新しいリース会計基準と税務調整


今回は、新しいリース会計基準と税務調整で気になった部分を確認してみましょう。

変わった点

令和7年度税制改正大綱で、「オペレーティング・リース取引については、賃貸借処理を維持する」内容が公表されています。

大綱を見た時点で、現在の取扱いと何も変わっていないような?と思いましたが、リース会計基準の改正で税法の原則的な取扱いに影響が生じるため、例外(別段の定め)を改正するという意味なのでしょう。

リース会計基準の改正では、オペレーティング・リースについても原則として「使用権資産」として資産を計上する必要があります。

会計では資産計上、税務では賃貸借処理(資産計上しない)。
会計と税務で異なる場合、税務調整が必要です。

会計の例外はないのかと思い確認してみると、例外が2つあります。例外が利用できれば原則として税務調整が不要と考えられます。

支払利息を区分しない方法

1つ目の例外は、支払利息を区分せずにリース料総額を使用権資産として減価償却する方法です。

例えば、次の場合
・リース料総額 60,000
・リース期間 5年

会計上

借方貸方
使用権資産 60,000リース負債 60,000
リース負債 12,000現金 12,000
減価償却費 12,000使用権資産 12,000
(減価償却累計額)

税務上

借方貸方
賃借料 12,000現金 12,000

税務調整

・使用権資産の減価償却費 12,000
・税務上の賃借料 12,000
が一致しますので税務調整は不要となります。

使用権資産とリース負債を税務上否認して調整する方法もありそうですが、複雑にしないでほしいなと。

利息部分を定額法で処理する方法

2つ目の例外は、支払利息を区分して定額法で処理する方法です。

経費として処理できる科目が減価償却費と支払利息の2つに分かれますが、いずれも定額法ですので、原則として税務調整は不要となります。

例えば、次の場合
・リース料総額 60,000
・リース期間 5年

会計上

借方貸方
使用権資産 49,318リース負債 49,318
リース負債 9,864
支払利息 2,136
現金 12,000
減価償却費 9,864使用権資産 9,864
(減価償却累計額)

支払利息の総額10,682=リース料総額60,000-リース負債49,318
1年間の支払利息10,682÷5年=2,136

税務上

借方貸方
賃借料 12,000現金 12,000

税務調整

・使用権資産の減価償却費 9,864 + 支払利息 2,136 = 12,000
・税務上の賃借料 12,000
が一致しますので税務調整は不要となります。

様々な条件がありますので、必ず税務調整が不要となるものではないと思いますが、注意するのは利息法で計算した場合でしょう。

例外の基準

使用権資産総額に重要性が乏しい場合に、2つの例外が利用できます。

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、
分子÷分母<10%をいいます。

分子、未経過の借手のリース料の期末残高(A)
分母、(A)+有形(無形)固定資産の期末残高

リース会計基準の用語の定義

使用権資産が、
・ファイナンス・リース(所有権移転、所有権移転外)
・オペレーティング・リース
のどの部分を指しているのか不明だったので定義を確認してみました。

第6項
「リース」は、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部をいいます。

原資産は、第9項に定義があります。

第9項
「原資産」は、リースの対象となる資産で、貸手によって借手に当該資産を使用する権利が移転されているものをいいます。

使用権資産は、第10項に定義があります。

第10項
「使用権資産」は、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいいます。

使用権資産の定義では、
・ファイナンス・リース(所有権移転、所有権移転外)
・オペレーティング・リース
の2つを区別していませんので、両方を指しています。

第11項は、ファイナンス・リース
・解約できない等
・コスト負担あり
の2つが要件となっていますので、変わっていません。

第12項は、所有権移転ファイナンス・リース
第13項は、所有権移転外ファイナンス・リースが定義されています。

第14項は、オペレーティング・リースが定義されています。
ファイナンス・リース以外のリースをいいます。

前からある用語については、内容はほとんど変わっていません。

参考規定など

リースに関する会計基準の適用指針
第39項、原則は利息法 → 税務調整あり
第40項(1)、支払利息を区分しない方法 → 原則として税務調整なし
第40項(2)、支払利息を定額法で処理する方法 → 同上
第41項、例外が利用できる基準は10%未満

一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算する。

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

法人税法第22条第4項、施行日令和7年1月1日

→ 法令は変わらないが、会計処理の基準が変わる。

PAGE TOP