、亡くなった人の事業に関する教育訓練費が含まれていません。そのため、前年と本年で比較するために、4万円をプラスする必要があります。

月別教育訓練費

年間の教育訓練費を平均したものを「月別教育訓練費」といいます。

亡くなった人の前年や事業を承継した人の前年が1年(12月)でない場合や各月の教育訓練費に差が生じるため、平均額を計算する必要があります。

例えば、亡くなった人の前年の教育訓練費が120万円の場合
パターン1、営業期間が8月だと、平均額は15万円となります。
パターン2、営業期間が4月だと、平均額は30万円となります。

事業を承継した人の前年の営業期間が6月の場合
パターン1、毎月15万円の教育訓練費が6月間発生したと仮定します。
パターン2、毎月30万円の教育訓練費が6月間発生したと仮定します。

月別教育訓練費の額を合計した金額は、
パターン1、15万円×6月=90万円
パターン2、30万円×6月=180万円
となります。

参考規定

相続があった場合の教育訓練費の調整計算

16 法第十条の五の四第一項から第三項までの規定の適用を受けようとする個人が次の各号に掲げる場合に該当する場合のその適用を受けようとする年(以下この項において「適用年」という。)の当該個人の同条第五項第七号に規定する比較教育訓練費の額の計算における同号の教育訓練費の額については、当該個人の当該各号に規定する調整対象年に係る教育訓練費の額(個人のその年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される同条第一項第二号イに規定する教育訓練費の額をいう。第十九項を除き、以下この条において同じ。)は、当該各号に定めるところによる。
一 適用年において当該個人の事業所得を生ずべき事業(以下この項及び第十九項において「承継事業」という。)を相続(包括遺贈を含む。次号及び同項において同じ。)により承継した場合 当該個人の適用年の前年の一月一日(当該適用年の前年において事業を開始した当該個人にあつては、当該事業を開始した日。次号において同じ。)から十二月三十一日までの期間(以下この号において「調整対象年」という。)に係る教育訓練費の額については、当該個人の当該調整対象年に係る教育訓練費の額に、当該個人の当該調整対象年において事業を営んでいた月に係る被相続人(包括遺贈者を含む。次号及び次項において同じ。)の月別教育訓練費の額を合計した金額に当該個人が当該承継事業を承継した日から当該適用年の十二月三十一日までの期間の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額を加算する。
二 省略

租税特別措置法施行令第5条の6の4第16項第1号、施行日令和6年10月1日

月別教育訓練費の額

17 前項に規定する月別教育訓練費の額とは、その被相続人の同項各号に規定する調整対象年の教育訓練費の額を当該調整対象年において当該被相続人が事業を営んでいた期間の月数で除して計算した金額を当該調整対象年において同項の個人が事業を営んでいた月に係るものとみなしたものをいう。

租税特別措置法施行令第5条の6の4第17項第1号、施行日令和6年10月1日

新しいこと
・毎日すこやか濃い緑茶

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