時価評価をしない通算法人が新事業を開始した場合の欠損金額の切捨て


今回は、時価評価をしない通算法人が新事業を開始した場合の欠損金額の切捨てを確認してみましょう。

内容

カッコ書きを外して確認してみましょう。


通算法人で時価評価除外法人に該当するものが
・通算承認効力発生日の5年前の日又は
・その通算法人の設立日のうちいずれか遅い日
からその通算承認効力発生日まで継続して
その通算法人に係る通算親法人(注1)との間に
支配関係がある場合として政令で定める場合に該当しない場合(注2)で、

かつ、その通算法人について通算承認効力発生「後」に
その通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合として
政令で定める場合に該当しない場合において、

その通算法人が
その通算法人に係る通算親法人との間に
最後に支配関係を有することとなった日(注3、支配関係発生日)以後に
新たな事業を開始したときは、

その通算法人(注4)の
その通算承認効力発生日「以後」に開始する各事業年度(注5)における
欠損金の繰越し(法人税法57条1項)の適用については、
次に掲げる欠損金額は、ないものとする。


欠損金額が切り捨てられる前提は2つ。

  1. 5年超継続支配要件を満たさない場合
  2. 共同事業要件を満たさない場合

5年超継続支配要件に該当しない場合、かつ
共同事業要件に該当しない場合において、
支配関係発生日「以後」に新事業を開始したときは、
一定の欠損金額が切り捨てられます。

反対に

  1. 5年超継続支配要件を満たす場合
  2. 共同事業要件を満たす場合

上記のいずれかを満たす場合は、
新事業を開始したとしても欠損金額が切捨てられません。

詳細は政令を確認する必要があります。

「新たな事業を開始したときは」は、
法法64条の14(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入_通算制度)と
同じ表現です。

この「特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入」は、
特定適格組織再編成等(法法62条の7)と同じ表現です。
租税回避防止目的の規定は色々ありますね。

切り捨てられる欠損金額は、次の2つです。

支配事業年度前の欠損金額(1号)

1号、その通算法人の支配関係事業年度(注1)「前」の各事業年度で通算前10年内事業年度(注2)に該当する事業年度において生じた欠損金額(注3)

注1、 支配関係発生日の属する事業年度をいう。2号において同じ。

通算法人A                      通算開始
通算前10年(使用制限、8項)-|------------|--
                  ↓ 支配関係
通算法人B                      通算開始
通算前10年(使用制限、8項)-|--支配関係事業年度--|--

注2、その通算承認効力発生日「前」10年以内に開始した各事業年度をいう。以下1号・2号において同じ。

注3、法法57②によりその通算法人の欠損金額とみなされたものを含み、法法57①により通算前10年内事業年度に損金算入されたもの、4項、5項、6項、この8項、9項又は法法58条1項によりないものとされたもの及び欠損金の繰戻し還付の対象となったものを除く。2号において同じ。

支配事業年度以後の欠損金のうち一定のもの(2号)

2号 その通算法人の支配関係事業年度「以後」の各事業年度で通算前10年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失相当額(法法64条の14②)から成る部分の金額として政令で定める金額

                      通算開始
通算法人A-|--支配関係事業年度--|----|
        ↓ 支配関係
        ↓ 以後生じた欠損金額のうち含み損資産が実現したもの
        ↓  (使用制限、8項2号)
        ↓
通算法人B-|--支配関係事業年度--|----|
          以後生じた欠損金額のうち含み損資産が実現したもの
          (使用制限、8項2号)

参考規定

新たに事業を開始した場合の欠損金の切捨て

8 通算法人で時価評価除外法人に該当するものが通算承認の効力が生じた日の五年前の日又は当該通算法人の設立の日のうちいずれか遅い日から当該通算承認の効力が生じた日まで継続して当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のいずれか)との間に支配関係がある場合として政令で定める場合に該当しない場合(当該通算法人が通算子法人である場合において、同日から同日の属する当該通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日までの間に第六十四条の十第五項又は第六項の規定により当該通算承認が効力を失つたとき(当該通算法人を被合併法人とする合併で他の通算法人を合併法人とするものが行われたこと又は当該通算法人の残余財産が確定したことに基因してその効力を失つた場合を除く。)を除く。)で、かつ、当該通算法人について通算承認の効力が生じた後に当該通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合に該当しない場合において、当該通算法人が当該通算法人に係る通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のうち当該通算法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日が最も早いものとの間に最後に支配関係を有することとなつた日。第一号において「支配関係発生日」という。)以後に新たな事業を開始したときは、当該通算法人(当該通算法人であつた内国法人を含む。)の当該通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度(同日の属する事業年度終了の日後に当該事業を開始した場合には、その開始した日以後に終了する各事業年度)における第一項の規定の適用については、次に掲げる欠損金額は、ないものとする。

一 当該通算法人の支配関係事業年度(支配関係発生日の属する事業年度をいう。次号において同じ。)前の各事業年度で通算前十年内事業年度(当該通算承認の効力が生じた日前十年以内に開始した各事業年度をいう。以下この号及び次号において同じ。)に該当する事業年度において生じた欠損金額(第二項の規定により当該通算法人の欠損金額とみなされたものを含み、第一項の規定により通算前十年内事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの、第四項から第六項まで、この項若しくは次項又は第五十八条第一項の規定によりないものとされたもの及び第八十条の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。次号において同じ。)

二 当該通算法人の支配関係事業年度以後の各事業年度で通算前十年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち第六十四条の十四第二項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として政令で定める金額

法人税法57条8項

5年超継続支配要件

3 法第五十七条第八項に規定する支配関係がある場合として政令で定める場合は、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合とする。

一 法第五十七条第八項の通算法人と当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のいずれか)との間に当該通算法人について通算承認の効力が生じた日(次項において「通算承認日」という。)の五年前の日(次号において「五年前の日」という。)から継続して支配関係がある場合

二 法第五十七条第八項の通算法人又は当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人の全て)が五年前の日後に設立された法人である場合次に掲げる場合を除く。)であつて当該通算法人と当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のうちその設立の日が最も早いもの(当該通算法人が五年前の日後に設立された法人である場合には、他の通算法人のうち当該通算法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日が最も早いもの)。以下この号において「通算親法人等」という。)との間に当該通算法人の設立の日又は当該通算親法人等の設立の日のいずれか遅い日から継続して支配関係があるとき。
イ 他の通算法人との間に支配関係(通算完全支配関係を除く。)がある他の内国法人を被合併法人とする適格合併で、当該通算法人を設立するもの又は当該他の通算法人が当該他の内国法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日以後に設立された当該通算法人を合併法人とするものが行われていた場合(同日が当該五年前の日以前である場合を除く。)
ロ 他の通算法人が他の内国法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日以後に設立された当該通算法人との間に法第五十七条第二項に規定する完全支配関係がある当該他の内国法人(当該他の通算法人との間に支配関係(通算完全支配関係を除く。)があるものに限る。)で当該通算法人が発行済株式又は出資の全部又は一部を有するものの残余財産が確定していた場合(同日が当該五年前の日以前である場合を除く。)
ハ 当該通算法人との間に支配関係(通算完全支配関係を除く。)がある他の法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする法第五十七条第四項に規定する適格組織再編成等で、当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のいずれか。ハにおいて同じ。)を設立するもの又は当該通算法人が当該他の法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日以後に設立された当該通算法人に係る通算親法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人とするものが行われていた場合(同日が当該五年前の日以前である場合を除く。)

法人税法施行令112条の2

共同事業要件

1号、相互関連
2号、事業規模割合が5倍を超えない。
3号、事業規模割合が2倍を超えない。
4号、特定役員の全てが退任しない。
5号、加入に伴う資産の時価評価をする法人であること等

政令で定める場合は、次の3パターン。
1号、2号、3号の要件
1号、4号の要件
5号の要件

4 法第五十七条第八項に規定する共同で事業を行う場合として政令で定める場合は、第一号から第三号までに掲げる要件、第一号及び第四号に掲げる要件又は第五号に掲げる要件に該当する場合とする。

一 法第五十七条第八項の通算法人又は通算承認日の直前において当該通算法人との間に完全支配関係(法第六十四条の九第一項に規定する政令で定める関係に限る。以下この号及び第三号において同じ。)がある法人(当該完全支配関係が継続することが見込まれているものに限る。)の当該通算承認日前に行う事業のうちのいずれかの主要な事業(以下この項において「通算前事業」という。)と当該通算法人に係る通算親法人(当該通算法人が通算親法人である場合にあつては、他の通算法人のいずれか。以下第四号までにおいて同じ。)又は当該通算承認日の直前において当該通算親法人との間に完全支配関係がある法人(当該完全支配関係が継続することが見込まれているものに限るものとし、当該通算法人を除く。)の当該通算承認日前に行う事業のうちのいずれかの事業(以下この項において「親法人事業」という。)とが相互に関連するものであること。

二 通算前事業と親法人事業(当該通算前事業と関連する事業に限る。以下この項において同じ。)のそれぞれの売上金額、当該通算前事業と当該親法人事業のそれぞれの従業者の数又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと。

三 通算前事業(親法人事業と関連する事業に限る。以下この項において同じ。)が法第五十七条第八項の通算法人が当該通算法人に係る通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなつた時(当該通算法人又は当該通算法人との間に完全支配関係がある法人(以下この号において「通算法人等」という。)がその時から通算承認日の前日までの間に適格合併、適格分割又は適格現物出資(以下この号において「適格合併等」という。)により当該通算法人等との間に完全支配関係がない法人から通算前事業の全部又は一部の移転を受けている場合には、当該適格合併等の時。以下この号において「通算法人支配関係発生時」という。)から当該通算承認日まで継続して行われており、かつ、当該通算法人支配関係発生時と当該通算承認日における当該通算前事業の規模(前号に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね二倍を超えないこと。

四 通算承認日の前日の通算前事業を行う法人の特定役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。)である者(法第五十七条第八項の通算法人が当該通算法人に係る通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日前(当該支配関係が当該通算前事業を行う法人又は親法人事業を行う法人の設立により生じたものである場合には、同日)において当該通算前事業を行う法人の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該法人の経営に従事していた者に限る。)であつた者に限る。)の全てが通算完全支配関係を有することとなつたことに伴つて退任をするものでないこと。

五 法第五十七条第八項の通算法人が次に掲げる法人のいずれかに該当すること。
イ 法第六十四条の十二第一項第四号(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)に掲げる法人
ロ 法第二条第十二号の十七ハ(定義)に該当する株式交換等により通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなつた株式交換等完全子法人

法人税法施行令112条の2
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