今回は、控除対象財産からマイナスする対応負債の額を確認してみましょう。
対応負債をマイナスする理由
公益法人は、使途が特定されていない財産(使途不特定財産)について上限額を超えて保有できません。
この使途不特定財産は、資産の額から次の3つをマイナスして計算します。
1、負債や基金の額
2、控除対象財産の帳簿価額-対応負債の額(=控除対象純資産)
3、公益目的事業継続予備財産の額
資産から1の負債をマイナスすると、純資産に近い金額が計算されます。控除対象財産については使途不特定財産に含まれないため、2でマイナスします。控除対象財産を取得するための負債(借入金など)については、1で先にマイナスしてしまっているため、2重控除を防ぐために2の控除対象財産からマイナスします。
対応負債の計算方法は、2つあります。
・控除対象財産に対応する負債を個別に考慮する方法(個別対応方式)
・控除対象財産に対応する負債を個別に考慮しない方法(一括比例配分方式)
一括比例配分方式
一括比例配分方式の計算規定を確認してみましょう。
8 前項の規定にかかわらず、公益法人は、前項の対応負債の額を控除対象財産の帳簿価額の合計額から指定純資産の額を控除して得た額に、第一号の額の同号及び第二号の額の合計額に対する割合を乗じて得た額とすることができる。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第36条第8項、施行日令和7年4月1日
一 負債の額から引当金勘定の金額を控除して得た額
二 総資産の額から負債の額及び指定純資産の額の合計額を控除して得た額
算式
控除対象財産-指定純資産(控除対象財産限定)=A
A×負債割合=控除対象財産に対応する負債
負債割合=第1号÷(第1号+第2号)
第1号、負債-引当金=純負債
第2号、総資産-(負債+指定純資産(控除対象財産限定))
「控除対象財産」から個別に対応する「控除対象財産に対応する指定純資産」をマイナスします。
負債の中には、次の4つが含まれています。
1、控除対象財産に対応する負債
2、控除対象財産以外の財産に対応する負債
3、1と2に共通して対応する負債(個別対応しない負債)
4、引当金
引当金に対応する資金(財産)については、控除対象財産に含まれないため、負債からマイナスします。1、2、3の純負債が残ります。
負債割合は、負債÷(負債+一般純資産に近い金額)を計算しています。
個別対応方式
個別対応方式の計算規定を確認してみましょう。
7 第二項第二号に規定する「対応負債の額」は、次に掲げる額の合計額をいう。
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則第36条第7項、施行日令和7年4月1日
一 各控除対象財産に対応する負債の額の合計額
二 控除対象財産の帳簿価額の合計額から前号の額及び指定純資産の額(控除対象財産に係るものに限る。以下この条において同じ。)を控除して得た額に次のイの額のイ及びロの額の合計額に対する割合を乗じて得た額
イ 負債の額から引当金勘定の金額及び各資産に対応する負債の額の合計額を控除して得た額
ロ 総資産の額から負債の額及び指定純資産の額の合計額を控除して得た額
算式
対応負債の額=第1号+第2号
第1号、控除対象財産の個別対応負債
第2号、控除対象財産-(控除対象財産の個別対応負債+指定純資産(控除対象財産限定))=A
A×負債割合=控除対象財産の比例配分対応負債
負債割合=イの額÷(イの額+ロの額)
イ、負債-(引当金+各資産の個別対応負債)
ロ、総資産-(負債+指定純資産(控除対象財産限定))
負債の中には、次の4つが含まれています。
1、控除対象財産に対応する負債
2、控除対象財産以外の財産に対応する負債
3、1と2に共通して対応する負債(個別対応しない負債)
4、引当金
一括比例配分方式では1の控除対象財産に対応する負債を個別に計算しませんが、個別対応方式では第1号の金額として個別に対応負債として計算します。
第2号の計算は、一括比例配分方式に近い計算です。1の控除対象財産に対応する負債については個別に対応負債として計算しますので、第2号の計算から除外します。
負債割合の計算も、一括比例配分方式に近い計算です。2の控除対象財産以外の財産に対応する負債については、個別に対応負債以外の負債として負債割合の計算から除外します。
引当金に対応する資金(財産)については、控除対象財産に含まれないため、負債からマイナスします。3の共通対応負債(個別対応しない負債)が残ります。
負債割合は、個別対応しない負債÷(個別対応しない負債+一般純資産に近い金額)を計算しています。
対応負債のまとめ
まとめ
負債 | 個別対応方式 | 一括比例配分方式 |
---|---|---|
1、控除対象財産に対応する負債 | 対応負債に個別加算。 | 対応負債に個別加算せず比例配分。 |
2、控除対象財産以外の財産に対応する負債 | 負債割合の分子に含めない。比例配分なし。 | 負債割合の分子に含めて比例配分。 |
3、1と2に共通して対応する負債(個別対応しない負債) | 比例配分 | 同左 |
4、引当金 | 控除対象財産に含まれないため負債割合の負債からマイナス。 | 同左 |