業務に係る雑所得の例示の300万円基準の理由


今回は、令和4年から変更される予定の「業務に係る雑所得」について確認します。

変更の内容

法令の改正ではありませんが、業務の収入金額が300万円を超えない場合、
「業務に係る雑所得」とする取扱いが検討されています。

事業所得として申告したものが、
雑所得に変更されると税額に影響が生じます。

税金をさらに徴収する目的もあるかもしれませんが、
主な目的は、雑所得の書類の保存義務規定だと思います。

変更の理由

2年前の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は、「現金預金取引等関係書類」を保存する必要があります。この書類の保存義務とセットで、書類の検査規定が設けられています。所得区分別に、検査規定を整理すると次の表となります。

所得区分2年前の収入本年分の
義務
検査規定
事業所得
(白色申告)
300万円超
(基準なし)
帳簿書類の保存
(所得税法232条1項)
あり
(所得税法232条3項)
事業所得
(白色申告)
300万円以下
(基準なし)
帳簿書類の保存
(所得税法232条1項)
あり
(所得税法232条3項)
雑所得300万円超書類の保存
(所得税法232条2項)
あり
(所得税法232条3項)
雑所得300万円以下なし
検査規定のまとめ

2年前の雑所得の収入金額が300万円以下の場合、
雑所得の書類の保存義務がないため、調査時の検査も不要となります。
この検査の有無を明確にすることが主な目的でしょう。

所得税基本通達の改正案

(注)事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、
社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するの
であるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る
収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係
る雑所得と取り扱って差し支えない。

業務に係る雑所得の例示、35-2
参考規定

(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)
第二百三十二条 その年において不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う居住者又は第百六十四条第一項各号(非居住者に対する課税の方法)に定める国内源泉所得に係るこれらの業務を行う非居住者(青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている者を除く。)は、財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにこれらの所得を生ずべき業務に係るその年の取引(恒久的施設を有する非居住者にあつては、第百六十一条第一項第一号(国内源泉所得)に規定する内部取引に該当するものを含む。次項において同じ。)のうち総収入金額及び必要経費に関する事項を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿(その年においてこれらの業務に関して作成したその他の帳簿及びこれらの業務に関して作成し、又は受領した財務省令で定める書類を含む。第三項において同じ。)を保存しなければならない。

 その年において雑所得を生ずべき業務を行う居住者又は第百六十四条第一項各号に定める国内源泉所得に係る雑所得を生ずべき業務を行う非居住者で、その年の前々年分のこれらの雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が三百万円を超えるものは、財務省令で定めるところにより、これらの雑所得を生ずべき業務に係るその年の取引のうち総収入金額及び必要経費に関する事項を記載した書類として財務省令で定める書類を保存しなければならない。

 国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、前二項の規定の適用を受ける者の所得税に係るこれらの規定に規定する総収入金額及び必要経費に関する事項の調査に際しては、第一項の帳簿又は前項の書類を検査するものとする。ただし、当該帳簿又は当該書類の検査を困難とする事情があるときは、この限りでない。

所得税法

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