今回は、権利が複数ある場合の宅地の評価を確認してみましょう。
権利が複数ある場合の宅地の評価
今回確認する通達は、25-3番です。
国税庁、財産評価基本通達
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/05.htm#a-25_3
土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価
25-3 土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の価額は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次の算式により計算した金額によって評価する。
(1) 借地権、定期借地権等又は地上権及び区分地上権の目的となっている宅地の価額
その宅地の自用地としての価額 -(27-4((区分地上権の評価))の定めにより評価した区分地上権の価額 +27-6((土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価))(1)の定めにより評価した借地権、定期借地権等又は地上権の価額)
(2)区分地上権及び区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額
その宅地の自用地としての価額 -(27-4の定めにより評価した区分地上権の価額 +27-5((区分地上権に準ずる地役権の評価))の定めにより評価した区分地上権に準ずる地役権の価額)
(3) 借地権、定期借地権等又は地上権及び区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額
その宅地の自用地としての価額 -(27-5の定めにより評価した区分地上権に準ずる地役権の価額+27-6(2)の定めにより評価した借地権、定期借地権等又は地上権の価額)(1)が
1、借地権・定期借地権等・地上権
2、区分地上権
の組み合わせです。
(2)が
1、区分地上権
2、区分地上権に準ずる地役権
の組み合わせです。
(3)が
1、借地権・定期借地権等・地上権
2、区分地上権に準ずる地役権
の組み合わせです。
全て、権利の価額を計算した後に差額で宅地(土地)部分の評価をします。
(1)の宅地は、
1、自用地としての価額
2、区分地上権の価額
3、区分地上権が設定されている場合の借地権の価額
4、1-(2+3)で計算します。
(2)の宅地は、
1、自用地としての価額
2、区分地上権の価額
3、区分地上権に準ずる地役権の価額
4、1-(2+3)で計算します。
(3)の宅地は、
1、自用地としての価額
2、区分地上権に準ずる地役権の価額
3、区分地上権に準ずる地役権が設定されている場合の借地権の価額
4、1-(2+3)で計算します。
権利が複数設定されているため、
「自用地としての価額」から「2つの権利の価額」をマイナスしましょう。
差額で求める必要があるため、先に2つの権利の価額を
計算する必要があります。
計算例
1、借地権の価額
自用地としての価額(1億円)×借地権割合(50%)=5,000万円
2、区分地上権が設定されている場合の借地権の価額
5,000万円×(1-区分地上権割合(30%)=70%)=3,500万円
3、区分地上権の価額
自用地としての価額(1億円)×区分地上権割合(30%)=3,000万円
4、宅地の評価
1、自用地としての価額 1億円
2、区分地上権の価額 3,000万円
3、区分地上権がある借地権の価額 3,500万円
4、1-(2+3)=3,500万円
貸宅地割合がある場合
注意書きは、貸宅地割合がある場合です。
(注) 国税局長が貸宅地割合を定めている地域に存する借地権の目的となっている宅地の価額を評価する場合には、25((貸宅地の評価))(1)のただし書の定めにより評価した価額から、当該価額に27-4((区分地上権の評価))の区分地上権の割合又は27-5((区分地上権に準ずる地役権の評価))の区分地上権に準ずる地役権の割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価することに留意する。算式に変えてみましょう。
1、25((貸宅地の評価))(1)のただし書の定めにより評価した価額
2、当該価額に
27-4((区分地上権の評価))の区分地上権の割合又は
27-5((区分地上権に準ずる地役権の評価))の区分地上権に準ずる地役権の割合
を乗じて計算した金額
3、1-2
25(1)のただし書きを見てみましょう。
ただし、借地権の目的となっている宅地の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した価額の宅地の自用地としての価額に対する割合(以下「貸宅地割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が貸宅地割合を定めている地域においては、その宅地の自用地としての価額にその貸宅地割合を乗じて計算した金額によって評価する。自用地としての価額×貸宅地割合=貸宅地の評価額が1番です。
1番の評価額に
・27-4の区分地上権割合(30%など)
・27-5の区分地上権に準ずる地役権の割合(30%など)
をかけた金額が2番です。
1番-2番で、土地の上に存する権利が競合する場合の宅地を評価します。
計算例
自用地としての価額 1億円
貸宅地割合 50%
貸宅地の評価額 1億円×50%=5,000万円(1番)
5,000万円(1番)×区分地上権割合(30%)=1,500万円(2番、権利の価額)
1番-2番=3,500万円が宅地の評価額となります。
