控除できなかった外国法人税の繰越しによる外国税額控除


今回は、控除できなかった外国法人税(繰越控除対象外国法人税)の繰越しについて確認します。計算の流れを掴むため、先に計算例を載せています。

内容

当期の外国法人税については、法人税、地方法人税、道府県民税の法人税割、市町村民税の法人税割の順に控除できます。この外国法人税が当期の法人税などから控除できなかった場合は、この控除できなかった外国法人税(繰越控除対象外国法人税)を3年間繰り越して、法人税から控除できます。

繰越しは次の2パターンあり、今回は下記2を確認します。

  1. 外国法人税<控除限度額の場合は、未使用の控除限度額を繰り越します。
  2. 外国法人税>控除限度額の場合は、未控除の外国法人税を繰り越します。

イメージ

計算例

計算規定が多いため、数字を使って確認します。

(前提)
過去3年の控除できなかった外国法人税(控除限度超過額)の内訳
・1年前 150
・2年前 200
・3年前 100
・繰越控除対象外国法人税額の合計 450(=150+200+100)

当期の金額
・控除できる外国法人税 250
・控除限度額 600
・法人税 1,000


過去に控除できなかった外国法人税を
当期に使用するための要件は、次の2つです。

要件1
外国法人税250<控除限度額600
 → 該当します。当期に控除できる枠350が余っています。

要件2
繰越控除対象外国法人税額があること。
過去3年間の控除限度超過額の合計額(450)があります。
 → 該当します。

上記の要件を満たすと、「過去3年の控除できなかった外国法人税」を
当期の法人税から控除することができます。

1、控除する繰越控除対象外国法人税
 繰越控除対象外国法人税(450)>限度額(※)350
 比較して少ない金額(350)

 (※)限度額
 控除限度額(600)-外国法人税(250)=限度額(350)
 (当期の使用していない控除の枠を計算します。)

2、外国税額控除
 法人税(1,000)-繰越控除対象外国法人税(350)=法人税(650)

控除限度超過額の使用順序

過去3年間の控除限度超過額(450)は、古いものから順次使用します。
具体的には次のとおりです。
1、3年前の控除限度超過額
2、2年前の控除限度超過額
3、1年前の控除限度超過額

例えば、過去3年間の控除限度超過額(450)の内訳が次の場合で
当期の国税の控除余裕額(350)のときは、
1年前の控除限度超過額(100)は翌年以後に繰越しとなります。

控除限度超過額の内訳

年度前期繰越額
当期使用額
翌期繰越額
3=1-2
3年前1001000
2年前2002000
1年前15050100
合計450控除余裕額
の使用 350
100
控除限度超過額の内訳
参考規定、繰越控除対象外国法人税がある場合
(法人税法69条3項、法人税法施行令145条1項)

繰越控除対象外国法人税がある場合

 内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額<250>が当該事業年度の控除限度額<600>に満たない場合<判定1>において、その前三年内事業年度において納付することとなつた控除対象外国法人税の額のうち当該事業年度に繰り越される部分として政令で定める金額(以下この項及び第二十四項において「繰越控除対象外国法人税額」という。)<450>があるとき<判定2>は、政令で定めるところにより、当該控除限度額<600>から当該事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額<250>を控除した残額<350>を限度として、その繰越控除対象外国法人税額(450>350、少ない金額350)を当該事業年度の所得に対する法人税の額<1,000>から控除する。

法人税法69条3項

法人税法施行令145条1項、繰越控除外国法人税額の定義

第145条 法第六十九条第三項(外国税額の控除)に規定する当該事業年度に繰り越される部分として政令で定める金額は、内国法人の同項に規定する前三年内事業年度の控除限度超過額前条第七項に規定する控除限度超過額をいう。以下この条において同じ。)<100+200+150=450>を最も古い事業年度のものから順次法第六十九条第三項に規定する当該事業年度の国税の控除余裕額(前条第五項に規定する国税の控除余裕額をいう。以下この条において同じ。)<250>に充てるものとした場合に当該国税の控除余裕額<250>に充てられることとなる当該控除限度超過額の合計額<450>に相当する金額とする。

法人税法施行令145条1項
控除限度超過額(法人税法施行令144条7項)

控除限度超過額は、外国法人税-控除限度額の合計額で計算します。

計算例
1年前 外国法人税300-控除限度額合計額150=控除限度超過額150
2年前 外国法人税600-控除限度額合計額400=控除限度超過額200
3年前 外国法人税500-控除限度額合計額400=控除限度超過額100

法人税法施行令144条7項、控除限度超過額

 第一項及び第四項に規定する控除限度超過額とは、内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の法人税の控除限度額、地方法人税の控除限度額及び地方税の控除限度額の合計額を超える場合におけるその超える部分の金額に相当する金額をいう。

法人税法施行令144条7項
国税の控除余裕額(法人税法施行令144条5項)

控除余裕額は、控除限度額-外国法人税で計算します。

計算例
控除限度額(600)-外国法人税(250)=控除余裕額(350)

法人税法施行令144条5項、国税の控除余裕額

 前各項に規定する国税の控除余裕額とは、内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の法人税の控除限度額(法第六十九条第一項に規定する控除限度額をいう。以下この条において同じ。)に満たない場合における当該法人税の控除限度額から当該控除対象外国法人税の額を控除した金額に相当する金額をいう。

法人税法施行令144条5項
地方税の控除余裕額(法人税法施行令144条6項)

地方税の控除余裕額は、次の2パターンあります。
1、外国法人税が国税の控除限度額を超えない場合
2、外国法人税が国税の控除限度額を超える場合

外国法人税<国税の控除限度額の場合

前提
外国法人税 800
法人税の控除限度額 1,000
地方法人税の控除限度額 100
地方税の控除余裕額 300

外国法人税<800>が、法人税の控除限度額<国税1000>と地方法人税の控除限度額<国税100>の合計額<1100>を超えない場合です。

この場合は、地方税から外国法人税をマイナスしていないため、
地方税の控除額の余り<300>が控除余裕額となります。

控除余裕額の判定と計算
外国法人税(800)<法人税の控除限度額+地方法人税の控除限度額(1,100)
→ 地方税の控除限度額<300>

外国法人税>国税の控除限度額の場合

前提
外国法人税 800
法人税の控除限度額 700
地方法人税の控除限度額 70
地方税の控除余裕額 50

外国法人税<800>が、法人税の控除限度額<国税700>と地方法人税の控除限度額<国税70>の合計額<770>を超える場合です。

外国法人税<800>が、国税の控除限度額<770>は超えるが、
その超えた部分<30>が、地方税の控除限度額<50>を超えない場合です。

この場合は、地方税の控除額の一部<50-30=20>が
控除余裕額となります。

控除余裕額の判定
外国法人税(800)>国税の控除限度額(770)
超える部分の外国法人税(800-770=30)<地方税の控除限度額(50)

控除余裕額の計算
地方税の控除限度額(50)-超える部分の外国法人税(30)=20

法人税法施行令144条6項、地方税の控除余裕額

 第一項から第四項までに規定する地方税の控除余裕額とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。

 内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の法人税の控除限度額及び地方法人税の控除限度額(地方法人税法第十二条第一項(外国税額の控除)に規定する地方法人税控除限度額をいう。次号、次項及び次条第四項において同じ。)の合計額を超えない場合 当該事業年度の地方税の控除限度額(前条に規定する合計額をいう。以下この項及び次項において同じ。)に相当する金額

 内国法人が各事業年度において納付することとなる控除対象外国法人税の額が当該事業年度の法人税の控除限度額及び地方法人税の控除限度額の合計額を超え、かつ、その超える部分の金額が当該事業年度の地方税の控除限度額に満たない場合 当該地方税の控除限度額から当該超える部分の金額を控除した金額に相当する金額

法人税法施行令144条6項
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