今回は、法人住民税の「控除対象通算対象所得調整額」を確認します。
目次
内容
法人税の通算制度で損益通算や欠損金の通算があった場合に、
「法人税割の課税標準」を通算制度がなかった状態に近づける調整をします。
今回は「控除対象通算対象所得調整額」を確認します。
具体例
前提は、以前確認した加算対象通算対象欠損調整額のケースと同じです。
グループ内の所得と損失が同額で、それぞれ法人税額はありません。
異なる点は、調整する年度が異なるところです。
法人税の計算(前期)
内容 | P社 | S1社 | 合計 |
---|---|---|---|
損益通算前 の所得 | +1,000 | △1,000 | 0 |
損益通算 | △1,000 | +1,000 | 0 |
損益通算後 の所得 | 0 | 0 | 0 |
控除対象通算対象所得調整額はS1社で生じます。
加算対象通算対象欠損調整額が生じるP社の処理は関係ありませんが、
参考情報として載せます。
P社の処理(参考)
法人住民税では、法人税の損益通算がなかった状態に調整します。
具体的には、通算対象欠損金額(P社の損金算入1,000)がある場合は、
加算対象通算対象欠損調整額(損金算入1,000×法人税率23.2%=232)を加算調整します。
法人住民税の計算(前期)
所得が0のため、法人税額0でスタートします。
内容 | P社 | S1社 | 合計 |
---|---|---|---|
法人税額 (調整前) | 0 | 0 | 0 |
加算対象通算対象欠損調整額 | 232 | 0 | 232 |
控除対象通算対象所得調整額 | 0 | 当期で調整しません。 | 0 |
課税標準となる法人税額 | 232 | 0 | 232 |
法人税の計算(当期)
前期の金額をそれぞれ逆にしています。
グループ内の所得と損失が同額で、それぞれ法人税額はありません。
内容 | P社 | S1社 | 合計 |
---|---|---|---|
損益通算前 の所得 | △1,000 | +1,000 | 0 |
損益通算 | +1,000 | △1,000 | 0 |
損益通算後 の所得 | 0 | 0 | 0 |
法人住民税の計算(当期)
所得が0のため、法人税額0でスタートします。
内容 | P社 | S1社 | 合計 |
---|---|---|---|
法人税額 (調整前) | 0 | 0 | 0 |
加算対象通算対象欠損調整額 | 0 | +232 | 232 |
控除対象通算対象所得調整額 | 0 | △232 | △232 |
課税標準となる法人税額 | 0 | 0 | 0 |
S1社の処理
当期の損益通算で損金算入1,000が発生していますので、
前期のP社と同様に232を加算調整します。
加算調整とは別に、前期(過去10年以内)の損益通算で益金算入1,000(通算対象所得金額)が発生していますので、控除対象通算対象所得調整額(益金算入1000×法人税率23.2%=232)を控除調整します。
控除調整の手続き
通算対象所得金額の生じた事業年度(前期)について
損益通算の適用があることを証する書類を添付した確定申告書を提出し、
その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、
控除調整が可能です。
この調整は、第6号様式別表2の3
(控除対象通算対象所得調整額の控除明細書)で行います。
参考情報、東京都主税局、申告書に添付する別表等について
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/info/tenpu.html#tsusan
加算対象通算対象欠損調整額と控除対象通算対象所得調整額の比較
内容 | 加算対象 通算対象欠損調整額(地方税法53条11項) | 控除対象 通算対象所得調整額(地方税法53条13項) |
---|---|---|
調整する条件 | 損益通算による損金算入額(通算対象欠損金額)がある場合 | 損益通算による益金算入額(通算対象所得金額)がある場合 |
調整する年度 | 当期 | 翌期以後 (当期から見て過去10年以内) |
調整する税率 | 発生した事業年度終了日の税率 | 発生した次の事業年度終了日の税率 |
手続き要件 | なし | あり |
計算書類 | 第6号様式別表1 | 第6号様式別表1 第6号様式別表2の3 |
参考規定
控除対象通算対象所得調整額の控除
13 法人税法第七十一条第一項(同法第七十二条第一項の規定が適用される場合に限る。)又は第七十四条第一項の規定により法人税に係る申告書を提出する義務がある法人について、当該事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた通算対象所得金額(同法第六十四条の五第三項に規定する通算対象所得金額で同項の規定により益金の額に算入されたものをいう。次項から第十六項までにおいて同じ。)がある場合の当該法人が納付すべき当該事業年度分の法人税割の課税標準となる法人税額の算定については、第一項、第三十四項又は第三十五項の規定にかかわらず、これらの規定により申告納付すべき当該法人税額の課税標準の算定期間に係る法人税割の課税標準となる法人税額から、当該法人税額(当該法人税額について租税特別措置法第四十二条の十四第一項若しくは第四項、第六十二条第一項、第六十二条の三第一項若しくは第九項又は第六十三条第一項の規定により加算された金額がある場合には、政令で定める額を控除した額)を限度として、控除対象通算対象所得調整額を控除するものとする。この場合において、控除対象通算対象所得調整額は、前事業年度以前の法人税割の課税標準とすべき法人税額について控除されなかつた額に限る。
地方税法53条
過去10年の損益通算で益金算入した金額(通算対象所得金額)がある場合に
控除対象通算対象所得調整額をマイナスします。
控除対象通算対象所得調整額の定義
14 前項に規定する控除対象通算対象所得調整額とは、通算対象所得金額に、同項の法人の当該通算対象所得金額の生じた事業年度後最初の事業年度終了の日における次の各号に掲げる当該法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める率を乗じて得た金額をいう。
地方税法53条
一 普通法人又は法人税法第六十六条第一項に規定する一般社団法人等 同項に規定する税率に相当する率
二 法人税法第六十六条第三項に規定する公益法人等又は協同組合等 同項に規定する税率に相当する率
通算対象所得金額が生じた次の事業年度終了日の法人税率を使用します。
申告要件
16 第十三項の規定は、同項の法人が通算対象所得金額(前項の規定により当該法人の第十四項に規定する控除対象通算対象所得調整額(以下この項において「控除対象通算対象所得調整額」という。)とみなされた被合併法人等の控除対象通算対象所得調整額に係る通算対象所得金額を除く。)の生じた事業年度について法人税法第六十四条の五第三項の規定の適用があることを証する書類を添付した法人の道府県民税の確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して法人の道府県民税の確定申告書を提出している場合(前項の規定により当該法人の控除対象通算対象所得調整額とみなされたものにつき第十三項の規定を適用する場合には、合併等事業年度以後において連続して法人の道府県民税の確定申告書を提出している場合)に限り、適用する。
地方税法53条