欠損金の通算の遮断措置


今回は、グループ通算制度の欠損金の遮断措置を確認します。

遮断措置の趣旨

自社の欠損金額を再計算すると、連動して他社の欠損金額も変わります。
他社の欠損金額が変わると他社の再計算が始まります。
欠損金の通算の遮断措置は、
他社の再計算を止める(再計算を遮断する)ための規定です。

遮断措置の方法

当初申告の金額と再計算した金額が異なっていたとしても、
当初申告の金額を再計算の金額として扱います。再計算しないという意味です。

規定の読み方(前半)

下記規定(法人税法64条の7第4項)を確認します。

 第一項の場合において、通算法人の適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度(以下この条において「他の事業年度」という。)の損金算入限度額が当初申告損金算入限度額(当該他の事業年度の第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書に添付された書類に当該他の事業年度の損金算入限度額として記載された金額をいう。以下この項において同じ。)と異なるときは当初申告損金算入限度額を損金算入限度額とみなし、当該他の事業年度開始の日前十年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額若しくは特定欠損金額、当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち第五十七条第一項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額が当初申告欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額、当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額又は他の当初申告欠損控除前所得金額(それぞれ当該申告書に添付された書類に当該各事業年度において生じた欠損金額若しくは特定欠損金額、当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち同項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額として記載された金額をいう。以下この項において同じ。)と異なるときは当初申告欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額、当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額又は他の当初申告欠損控除前所得金額を当該各事業年度において生じた欠損金額若しくは特定欠損金額、当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち同条第一項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額とみなす。

法人税法64条の7、4項

簡単に置き換えると
第1項(欠損金の通算)の場合において、
AがBと異なるときは、BをAとみなし、
CがDと異なるときは、DをCとみなす。
と規定されています。

左が要件、右が取扱いです。

要件取扱い
A、通算法人の適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度(以下この条において「他の事業年度」という。)の損金算入限度額が
B、当初申告損金算入限度額(当該他の事業年度の第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書に添付された書類に当該他の事業年度の損金算入限度額として記載された金額をいう。以下この項において同じ。)と異なるときは
当初申告損金算入限度額<B>を
損金算入限度額<A>とみなし
要件と取扱い

欠損金の通算の
他法人の再計算した損金算入限度額1,500<A>が
他法人の当初申告の損金算入限度額1,000<B>と異なるときは、

他法人の当初申告の損金算入限度額1,000<B>を
損金算入限度額<A>とみなします。

当初申告<B>再計算<A>取扱い
他法人当初申告損金算入限度額<B>
1,000
他法人当初申告損金算入限度額<A>
1,500
AとBが異なるため、当初金額1,000<B>を再計算した<A>とみなす。
当初申告、再計算、取扱い

他法人の再計算した金額が1,500であっても、
他法人の当初申告した金額1,000と扱って、再計算を止めます。

規定の読み方(後半)

左が要件、右が取扱いです。

要件取扱い
C、当該他の事業年度開始の日前十年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額若しくは特定欠損金額、当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち第五十七条第一項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額が
D、当初申告欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額、当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額又は他の当初申告欠損控除前所得金額(それぞれ当該申告書に添付された書類に当該各事業年度において生じた欠損金額若しくは特定欠損金額、当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち同項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額として記載された金額をいう。以下この項において同じ。)と異なるときは
当初申告欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額、当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額又は他の当初申告欠損控除前所得金額<D>を

当該各事業年度において生じた欠損金額若しくは特定欠損金額、当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち同条第一項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額<C>とみなす。
CDEFの取扱い

要件

<C>
欠損金額若しくは特定欠損金額、
この欠損金額若しくは特定欠損金額のうち損金算入額
又は
欠損控除前所得金額

<D>
当初欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額、
当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額
又は
当初申告欠損控除前所得金額
と異なるときは


取扱い

<D>
当初申告欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額、
当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額
又は
当初申告欠損控除前所得金額

<C>
欠損金額若しくは特定欠損金額、
当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち損金算入額
又は欠損控除前所得金額
とみなす。


まとめると、
再計算した金額<C>が当初申告の金額<D>と異なるときは、
当初申告の金額<D>を再計算した金額<C>とみなします。

再計算<C>当初申告<D>みなし規定
欠損金額若しくは
特定欠損金額が
当初欠損金額若しくは
当初申告特定欠損金額と異なるときは
当初欠損金額若しくは当初申告特定欠損金額<D>を再計算した金額<C>とみなす。
この欠損金額若しくは特定欠損金額のうち損金算入額が当初申告損金算入額若しくは
当初申告特定損金算入額と異なるときは
当初申告損金算入額若しくは当初申告特定損金算入額<D>を再計算した金額<C>とみなす。
欠損控除前所得金額が当初申告欠損控除前所得金額
と異なるときは
当初申告欠損控除前所得金額<D>を再計算した金額<C>とみなす。
当初申告、再計算、取扱い

再計算した金額が1,500であっても、
当初申告した金額1,000と扱って、再計算を止めます。

まとめ

全体再計算を止めるため、
1回目に計算した金額と再計算した金額が異なるときは、
1回目に計算した金額を再計算した金額として取扱います。
1回目に計算した金額を固定することになります。

規定の前半部分

再計算した金額1回目に計算した金額1回目の金額に固定
損金算入限度額当初申告損金算入限度額当初申告損金算入限度額
まとめ

前半部分は、限度額を固定しています。

規定の後半部分

再計算した金額1回目に計算した金額1回目の金額に固定
当該他の事業年度開始の日前十年以内に開始した各事業年度において生じた
欠損金額若しくは特定欠損金額
当初申告欠損金額若しくは
当初申告特定欠損金額、
当初申告欠損金額若しくは
当初申告特定欠損金額、
当該欠損金額若しくは特定欠損金額のうち第五十七条第一項の規定により当該他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額又は当初申告損金算入額若しくは
当初申告特定損金算入額又は
当初申告損金算入額若しくは
当初申告特定損金算入額又は
当該各事業年度に係る他の欠損控除前所得金額他の当初申告欠損控除前所得金額他の当初申告欠損控除前所得金額
まとめ

後半部分は、欠損金額や所得金額を固定しています。

規定が読みづらい理由

規定の構造を整理します。

第1項(欠損金の通算)の場合において、 → 大前提
 ・AがBと異なるときは、BをAとみなし、 → 小前提と取扱い
 ・CがDと異なるときは、DをCとみなす。 → 小前提と取扱い

「AがBと異なるときは、BをAとみなし、」が今回の前半部分、
「CがDと異なるときは、DをCとみなす。」が今回の後半部分です。

再計算した金額が1回目に計算した金額と異なるときは、
1回目に計算した金額を再計算した金額として取扱います。

2023/06/28_更新

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