控除対象外仕入れに係る支払対価の額を按分計算する場合


今回は、インボイス制度に伴って新設される消費税法基本通達16-2-9(令第 75 条第1項第6号ロに規定する文書により控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額を明らかにしている場合の適用関係)を確認します。

基本通達の内容

先に基本通達を確認します。

(令第 75 条第1項第6号ロに規定する文書により控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額を明らかにしている場合の適用関係)
16―2―9 令第 75 条第1項第6号ロ《国、地方公共団体等の仕入れに係る消費税額の特例》に規定する文書により控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額を明らかにする場合の同条第8項及び第9項《控除対象外仕入れに係る調整計算及び取戻し対象特定収入の判定》の適用については、次による。

⑴ 取戻し対象特定収入の判定単位
令第 75 条第1項第6号ロに規定する文書により使途を特定した課税仕入れ等に係る特定収入であっても、課税仕入れ等に係る特定収入ごとに同条第9項に基づく取戻し対象特定収入の判定を行う。
ただし、その課税仕入れ等に係る特定収入が 16―2―2⑵ニに掲げる方法により使途を特定したものであって、控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額についても同様の方法により明らかにしている場合のように課税仕入れ等に係る特定収入ごとに同項に基づく取戻し対象特定収入の判定を行うことが困難な場合においては、当該課税仕入れ等に係る特定収入をまとめて、当該判定を行うこととして差し支えない。
(注) 「使途を特定」とは、令第 75 条第1項第6号及び同条第4項に規定する「……のためにのみ使用することとされている……」に該当することとなる場合をいう。

⑵ 控除対象外仕入れに係る支払対価の額
16―2―2⑵ニに掲げる方法と同様の方法により、課税期間における支出を基礎として按分計算を行うことで控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額を明らかにする場合において、当該按分計算により算出した額を控除対象外仕入れに係る支払対価の額として、令第 75 条第8項及び第9項を適用することとして差し支えない。

消費税法基本通達、令和5年10月1日以後
取戻し対象特定収入の判定単位

「課税仕入れ等に係る特定収入ごとに同条第9項に基づく取戻し対象特定収入の判定を行う。」とあり、取戻し対象特定収入の判定は、特定収入ごとに行います。1つの法人につき1回というわけではなく、判定回数が複数になることがあります。

「課税仕入れ等に係る特定収入ごと」とあるため、
課税仕入れ等に係る特定収入Aは5%超により取戻し計算可能、
課税仕入れ等に係る特定収入Bは5%以下により取戻し計算不可と
なることがあります。

ただし書きの内容
課税仕入れ等に係る特定収入ごとの判定が困難な場合は、
課税仕入れ等に係る特定収入をまとめて判定可能です。

控除対象外仕入れに係る支払対価の額

控除対象外仕入れに係る支払対価の額を按分計算(注1)した場合は、
按分計算した金額を取戻し計算の対象とすることが可能です。
注、消費税法基本通達16-2-2(2)ニの方法など

算式
補助金等×課税仕入れ等の支出÷課税期間の支出(注2)

注2、(1)、(2)イ、ロにより特定された支出や
借入金等の返済費のうち(2)ハの特定済を除く。

例えば、基本通達(2)イからハまでで使途が特定できない補助金等11,000、
課税仕入れ等の支出4,400(インボイスあり3,300、インボイスなし1,100)、
その他の支出6,600の場合

課税仕入れ等に係る特定収入
補助金等×課税仕入れ等の支出÷課税期間の支出
 11,000×4,400÷11,000=4,400

改正後、課税仕入れ等を分ける場合の計算例

課税仕入れ等に係る特定収入(インボイスあり)
補助金等×課税仕入れ等の支出(インボイスあり)÷課税期間の支出
 11,000×3,300÷11,000=3,300

課税仕入れ等に係る特定収入(インボイスなし)
補助金等×課税仕入れ等の支出(インボイスなし)÷課税期間の支出
 11,000×1,100÷11,000=1,100
 2重制限がかかるため控除対象外仕入れに係る支払対価の額とすることが可能

取戻し対象特定収入の判定

分子
課税仕入れ等に係る特定収入4,400により支出された
控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額、1,100

分母
課税仕入れ等に係る特定収入4,400により支出された
課税仕入れに係る支払対価の額の合計額、4,400

1,100÷4,400=25%>5%となるため、取戻し対象特定収入4,400あり

参考通達

二 イからハまでによっては使途が特定できない補助金等
 当該補助金等の額に、当該課税期間における支出((1)又はイ若しくはロにより使途が特定された補助金等の使途としての支出及び借入金等の返済費又は償還費のうちハにおいて処理済みの部分を除く。)のうちの課税仕入れ等の支出の額とその他の支出の額の割合を乗じて、課税仕入れ等の支出に対応する額とその他の支出に対応する額とに按分する方法によりその使途を特定する。
 この場合、これらの計算過程を令第75条第1項第6号ロに規定する文書において明らかにする。
 また、この按分計算において、借入金等の返済費又は償還費でハにおいて処理済みの部分以外の部分に使途が特定されていることとなった補助金等の部分については、更にハの方法で当該借入金等に係る事業が行われた課税期間に遡って使途を特定する。
 なお、地方公営企業法第20条の適用がある公営企業については、同法施行令第9条第3項の損益的取引、資本的取引の区分ごとにこの計算を行うものとする。

消費税法基本通達16-2-2(2)ニ
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