今回は、残価保証額の消費税の取扱いを確認してみましょう。
残価保証額
残価保証額の消費税の取扱いを確認しますが、消費税の法令には残価保証額が規定されていませんので、法人税の法令を確認してみましょう。
残価保証額の定義
六 残価保証額 リース期間終了の時にリース資産の処分価額が所有権移転外リース取引に係る契約において定められている保証額に満たない場合にその満たない部分の金額を当該所有権移転外リース取引に係る賃借人がその賃貸人に支払うこととされている場合における当該保証額をいう。
法人税法施行令第48条の2第5項第6号、令和7年4月1日施行
リース終了時のリース資産の売却金額が契約の保証額に満たない場合に、満たない部分について借り手が貸し手に支払う金額を「残価保証額」といいます。
例えば、次の場合
・売却金額 80万円
・残価保証額 100万円
売却金額(80万円)-残価保証額(100万円)=▲20万円となりますので、借り手が貸し手に20万円を支払う必要があります。
消費税の取扱い
基本通達が公表されていますので確認してみましょう。
(残価保証額に係る資産の譲渡等の時期)
消費税法基本通達9-1-31
9-1-31 リース期間の終了に伴い賃貸人が賃借人からそのリース取引(所法第67条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》又は法法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》の規定により売買があったものとされるリース取引をいう。以下9-1-31、11-3-2及び11-3-2の2において同じ。)の目的物であった資産の返還を受けた場合における当該資産の返還は、資産の譲渡等に該当しない。
この場合において、当該資産に係るリース契約の残価保証額の定めに基づき賃貸人が賃借人から収受する金銭は、その収受すべき金額が確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に加算するものとする。(令7課消2-9により追加)
(注) 残価保証額とは、リース期間終了の時にリース資産(所法第67条の2第1項又は法法第64条の2第1項に規定するリース資産をいう。以下11-3-2の2において同じ。)の処分価額がリース取引に係る契約において定められている保証額に満たない場合にその満たない部分の金額を当該リース取引に係る賃借人がその賃貸人に支払うこととされている場合における当該保証額をいう。
カッコ書きを外して確認してみましょう。
リース期間の終了に伴い賃貸人が賃借人からそのリース取引の目的物であった資産の返還を受けた場合における当該資産の返還は、資産の譲渡等に該当しない。
貸し手が借り手からリース資産を受け取った場合のリース資産の返還は、資産の売却などには該当しません。
借り手が借りた物を貸し手に返しているだけだからです。
続きを確認してみましょう。
この場合において、当該資産に係るリース契約の残価保証額の定めに基づき賃貸人が賃借人から収受する金銭は、その収受すべき金額が確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に加算するものとする。
貸し手(売上側)が借り手(仕入側)から受け取る現金などは、金額が確定したタイミングで消費税の売上にプラスします。
上記の例だと、貸し手は借り手から残価保証額に満たない部分の金額(100万円-80万円=20万円)を受け取りますので、20万円を消費税の売上としてプラスする必要があります。
借り手の取扱い
借り手の取扱いはどうなるでしょうか?
貸し手の取扱いと同様であれば、借り手(仕入側)が貸し手(売上側)に支払った現金などは、金額が確定したタイミングで消費税の仕入にプラスします。
上記の例だと、借り手は貸し手に残価保証額に満たない部分の金額(100万円-80万円=20万円)を支払いますので、20万円を消費税の仕入としてプラスする必要があります。
法人税法との関係
令和9年4月1日以後については、残価保証額をマイナスしないで減価償却費を計算します。
経過措置により、令和9年3月31日以前に契約したリース資産については、残価保証額も減価償却することが可能です。
上記2つは、減価償却の取扱いであって、取得価額の取扱いではありません。
法人税法のリース資産の取得価額の規定を確認してみましょう。
六 リース資産 リース期間定額法(当該リース資産の取得価額(当該リース資産についての所有権移転外リース取引に係る契約が令和九年三月三十一日以前に締結されたものの取得価額に残価保証額に相当する金額が含まれている場合には、当該取得価額から当該残価保証額を控除した金額)を
以下省略
令和9年3月31日以前、残価保証額をマイナスする。
令和9年4月1日以後、残価保証額をマイナスしない。
上記の取扱いが、消費税にも影響するのでしょうか?
消費税の質疑応答事例を確認してみましょう。
消費税の質疑応答事例
国税庁、質疑応答事例、消費税、所有権移転外ファイナンス・リース取引における残価保証等の場合の取扱い
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/38.htm
回答要旨の中で、
その満たない部分の金額をそのリース取引に係る賃借人がその賃貸人に支払うこととされている場合における保証額(以下「残価保証額」といいます。)は、リース取引開始時において消費税の課税対象とはなりません。
とありますので、残価保証額は消費税の計算に影響させないことになります。
この質疑応答事例は、「令和6年10月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。」とありますので、取扱いが変わる可能性があります。
気になる点は、消費税法基本通達の(残価保証額に係る資産の譲渡等の時期)
9-1-31が新しく公表されているところで、内容は削除された消費税法基本通達9-3-6の4(リース期間の終了に伴い返還を受けた資産)と同じです。
新しい基本通達9-1-31に、
当該資産に係るリース契約の残価保証額の定めに基づき賃貸人が賃借人から収受する金銭は、その収受すべき金額が確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に加算する
とありますので、残価保証額の取扱いは、法人税と消費税で分かれる可能性があります。
まとめると
・法人税の計算では、リース開始時に残価保証額をマイナスしない。
・消費税の計算では、リース開始時に残価保証額をマイナスする。
→ 法人税の計算に合わせるため、マイナスするに変わる可能性がある。
・消費税の計算では、リース終了時に残価保証額の差額を消費税にプラスする。
参考通達
削除された消費税法基本通達9-3-6の4
(リース期間の終了に伴い返還を受けた資産)
9-3-6の4 リース期間の終了に伴い賃貸人が賃借人からそのリース取引(所法第67条の2第1項《売買とされるリ-ス取引》又は法法第64条の2第1項《売買とされるリース取引》の規定により売買があったものとされるリース取引をいう。以下9-3-6の4及び11-3-2において同じ。)の目的物であった資産の返還を受けた場合における当該資産の返還は、資産の譲渡等に該当しない。
なお、この場合において、当該資産に係るリース契約の残価保証額の定めに基づき賃貸人が賃借人から収受する金銭は、その収受すべき金額が確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の対価の額に加算するものとする。(平20課消1-8、平30課消2-5により追加)
(注) 残価保証額とは、リース期間終了の時にリース資産(所法第67 条の2第1項《売買とされるリース取引》又は法法第64条の2第1項《売買とされるリース取引》に規定するリース資産をいう。)の処分価額がリース取引に係る契約において定められている保証額に満たない場合にその満たない部分の金額を当該リース取引に係る賃借人がその賃貸人に支払うこととされている場合における当該保証額をいう。
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