欠損金の通算の再計算_当初被配賦欠損金控除額がある場合


今回は、欠損金の通算の再計算のうち、
当初被配賦欠損金控除額がある場合を確認します。

資料

国税庁の資料を使って金額を確認します。

申告書別表の記載例、(グループ通算制度適用法人用)
令和4年11月(令和5年3月改訂)、P60
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/hojin/group_tsusan/pdf/0022010-057_01.pdf

欠損金の通算の再計算の概要

欠損金の通算の再計算については、
自社の金額に誤りがあった場合は、
他社の計算を止めて自社の再計算をします。

自社の再計算についても、
受け取った欠損金や渡した欠損金があるため、
他社に影響が生じる金額については、
金額を固定して自社の再計算をします。

自社の再計算の損金算入額は、
1号金額+2号金額となります。

1号金額=
被配賦欠損金控除額(受け取った欠損金×非特定損金算入割合)の合計額

受け取った欠損金で損金算入した金額は、
再計算でも損金算入となります。
金額を変えると他社で影響が生じるからです。

2号金額は、イの金額をないものとして、
ロの損金算入限度額を再計算した上で、
通常の欠損金の損金算入の規定を適用した損金算入額

イの金額=
配賦欠損金控除額(渡した欠損金×非特定損金算入割合)

渡した欠損金で損金算入した金額は、再計算でないものとします。
渡した相手の法人で損金算入しているため、金額を変えると
影響が生じるからです。

例えば、次の場合
A社の非特定欠損金額70、非特定欠損金配賦額(割り当て)50
B社の非特定欠損金額30、非特定欠損金配賦額(割り当て)50

A社の配賦欠損金額は20、B社の被配賦欠損金額は20となります。
受け渡しした欠損金額のうち、非特定損金算入割合に応じて
損金算入されます。

ロの金額=再計算した損金算入限度額
1、当初損金算入超過額は、ロの金額にプラスします。
2、当初損金算入不足額×損金算入不足割合は、ロの金額からマイナスします。

損金算入限度額を当初申告の金額に応じて調整します。

参考規定、法人税法64条の7第5項

計算例

申告書別表の記載例、(グループ通算制度適用法人用)
令和4年11月(令和5年3月改訂)、P60

P社の欠損控除前所得金額が14,000から20,000に増加した場合です。
所得金額が+6,000となるため、
損金算入限度額が、7,000から10,000に増加します。

P61に上記の概要が記載されています。

P62が記載例です。

控除未済額の転記

別表7(2)付表1
4欄、特定欠損金額に係る控除未済額 2,200
5欄、非特定欠損金額に係る控除未済額 3,500

当初申告の金額を転記します。

当初損金算入超過額と当初損金算入不足額の計算

次に、下の別表18(1)で当初損金算入超過額と当初損金算入不足額を
当初申告の別表7(1)から計算します。

ここでは、当初申告の
1、欠損金額
2、損金算入限度額
3、1-2で超過額と不足額を計算しています。

P社の計算
1、欠損金額
 5,066=特定欠損金額の損金算入額2,200+非特定欠損金額の損金算入額2,866
2、損金算入限度額
 14,000×50%=7,000
3、損金算入不足額
 1-2=△1,934→1,934

S1社の計算
損金算入不足額 141

S2社の計算
損金算入超過額 2,075

S3社の計算
損金算入超過額、損金算入不足額 0

それぞれ損金算入超過額と損金算入不足額を合計すると
2,075と2,075となります。

被配賦欠損金控除額の計算

P社の非特定欠損金額 3,500
1回目の計算で割り当てられた非特定欠損金配賦額 5,592

割り当てられた金額の方が多いため、
他社から欠損金額を5,592-3,500=2,092受け取っています。

全額損金算入ではなく、
1回目の計算で51.25%(非特定損金算入割合)損金算入しています。2,092×51.25%=1,072(21欄、当初被配賦欠損金控除額)

別表7(2)付表2、修正申告の計算

この別表では、欠損金の当期控除額を再計算しています。
(当初申告の欠損金の当期控除額の計算)の再計算です。
1、欠損金額
2、損金算入限度額
3、当期控除額(1と2のうち少ない金額)

1欄から6欄で、当期控除額を計算しています。
先に7欄から16欄で損金算入限度額を計算します。

7欄、修正後の控除前所得金額 20,000(=14,000+6,000)
8欄、損金算入限度額 20,000×50%=10,000を記載します。

計算方法を再掲します。
ロの金額=再計算した損金算入限度額 ←この計算が終了しました。
1、当初損金算入超過額は、ロの金額にプラスします。
2、当初損金算入不足額×損金算入不足割合は、ロの金額からマイナスします。

9欄、当初損金算入超過額がある場合はプラスします。
P社の当初損金算入超過額は0のため、プラスがありません。

損金算入不足割合

当初損金算入不足額については、全額ではなく、
損金算入不足割合に応じてマイナスします。

P社の損金算入不足額は、計算済の1,934を10欄に転記します。
3、損金算入不足額
 1-2=△1,934→1,934

損金算入不足割合(13欄=11欄÷12欄)を計算します。
今回は、2,075÷2,075=100%(13欄)になります。

11欄、他社の当初損金算入超過額の合計額 2,075(計算済)
12欄、当初損金算入不足額の合計額 2,075(計算済)

他社の損金算入限度額を超過した合計額2,075(S2社)は、
S2社の損金算入限度額2,075(=4,150(所得金額)×50%)を超えて
S2社の特定欠損金額4,150が損金算入されているために発生します。

1、当初の特定欠損金額の損金算入額(S2社) 4,150
(当初の非特定欠損金額の損金算入額は、
先に特定欠損金額を損金算入しているため0)
2、当初の損金算入限度額(S2社) 2,075
3、当初損金算入超過額(S2社) 1-2=2,075

計算目的は、「他社から損金算入限度額を受け取ったと
見ることができる金額」の算定です。

その通算法人の損金算入限度額が所得の金額の50%相当額であり、かつ、特定欠損金額を有する場合には、損金算入限度額を超えて欠損金が損金算入されることがあり(上記⑦参照)、その超える部分の金額が当初損金算入超過額となります。
 すなわち、期限内申告において他の通算法人から損金算入限度額の配賦を受けたとみることができる金額です。

連結納税制度の見直しに関する法人税法等の改正https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/explanation/pdf/p820-1177.pdf、P881

「損金算入限度額を超えて損金算入したのは、
損金算入限度額を他社から受け取った」と仮定しています。

反対の「損金算入限度額を下回った合計額2,075」は、
損金算入限度額を他社に渡したと仮定しています。

14欄、調整当初損金算入不足額(10欄×13欄)
1,934×損金算入不足割合100%=1,934

 他の通算法人の損金算入限度額が欠損控除前所得金額の50%相当額であり、かつ、特定欠損金額を有する場合には、損金算入限度額を当該他の通算法人に配分することにより欠損金額が十分あっても欠損金の損金算入額が損金算入限度額に満たないことがあり(上記⑦参照)、その満たない部分の金額が当初損金算入不足額となります。単に欠損金が少ないことにより欠損金の損金算入額が損金算入限度額に満たない場合を除外するため、損金算入不足割合を乗ずることとされています。すなわち、期限内申告において他の通算法人に損金算入限度額を配賦したとみることができる金額です。

連結納税制度の見直しに関する法人税法等の改正https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/explanation/pdf/p820-1177.pdf、P882
当初過不足調整損金算入限度額

当初過不足調整損金算入限度額(15欄)は、
再計算した損金算入限度額に下記の調整をした金額を記載します。

計算方法を再掲します。
ロの金額=再計算した損金算入限度額 (8欄)
1、当初損金算入超過額(9欄)は、ロの金額にプラスします。
2、当初損金算入不足額×損金算入不足割合(14欄)は、ロの金額からマイナスします。

当初過不足調整損金算入限度額
8,066(15欄)=10,000(8欄)-1,934(14欄)

所得が増えて、控除限度額も増えて10,000となりましたが、
当初申告で他社に渡した損金算入限度額1,934のうち
他社で損金算入した金額1,934については、
当社の損金算入限度額からマイナスします。
他社で使用しているからです。

調整損金算入限度額

調整損金算入限度額(16欄)は、
当初過不足調整損金算入限度額(15欄)から
当初被配賦欠損金控除額をマイナスします。

6,994(16欄)=8,066(15欄)-1,072(当初被配賦欠損金控除額)

当初被配賦欠損金控除額(当初申告で他社から受け取った非特定欠損金額で損金算入したもの)については、金額を変更せずに損金算入とするため、再計算する損金算入限度額からマイナスします。

マイナスする理由の違い
前記の1,934のマイナスは他社に損金算入限度額を渡したと仮定しています。
今回の1,072のマイナスは他社から欠損金額を受け取っています。

ここまでで、限度額の計算が終わりました。
1欄から6欄で、当期控除額を計算しています。
先に7欄から16欄で損金算入限度額を計算します。←終了

6,994を3欄(既損金算入額控除後の損金算入限度額)に転記します。

当期控除額の計算

1欄、調整当初配賦欠損金控除額 0
(別の事例で計算しているものがあります。)

2欄、当初配賦欠損金控除額(渡した欠損金で損金算入したもの)以外の
非特定欠損金額
3,500-0(1欄)=3,500

3欄、再計算した損金算入限度額 6,994

4欄、当期控除額
特定欠損金額に係る控除未済額2,200+2欄の非特定欠損金額3,500=5,700と
3欄の再計算した損金算入限度額6,994のうち少ない金額は、5,700

計には、5,700に当初申告で他社から受け取った欠損金で損金算入した
当初被配賦欠損金控除額1,072をプラスします。
5,700+1,072(1号)=6,772

5欄、4欄のうち損金算入特定欠損金額 2,200
6欄、4欄のうち非損金算入特定欠損金額 3,500
欠損金の翌期繰越額の計算上、損金算入した金額です。

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