今回は、法人住民税の「控除対象配賦欠損調整額」を確認してみましょう。
内容
法人税の通算制度で損益通算や欠損金の通算があった場合に、
「法人税割の課税標準」を通算制度がなかった状態に近づける調整をします。
今回は「控除対象配賦欠損調整額」を確認します。
具体例
控除対象配賦欠損調整額は、
「配賦欠損金控除額」がある場合に控除します。
配賦欠損金控除額とは、
他の通算法人に渡した欠損金額で(他社で)損金算入されたものをいいます。
法人住民税の計算では、欠損金の通算制度がないため、
損金算入されなかったものとして控除調整します。
数字で確認します。
(加算対象被配賦欠損調整額の具体例と同じ数字です。)
前期の状況
特定欠損金以外の欠損金額と
非特定欠損金配賦額(割り当てられた基準額)が次の金額とします。
内容 | P社 | S1社 | S2社 | 合計 |
---|---|---|---|---|
特定欠損金以外の欠損金額(配賦前) | 15,000 | 13,500 | 1,500 | 30,000 |
非特定欠損金配賦額 | 28,500 | 1,500 | 0 | 30,000 |
P社の計算
非特定欠損金配賦額(基準額)28,500-特定欠損金以外の欠損金額15,000
=被配賦欠損金額13,500(受け取った欠損金額)
→ 前期に加算調整済
S1社の計算(前期発生)
非特定欠損金配賦額(基準額)1,500-特定欠損金以外の欠損金額13,500
=配賦欠損金控除額12,000(渡した欠損金額で他社の損金算入)
S2社の計算(前期発生)
非特定欠損金配賦額(基準額)0-特定欠損金以外の欠損金額1,500
=配賦欠損金額控除額1,500(渡した欠損金額で他社の損金算入)
前期(過去10年以内)の欠損金の通算で、S1社とS2社の配賦欠損金控除額(渡した欠損金額で他社で損金算入済)があるため、法人住民税の法人税額の控除調整が可能です。
法人住民税の計算(当期)
内容 | P社 | S1社 | S2社 |
---|---|---|---|
法人税額 (調整前) | - | - | - |
加算対象被配賦欠損調整額 | 注1、非特定損金算入割合を80%と仮定 注2、法人税率 前期加算済 | - | - |
控除対象配賦欠損調整額 | - | 配賦欠損金控除額12,000×80%=9,600×23.2%=2,227.2 | 配賦欠損金控除額1,500×80%=1,200×23.2%=278.4 |
課税標準となる法人税額 | - | - | - |
控除調整の手続き
配賦欠損金控除額の生じた事業年度(前期)について
欠損金の通算の適用があることを証する書類を
添付した確定申告書を提出し、
その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、
控除調整が可能です。
この控除調整は、第6号様式別表2の4
(控除対象配賦欠損調整額の控除明細書)で行います。
参考情報、東京都主税局、申告書に添付する別表等について
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/info/tenpu.html#tsusan
控除対象通算対象所得調整額と控除対象配賦欠損調整額の比較
内容 | 控除対象 通算対象所得調整額(地方税法53条13項) | 控除対象 配賦欠損調整額 (地方税法53条19項) |
---|---|---|
調整する条件 | 損益通算による益金算入額(通算対象所得金額)がある場合 | 渡した欠損金で損金算入されたもの(配賦欠損金控除額)がある場合 |
調整する年度 | 翌期以後 (当期から見て過去10年以内) | 翌期以後 (当期から見て過去10年以内) |
調整する税率 | 発生した次の事業年度終了日の税率 | 発生した次の事業年度終了日の税率 |
手続き要件 | あり | あり |
計算書類 | 第6号様式別表1 第6号様式別表2の3 | 第6号様式別表1 第6号様式別表2の4 |
参考規定
控除対象配賦欠損調整額の控除調整
19 法人税法第七十一条第一項(同法第七十二条第一項の規定が適用される場合に限る。)又は第七十四条第一項の規定により法人税に係る申告書を提出する義務がある法人について、当該事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた配賦欠損金控除額(同法第六十四条の七第一項第二号ニに掲げる金額に非特定損金算入割合を乗じて計算した金額(同条第五項の規定の適用がある場合には、同項第二号イに規定する場合における当該金額)で同法第五十七条第一項の規定により損金の額に算入されたものをいう。次項から第二十二項までにおいて同じ。)がある場合の当該法人が納付すべき当該事業年度分の法人税割の課税標準となる法人税額の算定については、第一項、第三十四項又は第三十五項の規定にかかわらず、これらの規定により申告納付すべき当該法人税額の課税標準の算定期間に係る法人税割の課税標準となる法人税額から、当該法人税額(当該法人税額について租税特別措置法第四十二条の十四第一項若しくは第四項、第六十二条第一項、第六十二条の三第一項若しくは第九項又は第六十三条第一項の規定により加算された金額がある場合には、政令で定める額を控除した額)を限度として、控除対象配賦欠損調整額を控除するものとする。この場合において、控除対象配賦欠損調整額は、前事業年度以前の法人税割の課税標準とすべき法人税額について控除されなかつた額に限る。
地方税法53条19項
規定の文言で気になった点
53条19項の中で「同法第五十七条第一項の規定により損金の額に算入されたもの」とあります。渡した欠損金なので、自社で損金算入することはなく、文言中の「損金の額に算入された」は、他社で「損金の額に算入された」という意味なのでしょうね(自社に限定していない)。
控除対象配賦欠損調整額の定義
20 前項に規定する控除対象配賦欠損調整額とは、配賦欠損金控除額に、同項の法人の当該配賦欠損金控除額の生じた事業年度後最初の事業年度終了の日における第十四項各号に掲げる当該法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める率を乗じて得た金額をいう。
地方税法53条20項
申告要件
22 第十九項の規定は、同項の法人が配賦欠損金控除額(前項の規定により当該法人の第二十項に規定する控除対象配賦欠損調整額(以下この項において「控除対象配賦欠損調整額」という。)とみなされた被合併法人等の控除対象配賦欠損調整額に係る配賦欠損金控除額を除く。)の生じた事業年度について法人税法第五十七条第一項の規定の適用があることを証する書類を添付した法人の道府県民税の確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して法人の道府県民税の確定申告書を提出している場合(前項の規定により当該法人の控除対象配賦欠損調整額とみなされたものにつき第十九項の規定を適用する場合には、合併等事業年度以後において連続して法人の道府県民税の確定申告書を提出している場合)に限り、適用する。
地方税法53条22項
使用する税率(事業年度後最初の事業年度終了の日)
14 前項に規定する控除対象通算対象所得調整額とは、通算対象所得金額に、同項の法人の当該通算対象所得金額の生じた事業年度後最初の事業年度終了の日における次の各号に掲げる当該法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める率を乗じて得た金額をいう。
一 普通法人又は法人税法第六十六条第一項に規定する一般社団法人等 同項に規定する税率に相当する率
二 法人税法第六十六条第三項に規定する公益法人等又は協同組合等 同項に規定する税率に相当する率
地方税法53条14項
→ 66条1項は23.2%
使用する税率(最初通算事業年度終了の日)
調整内容によって使用する税率(タイミング)が異なります。
4 前項に規定する控除対象通算適用前欠損調整額とは、通算適用前欠損金額に、同項の法人の最初通算事業年度(法人税法第六十四条の九第一項の規定による承認の効力が生じた日以後最初に終了する事業年度をいう。以下この項から第六項までにおいて同じ。)終了の日(二以上の最初通算事業年度終了の日がある場合には、当該通算適用前欠損金額の生じた事業年度後最初の最初通算事業年度終了の日)における次の各号に掲げる当該法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める率を乗じて得た金額をいう。
地方税法53条4項
一 普通法人(法人税法第二条第九号に規定する普通法人をいう。第十四項第一号及び第五十五項第四号において同じ。) 同法第六十六条第一項に規定する税率に相当する率
二 協同組合等(法人税法第二条第七号に規定する協同組合等をいう。第十四項第二号及び第五十五項第四号において同じ。) 同法第六十六条第三項に規定する税率に相当する率
→ 66条1項は23.2%