今回は、グループ通算制度の欠損金の通算後の内容を確認します。
期末の欠損金残高
グループ通算制度でない欠損金の計算は、期首欠損金額が1,000で、当期に損金算入した欠損金額が800であれば、期末欠損金額が1,000▲800=200となり、この残額200が翌期首の欠損金額として繰り越されます。
しかし、グループ通算制度の欠損金の翌期繰越しは、上記の計算と異なり、実際に損金算入した欠損金800とは別に、損金算入欠損金額(600と仮定)を計算します。この損金算入欠損金額600を期首欠損金額1,000から控除して、期末欠損金額(翌期首の欠損金額1,000▲600=400)を計算します。
実際の損金算入額
事例で確認します。
先に、以前確認した「実際の損金算入額」の計算を記載して、
後から今回確認する「損金算入欠損金額」を確認します。
内容 | P社 | S1社 | S2社 | 合計 |
---|---|---|---|---|
繰越欠損金 | 15,000 | 13,500 | 2400 | 30,900 |
うち特定欠損金額 | 0 | 0 | 900 | 900 |
損金算入限度額 | 所得3,800×50%=1,900 | 所得200×50%=100 | 所得1,400×50% =700 | 所得5,400×50%=2,700 |
特定欠損金の損金算入額 | 0 | 0 | 特定欠損金900<所得1,400 少ない金額900 | 900 |
特定欠損金を控除した後の損金算入限度額(残額) | 1,900 (95%) | 100 (5%) | 700<900 =0 | 2,000 (横計) |
特定欠損金額以外の欠損金額(配賦前の非特定欠損金額) | 15,000 | 13,500 | 1,500 | 30,000 これを「特定欠損金控除後の損金算入限度額」の比で按分する |
非特定欠損金配賦額 | 30,000×1,900÷2,000(95%)=28,500 | 30,000×100÷2,000(5%)=1,500 | 30,000×0÷2,000(0%)=0 | 30,000 |
被配賦欠損金額 | 28,500>15,000 28,500▲15,000=13,500 | - | - | 13,500 |
配賦欠損金額 | - | 1,500<13,500 13,500▲1,500=12,000 | 0<1,500 1,500▲0=1,500 | 13,500 |
非特定欠損金額(配賦後) | 15,000+13,500=28,500 | 13,500▲12,000=1,500 | 1,500▲1,500=0 | 30,000 これを非特定損金算入割合で按分する |
非特定損金算入割合(割合) | - | - | - | 2,700▲900=1,800÷30,000=0.06 |
非特定損金算入限度額 | 28,500×6%=1,710 | 1,500×6% =90 | 0×6% =0 | 1,800 |
非特定欠損金の損金算入額 | 1,900>1,710 →1,710 | 100>90 →90 | 0 | 1,800 |
損金算入額の合計 | 1,710 (非特定) | 90 (非特定) | 900 (特定) | 2,700 |
期末の欠損金額 | 13,290 (非特定) | 13,410 (非特定) | 1,500 (非特定) | 28,200 |
最後の行に期末の欠損金額を記載していますが、
この金額は翌期に繰り越しません。
翌期に繰り越す金額は次の方法により計算します。
損金算入欠損金額
算式を用いて確認します。
損金算入欠損金額=
イ(損金算入特定欠損金額)+ロ(損金算入非特定欠損金額)
イの損金算入特定欠損金額は、
配賦計算がないため実際に損金算入した金額900となります。
ロの損金算入非特定欠損金額は、実際に損金算入した金額と異なり、
配賦計算がないものとして非特定欠損金額の損金算入額を再計算します。
内容 | P社 | S1 | S2 | 合計 |
---|---|---|---|---|
欠損金額 | 15,000 | 13,500 | 2400 | 30,900 |
うち特定欠損金額 | 0 | 0 | 900 | 900 |
特定欠損金の損金算入額 | 0 | 0 | 900 | 900 |
損金算入欠損金額(4号イ) | 0 | 0 | 900 | 900 |
特定欠損金額の期末残高 | 0 | 0 | 0 | 0 |
特定欠損金額以外の欠損金額(配賦前の非特定欠損金額) | 15,000 | 13,500 | 1,500 | 30,000 |
非特定欠損金額(配賦後) | 15,000+13,500=28,500 | 13,500▲12,000=1,500 | 1,500▲1,500=0 | 30,000 今回は使いません。 |
非特定損金算入割合(割合) | - | - | - | 2,700▲900=1,800(残額)÷30,000=0.06 |
損金算入非特定欠損金額 (4号ロ) | 15,000×割合=900 | 13,500×割合=810 | 1,500×割合=90 | 1,800 |
非特定欠損金の損金算入額 (実際に損金算入した金額) | 1,710 | 90 | 0 | 1,800 今回は使いません。 |
配賦後非特定欠損金額▲配賦前非特定欠損金額 | 28,500▲15,000=13,500 | 1,500▲13,500=▲12,000 | 0▲1,500=▲1,500 | +-0 |
非特定欠損金額の期末残高 | 15,000▲900=14,100 (非特定) | 13,500▲810=12,690 (非特定) | 1,500▲90=1,410 (非特定) | 28,200 |
今回計算した損金算入非特定欠損金額(計算上の金額)と実際の損金算入した非特定欠損金額)はそれぞれ異なります。
欠損金の通算の配賦による欠損金残額の移転を防止するための規定です。
(どこかで見た記憶があるのですが、情報元が確認できませんでした。)
損金算入欠損金額の内容
算式を用いて確認します。
損金算入欠損金額=イ+ロ
イ=特定欠損金額と10年内事業年度の特定損金算入限度額を比較して少ない金額ロ=非特定欠損金額(配賦前)×非特定損金算入割合
イの特定欠損金は、配賦計算がないため「実際に損金算入した金額」です。
ロの非特定欠損金は、配賦計算「前」の非特定欠損金額に非特定損金算入割合を乗じて計算します。
特定損金算入限度額と非特定損金算入割合についてはこちら。
以上、損金算入欠損金額について確認しました。
以下、参考規定を載せます。
参考規定
法人税法64条の7、1項4号
四 適用事業年度後の事業年度における第五十七条第一項の規定<欠損金の繰越し>の適用については、各事業年度(第一号の規定の適用がある場合には、その適用がないものとした場合における事業年度。以下この号において同じ。)において生じた欠損金額で同項<57条1項>の規定により当該適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額(第十一項において「損金算入欠損金額」という。)は、次に掲げる金額の合計額とする。
法人税法64条の7、1項4号
イ、特定欠損金の損金算入欠損金額
当該各事業年度において生じた特定欠損金額のうち当該各事業年度に係る十年内事業年度に係る特定損金算入限度額に達するまでの金額
ロ、非特定欠損金の損金算入欠損金額
当該各事業年度において生じた欠損金額(特定欠損金額を除く。)に当該欠損金額に係る非特定損金算入割合を乗じて計算した金額