今回は、所得税の賃上げ促進税制の比較月数が異なる場合等と雇用安定助成金額がある場合を確認してみましょう。
雇用安定助成金額がある場合
賃上げ促進税制は、前年と本年の給料を比較して、
増加した給料を計算する必要があります。
(控除対象雇用者給与等支給増加額といいます。)
控除対象雇用者給与等支給増加額については、
雇用調整助成金などの助成金(雇用安定助成金額)を
マイナスする必要があります。
例えば、次の場合で確認してみましょう。
・前年の給料 1000万円
・前年の雇用調整助成金 50万円
・本年の給料 1200万円
・本年の雇用調整助成金 60万円
雇用調整助成金をマイナスしない場合の増加額は、
1200万円-1000万円=200万円となります。
雇用調整助成金をマイナスする場合の増加額は、
前年の給料 1000万円-50万円=950万円
本年の給料 1200万円-60万円=1140万円
増加額 1140万円-950万円=190万円
となります。
(調整雇用者給与等支給増加額といいます。)
前年と比較して給料は200万円増えていますが、
受け取った助成金も10万円増えています。
そのため、負担した給料の増加額(控除対象雇用者給与等支給増加額)は、
200万円-10万円=190万円となります。
比較月数が異なる場合
賃上げ促進税制は、前年と本年の給料を比較する必要があります。
この比較は、前年も本年も継続して営業していることが前提です。
仮に前年の営業月数と本年の営業月数が異なる場合は、
給料が比較できないため、
前年の給料を本年の営業月数ベースに直す必要があります。
例えば、前年の営業月数が7カ月で
700万円の給料を支払っている場合は、
700万円×12カ月÷7カ月=1200万円が前年の給料となります。
この場合に雇用安定助成金額がある場合は、
負担した給料を計算するため、
「本年の営業月数ベースに直した給料」から
「雇用安定助成金額」をマイナスする必要があります。
相続があった場合
相続により亡くなった人の事業を引き継いだ場合についても、亡くなった人の事業の給料が発生するため、一定の調整が必要となります。
参考リンク
・所得税の賃上げ促進税制_相続があった場合の給与等の調整計算
この場合に雇用安定助成金額がある場合は、
負担した給料を計算するため、
「相続があった場合の調整をした後の給料」から
「雇用安定助成金額」をマイナスする必要があります。
参考規定
比較月数が異なる場合や相続があった場合の雇用安定助成金額の取扱い
20 法第十条の五の四第一項から第三項までの規定の適用を受けようとする個人が次の各号に掲げる場合に該当する場合において、当該各号に定める金額の計算の基礎となる給与等に充てるための同条第五項第五号イに規定する雇用安定助成金額があるときは、同号ロに掲げる金額は、当該各号に定める金額から当該雇用安定助成金額を控除して計算した同項第十号に規定する比較雇用者給与等支給額とする。
一 法第十条の五の四第五項第十号の適用年の前年において事業を営んでいた期間の月数と当該適用年において事業を営んでいた期間の月数とが異なる場合 第十八項の給与等支給額
二 前項の規定によりみなされた第十六項の規定の適用を受ける場合 前項の給与等支給額租税特別措置法施行令第5条の6の4第20項、施行日令和6年10月1日
比較月数が異なる場合の比較雇用者給与等支給額
18 法第十条の五の四第五項第十号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同号の適用年の前年に係る給与等支給額に十二を乗じてこれを当該適用年の前年において事業を営んでいた期間の月数で除して計算した金額とする。
租税特別措置法施行令第5条の6の4第18項、施行日令和6年10月1日
相続により事業を承継した場合の給与等の調整
19 法第十条の五の四第一項から第四項までの規定の適用を受けようとする個人のその適用を受けようとする年(以下この項において「適用年」という。)の前年又は当該適用年において承継事業を相続により承継した場合の当該個人の当該適用年における同条第五項第十号に規定する比較雇用者給与等支給額の計算における当該個人の適用年の前年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される同号の給与等の支給額(当該適用年において事業を営んでいた期間の月数と当該適用年の前年において事業を営んでいた期間の月数とが異なる場合には、前項の給与等支給額)については、給与等支給額(個人のその年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。)を第十六項の教育訓練費の額と、当該個人の当該適用年の前年を同項各号に規定する調整対象年と、それぞれみなした場合における同項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるところによる。
租税特別措置法施行令第5条の6の4第19項、施行日令和6年10月1日
新しいこと
・傘のしずく取り