今回は、所得税の扶養控除(所得控除の1つ)を確認してみましょう。家族を扶養している場合、扶養控除(所得控除)により所得税が少なくなります。
扶養控除
扶養控除の規定を見ていきます。
(扶養控除)
所得税法
第八十四条 居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その控除対象扶養親族1人につき38万円(その者が特定扶養親族である場合には63万円とし、その者が老人扶養親族である場合には48万円とする。)を控除する。
2 前項の規定による控除は、扶養控除という。
控除対象扶養親族1人につき38万円の扶養控除があります。
専門用語が多いので、1つ1つ確認していきます。
控除対象扶養親族
扶養控除ではなく、「控除対象」扶養親族です。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。三十四の二
所得税法
控除対象扶養親族
扶養親族のうち、年齢16歳以上の者をいう。
扶養親族のうち、年令16歳以上を「控除対象」扶養親族といいます。年令16歳未満の子については扶養控除がありません。昔はありましたが、子ども手当の創設に伴い廃止されました。
扶養親族
控除対象扶養親族の定義の中に、「扶養親族」が出てきます。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。三十四 扶養親族
所得税法
居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)並びに児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号(都道府県の採るべき措置)の規定により同法第六条の四(定義)に規定する里親に委託された児童及び老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十一条第一項第三号(市町村の採るべき措置)の規定により同号に規定する養護受託者に委託された老人でその居住者と生計を一にするもの(第五十七条第一項に規定する青色事業専従者に該当するもので同項に規定する給与の支払を受けるもの及び同条第三項に規定する事業専従者に該当するものを除く。)のうち、合計所得金額が48万円以下である者をいう。
扶養親族の対象者は、3パターンあります。
- 居住者の親族。ただし、配偶者は除かれます。
- 里親に委託された児童。親族ではありませんが、対象となります。
- 養護受託者に委託された老人。親族ではありませんが、対象となります。
上記対象者が次の全てを満たす場合に、扶養控除が使えます。
- 養っている人と養われる人のサイフが同じ(生計を一)。
- 養われている人が、養っている人の事業に専従していない。
- 養われている人が専従し、養っている人から給料をもらっていること等
- 養われている人の合計所得金額≦48万円以下
「合計所得金額」は1年間で稼いだ「所得」です。例えば、1年間の給料が103万円だった場合、給与所得控除(概算で差し引く控除)が最低55万円マイナスできますので、1年で稼いだ所得は48万円(103万円-55万円)となり、合計所得金額48万円以下をクリアします。
特定扶養親族と老人扶養親族
「特定」扶養親族については控除額が63万円に、「老人」扶養親族については控除額が48万円になります。「同居」している老人扶養親族については控除額が58万円になります。一般的に、大学生やご年配の方の生活費がかさむため控除額が増えています。
三十四の三
所得税法2条1項、定義
特定扶養親族
控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の者をいう。
三十四の四
老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、年齢70歳以上の者をいう。
同居の規定については、別の法律のため今回は省略します。
扶養控除のまとめ
年齢と要件別に、控除額をまとめました。

参考規定
この扶養については、民法に扶養義務が規定されています。
(親族間の扶たすけ合い)
第七百三十条
直系血族及び同居の親族は、互いに扶(たす)け合わなければならない。(扶養義務者)
民法
第八百七十七条
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。