今回は、法人税の損金の額について確認します。
損金の額の内容
損金とは、会計の費用みたいなもので、
損金算入すべきものが3つ規定されています。
- 収益に対応する売上原価などの「原価」の額
- 販売費、一般管理費等の費用などの「費用」の額
- 「損失」の額
原価、費用、損失の3つです。
原価の額
1の原価は、例えば、80円の商品を仕入れ100円で売ったときの80円の商品です。資産は売ったときに原価として損金となります。売れなかったときは、原価になりません。資産となります。売上という「収益」と売上原価という「原価」が個別に対応するもので、会計上の費用収益対応の原則を考慮しています。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 100円 | 売上 100円 |
売上原価 80円 | 棚卸資産 80円 |
実務上、上記のような仕訳を処理することはありませんが、わかりやすくするために仕訳しています。不動産販売業であれば月次で上記のような仕訳を行うことはあります。
費用の額
2の費用は、例えば、1の原価とは異なり、収益と個別に対応できない費用、例えば、販売費、一般管理費、支払利息などの営業外費用をいいます。2の費用は、収益と個別に対応しないもので「期間費用」です。そのため、税務上「債務が確定しているか」がポイントとなります。
この債務が確定しているの意味は、法人税基本通達にあるので確認します。
(債務の確定の判定)
法人税基本通達2-2-12
2-2-12 法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。(昭55年直法2-8「七」、平23年課法2-17「五」により改正)
(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
上記通達の1~3を見てもわかりにくいので、タックスアンサーを確認します。
No.5387 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5387.htm
修繕費を例にとると、建物等の修繕を発注し、業者によって修繕が完了し、かつ金額の見積りが客観的にでき得る状況にあれば、上記の3つの要件を満たし未払金等として計上できることになります。
No.5387 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定
仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
建物修繕費 100万円 | 未払金 100万円 |
実務上は、上記の例であれば、修繕が完了して完了報告書等を受領しているか等がポイントです。未完了であれば、途中まで終わっていたとしても修繕費を未払計上することはできません。
損失の額
3の損失は、1の収益と個別に対応する原価でも、2の期間的に対応する費用でもない、偶発的に生じたものをいいます。偶発的に生じているので、収益との対応関係はありません。例えば、火災による建物の消失や、盗難による商品の損失などをいいます。この損失の額は、損失が発生したタイミングで損金となります。
実務上は、この損失が発生した日や時刻、損失の内容、損失が生じたと決定した資料などを残しておくと、後で調査等があったときに説明しやすくなります。