欠損金の通算の損金算入限度額


今回は欠損金の通算の損金算入限度額を確認します。
欠損金額が特定欠損金額と非特定欠損金額の2つあるため、
欠損金の損金算入限度額も、
特定損金算入限度額と非特定損金算入限度額の2つあります。

計算イメージ

欠損金の通算の計算イメージです。
今回は、下記1-2、2-2を確認します。

1、特定欠損金の損金算入額
 1、特定欠損金<前回確認>
 2、特定損金算入限度額<今回確認するもの>
 3、1と2を比較して少ない金額が特定欠損金の損金算入額

2、非特定欠損金の損金算入額
 1、非特定欠損金<前回確認>
 2、非特定損金算入限度額<今回確認するもの>
 3、1と2を比較して少ない金額が非特定欠損金の損金算入額

3,欠損金の損金算入
 1+2=損金算入額

損金算入限度額の概要

欠損金の繰越しの規定は、本文で損金算入額、ただし書きで損金算入限度超過額を定めています。グループ通算制度の欠損金の通算については、欠損金の繰越しの規定を修正して適用します。

比較すると下記のとおりです。

欠損金の繰越し
(法人税法57条)
欠損金の通算
(法人税法64条の7第1項)
欠損金の損金算入(本文)欠損金の損金算入(2号)
イ、特定欠損金
ロ、非特定欠損金(配賦前)
ハ、被配賦欠損金額
ニ、配賦欠損金額
損金算入限度超過額(ただし書き)損金算入限度超過額(3号)
イ、特定損金算入限度額
ロ、非特定損金算入限度額
単体納税と通算制度の比較

参考規定

三 前号の規定により通算法人の十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額のうち第五十七条第一項ただし書に規定する超える部分の金額は、次に掲げる金額の合計額とする。

法人税法64条の7第1項3号、限度超過額

超える部分の金額(損金算入限度超過額)は、次の合計額(イ+ロ)とします。
イ=特定損金算入限度額を超える部分の金額
ロ=非特定損金算入限度額を超える部分の金額

特定欠損金の損金算入限度額(1項3号イ)

以下、算式を用いて確認します。

イ、特定損金算入限度額を超える部分の金額
特定欠損金額が、特定損金算入限度額を超える場合における
その超える部分の金額

特定損金算入限度額
特定欠損金額のうち10年内事業年度の
欠損控除前所得金額に達するまでの金額<少ない金額A>×特定損金算入割合

            (1)=C
特定損金算入割合= ———————-
          (2)+(3)=B

Bが0の場合は0とし、割合が1を超える場合は1とします。

分子
(1)グループ全体の損金算入限度額(所得×50%の合計)

分母
(2)個社の特定欠損金額のうち欠損控除前所得金額に達するまでの金額
(3)他社の特定欠損金額のうち欠損控除前所得金額に達するまでの金額
=グループ全体の特定欠損金(欠損控除前所得金額が限度)の合計額

             C(グループ全体の損金算入限度額)
A(個社の特定欠損金)× ——————————————–
             Aの合計=B(全体の特定欠損金)

あくまでも、Aが損金算入の最高額となります。

例えば、個社の特定欠損金(A)が100、
グループの特定欠損金合計(B)が1000、
グループ全体の損金算入限度額(C)が500の場合

1、特定損金算入割合
 500÷1,000=50%
2、特定損金算入限度額
 100×50%=50
となります。

個社が持っている特定欠損金100が欠損金として損金算入できる最高額です。
B(全体)の1,000で割ると10%相当になります。

グループ全体の損金算入限度額500に
10%をかけるという意味ではなく、個社の特定欠損金100に対して、
特定欠損金として損金算入できる割合(特定損金算入割合)を
かける必要があります。

グループ全体の損金算入限度額は500。
グループ全体の特定欠損金が1,000。
特定欠損金として損金算入できる割合は、500÷1,000=50%という意味です。

非特定欠損金の損金算入限度額(1項3号ロ)

ロ、非特定損金算入限度額を超える部分の金額
配賦後の非特定欠損金額が、
非特定損金算入限度額を超える場合におけるその超える部分の金額

非特定損金算入限度額
非特定損金算入限度額=配賦後の非特定欠損金額<A>×非特定損金算入割合

           (1)=C
非特定損金算入割合= ————–
           (2)=B

分母の(2)が0の場合は0とし、割合が1を超える場合は1とします。

(1)全体の損金算入限度額の合計額の残額
(2)10年内事業年度の非特定欠損金額(配賦前)の合計額

非特定欠損金の計算についても、特定欠損金の計算と同じ考え方です。

              C(グループ全体の損金算入限度額)
A(個社の非特定欠損金)× ——————————————–
              Aの合計=B(全体の非特定欠損金)

あくまでも、Aが損金算入の最高額となります。

例えば、個社の非特定欠損金(A)が200、
グループの非特定欠損金合計(B)が1000、
グループ全体の損金算入限度額(C)が600の場合

1、非特定損金算入割合
 600÷1,000=60%
 (非特定欠損金は1,000ありますが、限度額600までしか損金算入できない。)
2、非特定損金算入限度額
 200×60%=120
 (個社の非特定欠損金は200なので、60%の損金算入が可能となります。)
となります。

2023/06/28_更新

参考規定

通算法人の損金算入限度超過額

三 前号の規定により通算法人の十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額のうち第五十七条第一項ただし書に規定する超える部分の金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
イ 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた特定欠損金額が、当該特定欠損金額のうち当該十年内事業年度に係る欠損控除前所得金額(第五十七条第一項本文の規定を適用せず、かつ、第五十九条第三項及び第四項(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)並びに第六十二条の五第五項(現物分配による資産の譲渡)の規定を適用しないものとして計算した場合における適用事業年度の所得の金額から前号ハ(2)(i)に掲げる金額を控除した金額をいう。(2)において同じ。)に達するまでの金額に、(1)に掲げる金額が(2)及び(3)に掲げる金額の合計額のうちに占める割合(当該合計額が零である場合には零とし、当該割合が一を超える場合には一とする。)を乗じて計算した金額(以下この条において「特定損金算入限度額」という。)を超える場合におけるその超える部分の金額
(1) 当該通算法人の適用事業年度の損金算入限度額及び当該適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額の合計額から前号ハ(2)(i)及び(3)(i)に掲げる金額の合計額を控除した金額
(2) 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた特定欠損金額のうち当該十年内事業年度に係る欠損控除前所得金額に達するまでの金額
(3) 当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある当該他の通算法人の事業年度(当該十年内事業年度終了の日の翌日が開始日である場合には、当該終了の日後に開始した事業年度を含む。)において生じた特定欠損金額のうち当該十年内事業年度に係る他の欠損控除前所得金額(第五十七条第一項本文の規定を適用せず、かつ、第五十九条第三項及び第四項並びに第六十二条の五第五項の規定を適用しないものとして計算した場合における適用事業年度終了の日に終了する当該他の通算法人の事業年度の所得の金額から前号ハ(3)(i)に掲げる金額を控除した金額をいう。第四項及び第九項第四号において同じ。)に達するまでの金額の合計額
ロ 前号の規定により当該通算法人の当該十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額(同号イに掲げる金額を除く。ロにおいて「非特定欠損金額」という。)が、当該非特定欠損金額に(1)に掲げる金額が(2)に掲げる金額のうちに占める割合((2)に掲げる金額が零である場合には零とし、当該割合が一を超える場合には一とする。次号ロ及び第五項において「非特定損金算入割合」という。)を乗じて計算した金額(第五項及び第九項第七号において「非特定損金算入限度額」という。)を超える場合におけるその超える部分の金額
(1) 当該通算法人の適用事業年度の損金算入限度額及び当該適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額の合計額から前号ハ(2)(i)及び(ii)並びに(3)(i)及び(ii)に掲げる金額の合計額を控除した金額
(2) 当該十年内事業年度に係る前号ハ(1)に掲げる金額

法人税法64条の7第1項3号
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