控除対象外消費税額等はどの部分?


今回は、控除対象外消費税額等について確認します。

内容

法人税・所得税の経理方法には、税込経理と税抜経理があり、税抜経理で一定の場合に売上に係る消費税から控除できない消費税(控除対象外消費税額等)が生じる場合があります。

控除できない消費税の法人税・所得税の取扱いについては、
国税庁の消費税経理通達が公表されています。

令和3年2月の消費税経理通達の改正の趣旨
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/shouhizei_faq/01.htm

インボイス制度が導入されると、消費税の課税仕入れであっても、
売り手がインボイス発行事業者でない場合、
原則として消費税控除ができません。

税務上の仮払消費税

改正の趣旨の中で、税務上の仮払消費税等の考え方が記載されています。

この点、法人税では、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れ等の税額及び当該課税仕入れ等の税額に係る地方消費税の額に相当する金額の合計額が仮払消費税等の額とされていますので、税務上は仮払消費税等の額がないこととなります(法令139の4、5項6項、法規28、2項)。

令和3年2月の消費税経理通達の改正の趣旨

会計上仮払消費税等と処理した金額ではなく、
消費税の計算の対象となる消費税が「税務上の仮払消費税等」となります。

控除対象外消費税額等にならない例

会計上の仮払消費税等であっても
税務上の仮払消費税等にならない例が改正の趣旨で挙げられています。

建物11,000,000円(税込)をインボイス発行事業者以外の者から取得した場合の仕訳

借方貸方
建物 10,000,000円現金 11,000,000円
仮払消費税 1,000,000円
会計上の仕訳

上記の場合、インボイスが保存できないため、消費税の控除ができません。
(借方)仮払消費税1,000,000円は、控除できない消費税(控除対象外消費税額等)と処理しそうになりますが、控除できない消費税ではなく建物の取得対価として処理することとなります。

改正の趣旨

このため、令和3年2月、消費税経理通達を改正し、仮に法人が適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについてインボイス制度導入前のように仮払消費税等の額として経理した金額があっても、税務上は当該仮払消費税等の額として経理した金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことを明らかにしました。

令和3年2月の消費税経理通達の改正の趣旨

税務上の仕訳

借方貸方
建物 11,000,000円現金 11,000,000円
税務上の仕訳

会計上の仕訳と税務上の仕訳が異なるときは、税務調整が必要です。

控除対象外消費税額等はどの部分?

会計上仮払消費税等で処理したとしても、控除できない消費税にならない場合があります。では、控除対象外消費税額等はどの部分なのか?と疑問が生じます。

所得税の取扱いについて確認します。

(控除対象外消費税額等の対象となる消費税法の規定)
11の3 税抜経理方式を適用することとなる個人事業者が国内において行う課税仕入れ等(消法第2条第1項第7号の2((定義))に規定する適格請求書発行事業者以外の者から行った同項第12号に規定する課税仕入れ(特定課税仕入れ並びに消法令第46条第1項第5号及び第6号((課税仕入れに係る消費税額の計算))に掲げる課税仕入れを除く。)を除く。につき、消法第30条第2項((仕入れに係る消費税額の控除))のほか、例えば、次の規定の適用を受ける場合には、当該規定の適用を受ける取引に係る仮払消費税等の額は、控除対象外消費税額等となることに留意する。

(1) 消法第30条第7項及び第10項から第12項まで(同条第7項及び第11項にあっては、ただし書を除く。)

(2) 消法第36条第5項((納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整))

消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて

カッコ書き(マーカー部分)で、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れは控除対象外消費税額等となるものから除外されています。控除対象外消費税額等にならないという意味です。上記の例だと、建物の本体価格に加算します。

控除対象外消費税額等が生じる例

控除対象外消費税額等が生じる例として、
消法第30条第2項(個別対応方式、一括比例配分方式)の他、

(1)については、
消費税法30条7項(ただし書き除く)、帳簿等の保存
消費税法30条10項、居住用賃貸建物の仕入税額控除の不適用
消費税法30条11項(ただし書き除く)、金・白金地金の仕入税額控除の不適用
消費税法30条12項、消費税を納付していない課税貨物の仕入税額控除の不適用

(2)については、棚卸資産の調整がある場合についても
控除対象外消費税額等が生じることが明らかにされています。

上記は例示なので、簡易課税制度や改正予定の2割控除についても、
控除対象外消費税額等は生じると考えられます。

消法30条7項(帳簿等の保存)が上記に列挙されている理由
消法30条7項(帳簿等の保存)については、インボイス発行事業者から課税仕入れを行ったとしても、インボイスを保存しなかった場合、原則として消費税の控除ができないため、控除対象外消費税額等が生じることになります。

まとめ

1、仕入税額控除(消費税法30条1項)の要件を満たす場合であっても、他規定により控除できない消費税がある場合に控除対象外消費税額等が生じます。

2、仕入税額控除(消費税法30条1項)の要件を満たさない場合は、控除対象外消費税額等が生じません。

参考情報

令和3年改正消費税経理通達関係Q&A(令和3年2月)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/shouhizei_faq/index.htm

資産に係る控除対象外消費税額等の定義

5 第一項から第三項までに規定する資産に係る控除対象外消費税額等とは、内国法人が消費税法第十九条第一項(課税期間)に規定する課税期間につき同法第三十条第一項の規定の適用を受ける場合で、当該課税期間中に行つた同法第二条第一項第九号(定義)に規定する課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税の額及び当該消費税の額を課税標準として課されるべき地方消費税の額に相当する金額並びに同法第三十条第二項に規定する課税仕入れ等の税額及び当該課税仕入れ等の税額に係る地方消費税の額に相当する金額をこれらに係る取引の対価と区分する経理をしたときにおける当該課税仕入れ等の税額及び当該課税仕入れ等の税額に係る地方消費税の額に相当する金額の合計額のうち、同条第一項の規定による控除をすることができない金額及び当該控除をすることができない金額に係る地方消費税の額に相当する金額の合計額でそれぞれの資産に係るものをいう。

法人税法施行令139条の4

法人税の取扱い

(控除対象外消費税額等の対象となる消費税法の規定)
14の3 税抜経理方式を適用することとなる法人が国内において行う課税仕入れ等(消法第2条第1項第7号の2《定義》に規定する適格請求書発行事業者以外の者から行った同項第12号に規定する課税仕入れ(特定課税仕入れ並びに消法令第46条第1項第5号及び第6号《課税仕入れに係る消費税額の計算》に掲げる課税仕入れを除く。)を除く。)につき、消法第30条第2項《仕入れに係る消費税額の控除》のほか、例えば、次の規定の適用を受ける場合には、当該規定の適用を受ける取引に係る仮払消費税等の額は、控除対象外消費税額等となることに留意する。(令3年課法2-6により追加)

(1) 消法第30条第7項及び第10項から第12項まで(同条第7項及び第11項にあっては、ただし書を除く。)

(2) 消法第36条第5項《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》

消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて

仕入税額控除

(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る適格請求書(第五十七条の四第一項に規定する適格請求書をいう。第九項において同じ。)又は適格簡易請求書(第五十七条の四第二項に規定する適格簡易請求書をいう。第九項において同じ。)の記載事項を基礎として計算した金額その他の政令で定めるところにより計算した金額をいう。以下この章において同じ。)、当該課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る消費税額(当該特定課税仕入れに係る支払対価の額に百分の七・八を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この章において同じ。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。次項において同じ。)の合計額を控除する。

消費税法
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