所得税基本通達の改正_災害損失特別勘定を設定した場合の被災事業用資産の損失の範囲等


今回は、所得税基本通達の改正のうち、災害損失特別勘定の設定を確認します。

基本通達の新設

純損失の繰越控除の期間が3年から5年になる特例が新設されたため、
災害損失特別勘定の通達が新設されています。

災害損失特別勘定の通達(70-4の2)は既にありますが、
既存の通達を残したまま、別に新設されます。

まず、新設される通達を確認していきましょう。

災害損失特別勘定を設定した場合の被災事業用資産の損失の範囲等

(災害損失特別勘定を設定した場合の被災事業用資産の損失の範囲等)
70の2-4 不動産所得、事業所得又は山林所得(以下この項において「事業所得等」という。)を生ずべき事業を営む居住者が、法第70条の2第1項に規定する特定非常災害(以下この項において「特定非常災害」という。)のあった日の属する年分において、特定非常災害により被害を受けた同条第4項第3号に規定する固定資産等又は同項第6号に規定する棚卸資産(以下この項において「被災資産」という。)について36・37共-7の5の災害損失特別勘定に繰り入れた金額を有する場合には、当該金額は、法第70条の2第4項第2号に規定する特定非常災害による損失の金額(以下この項において「特定非常災害による損失の金額」という。)に含まれることに留意する。
以下省略

所得税基本通達

簡略します。

事業所得等を生ずべき事業を営む事業者が
特定非常災害のあった年分に、

特定非常災害により被害を受けた被災資産について
災害損失特別勘定を設定した場合には、

その設定した金額は、特定非常災害による損失の金額に含まれます。

災害損失特別勘定って何?

災害損失特別勘定については、
通達36・37共-7の5に規定されています。
確認してみましょう。

(災害損失特別勘定の設定)
36・37共-7の5 不動産所得、事業所得又は山林所得(以下36・37共-7の9までにおいて「事業所得等」という。)を生ずべき事業を営む居住者が、被災資産の修繕等のために要する費用を見積もり、36・37共-7の6に定める合計額以下の金額を被災年分(災害のあった日の属する年分をいう。以下36・37共-7の9までにおいて同じ。)において災害損失特別勘定に繰り入れた場合は、その繰り入れた金額については、その者の被災年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することができるものとする。
 この場合、当該被災年分の確定申告書に災害損失特別勘定の必要経費算入に関する明細書を添付するものとする。(平29課個2-13、課資3-3、課審5-5追加)
(注) 「被災資産」とは、次に掲げる資産で災害により被害を受けたものをいう(以下36・37共-7の9までにおいて同じ。)。
(1) 居住者の有する棚卸資産
(2) 居住者の有する固定資産で事業所得等を生ずべき事業の用に供するもの(その者が賃貸をしている資産で、契約により賃借人が修繕等を行うこととされているものを除く。)
(3) 居住者が賃借をしている資産又は販売等をした資産で、契約によりその者が修繕等を行うこととされているもの
(4) 山林

所得税基本通達

簡略します。

事業所得等を生ずべき事業を営む居住者が
被災資産の修繕等のために要する費用を「見積もり」、

一定の方法で計算した金額を災害のあった年分に

災害損失特別勘定に繰り入れた場合は、
その繰り入れた金額については、

その者の災害のあった年分の事業所得等の金額の
必要経費に算入することができます。

仕訳例

借方貸方
災害損失特別勘定繰入 1000万円災害損失特別勘定 1000万円
仕訳例

原則として、費用の見積もり計上は認められていませんが、
被災した資産の修繕費などについては、経費の見積もり計上が可能です。

新設される通達の取扱いは、
「特定非常災害による損失の金額に、
この見積もった修繕費なども含む」とするものです。

実際に修繕した年分の取扱い

災害損失特別勘定を設定した翌年分の取扱いについても
同じ通達に規定されています。

確認してみましょう。

省略
 この場合において、当該特定非常災害のあった日の属する年の翌年以後の各年の1月1日において災害損失特別勘定の金額を有するときには、当該各年分において被災資産に係る修繕費用等(36・37共-7の6に定める「修繕費用等」をいう。)の額として、事業所得等の金額の計算上必要経費に算入した金額(保険金等(36・37共-7の6に定める「保険金等」をいう。)により補塡された金額がある場合には、当該金額の合計額を控除した残額をいい、特定非常災害による損失の金額に該当する部分の金額に限る。)の合計額から当該各年の1月1日における災害損失特別勘定の金額を控除した残額が当該各年分における特定非常災害による損失の金額となることに留意する。

所得税基本通達

簡略しますと、

1月1日(年初)に災害損失特別勘定の金額を有するときは、
被災した資産の修繕費用等の額として、

事業所得等の金額の計算で
必要経費として計算した金額(注1)の合計額から

その災害損失特別勘定の金額を控除した残額が
「特定非常災害による損失の金額」となります。

算式
(修繕費用-保険金等)-災害損失特別勘定
=特定非常災害による損失の金額

注1、受け取った保険金等(見舞金など含む)により
修繕費などが補てんされた場合は、その補てんされる金額を除き、
特定非常災害による損失の金額に該当する部分に限る。

計算例

次の場合で計算してみましょう。

1月1日の災害損失特別勘定 1000万円
実際の修繕費 1300万円
受け取った保険金等 100万円

1、修繕費1300万円-保険金等100万円=純額の修繕費1200万円

2、純額の修繕費1200万円-災害損失特別勘定1000万円=
特定非常災害による損失の金額200万円
となります。

既存の「70-4の2、災害損失特別勘定を設定した場合の被災事業用資産の損失の範囲等」は、3年繰越しの通達としてそのまま残り、

「70の2-4、災害損失特別勘定を設定した場合の被災事業用資産の損失の範囲等」は、5年繰越しの通達として新設されることになります。
(通達のタイトル名はまったく同じですね。)

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