今回は、損益通算の遮断措置に関する規定を2つ確認します。
1、遮断措置の不適用があった場合の当初申告金額の修正
2、税務署長が遮断措置を判断する場合
遮断措置の不適用があった場合の当初申告金額の修正
下記規定が理解しづらいのでをかみ砕いてみると、
「Aについては、BをCとみなす」と規定しています。
A
通算事業年度について第6項<損益通算の遮断措置の不適用>の規定を適用して修正申告書の提出がされた後における
損益通算の遮断措置、遮断措置の不適用の規定の適用については、
B
更正通知書に通算前所得金額(所得の金額)として記載された金額を
C
確定申告書に通算前所得金額(所得の金額)として記載された金額とみなす。
規定だけ見てもよくわかりませんね。
第6項<損益通算の遮断措置の不適用>とあり、
修正申告書の提出がされた「後」とあるので、
2回目の修正申告の話なんでしょうね。
前提
例えば、
1、1回目の修正申告で所得+200を追加計上した。
2、遮断措置の不適用により損益通算を再計算した結果、損金算入額が▲500から▲600に増加した。
3、所得の金額が500から600に増加した。
4、2回目の修正申告で所得+200を計上した。
2回目の損益通算の金額をどうするのか?
下記事例については、遮断措置不適用の3要件を考慮していません。
内容 | 当初確定申告 | 修正申告書 1回目 遮断措置なし | 修正申告書 2回目 (第7項) |
---|---|---|---|
通算前所得金額 | 1,000 | 1,200 (+200) | 1,400 (+200) |
損益通算 | ▲500 | ▲600 再計算により金額が変わる。 | ?? |
所得の金額 | 500 | 600 (+100) | ?? |
1回目の修正申告で損益通算の遮断措置がない場合、
損益通算の金額が▲500から▲600に変わります。
この場合、確定申告の金額を修正申告の金額に書き換えます。
確定申告書の通算前所得金額1,000を、修正申告の1,200とみなします。
確定申告書の所得の金額500を、修正申告の600とみなします。
内容 | 当初確定申告 | 修正申告書 1回目 遮断措置なし | 修正申告書 2回目 (第7項) |
---|---|---|---|
通算前所得金額 | 1,000 →1200とみなす (1号) | 1,200 (+200) | 1,400 (+200) |
損益通算 | ▲500 →▲600に変わる | ▲600 再計算により金額が変わる。 | ?? |
所得の金額 | 500 →600とみなす (2号) | 600 (+100) | ?? |
確定申告の金額を修正申告の金額に書き換えないと
修正申告の遮断措置不適用の効果がなくなってしまうから、
この規定があるのでしょうね。
1回目の遮断措置不適用により損益通算を再計算しているのに、確定申告書の金額を当初金額のままにしておくと、2回目の修正申告時に1回目の修正申告の再計算が反映されなくなるという意味です。
2回目の修正申告の具体例
下記規定の中で「後における前二項の規定の適用については、」とあり、2回目の修正申告が「遮断措置あり」と「遮断措置なし」の2パターンがあります。
2回目の修正申告で遮断措置がある場合
内容 | 当初確定申告 | 修正申告書 1回目 遮断措置なし | 修正申告書 2回目 (第7項) |
---|---|---|---|
通算前所得金額 | 1,000 →1200とみなす | 1,200 (+200) | 1,400 (+200) |
損益通算 | ▲500 →▲600に変わる | ▲600 再計算により金額が変わる。 | ▲600 (遮断措置があるため、損益通算の金額はそのまま) |
所得の金額 | 500 →600とみなす | 600 (+100) | 800 (+200) |
2回目の修正申告で遮断措置があるため、損益通算の金額を
1回目の修正申告で書き換えた金額▲600で固定します。
2回目の修正申告で遮断措置がない場合
内容 | 当初確定申告 | 修正申告書 1回目 遮断措置なし | 修正申告書 2回目 (第7項) |
---|---|---|---|
通算前所得金額 | 1,000 →1200とみなす | 1,200 (+200) | 1,400 (+200) |
損益通算 | ▲500 →▲600に変わる | ▲600 再計算により金額が変わる。 | ▲700 (遮断措置がないため、損益通算を再計算する) |
所得の金額 | 500 →600とみなす | 600 (+100) | 800 (+200) |
2回目の修正申告で遮断措置がないため、損益通算を再計算します。
その結果、損益通算の金額は▲600ではなくなります。
仮に再計算の損益通算の金額が▲700だった場合、
▲700が3回目の修正申告時に引き継がれます。
確定申告、損益通算▲500→▲600(書き換え)→▲700(書き換え)
1回目の修正申告、遮断措置なし→▲600(書き換える)
2回目の修正申告、遮断措置なし→▲700(書き換える)
3回目の修正申告、遮断措置あり→▲700(書き換えない)
となるのでしょう。
まとめると
- 遮断措置がない場合
損益通算を再計算して確定申告書の金額を修正申告の金額に修正する。 - 遮断措置がある場合
損益通算を再計算せずに確定申告書の金額もそのまま固定する。
不当減少がある場合の遮断措置の不適用
損益通算の遮断措置はグループ全体の再計算を防止するための規定ですが、遮断措置により法人税が不当に減少すると税務署長が判断した場合は、遮断しないでグループ全体で再計算できる規定があります。
参考リンク
・グループ通算制度の損益通算
・損益通算の遮断措置
・損益通算の遮断措置の不適用
・遮断措置がない場合の2回目の修正申告等(このページ)
参考規定
遮断措置の不適用があった場合の当初申告金額の修正
7 通算事業年度について前項<第6項>の規定を適用して修正申告書の提出又は更正がされた後における前二項(第5項、第6項)の規定の適用については、
法人税法64条の5、第7項
当該修正申告書若しくは当該更正に係る国税通則法第二十八条第二項(更正又は決定の手続)に規定する更正通知書又はこれらの書類に添付された書類に
次の各号に掲げる金額<1号、2号>として記載された金額を
第七十四条第一項の規定による申告書又は当該申告書に添付された書類に
当該各号に掲げる金額<1号、2号>として記載された金額
とみなす。
一 当該通算事業年度の通算前所得金額又は通算前欠損金額
二 当該通算事業年度の所得の金額又は欠損金額