法人税の事業年度の特例


今回は、法人税の事業年度の特例を確認します。
グループ通算制度に関する規定は別途確認します。

事業年度の特例(法法14①)

法人に一定の事実が生じた場合には、事業年度の取扱いに関係なく、一定の事実が生じた日に事業年度が終了します。この終了した日の翌日から事業年度が開始します。

外国法人の取扱いを除いてまとめています。

一定の事実終了日
一 内国法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をしたことその解散の日
二 法人が事業年度の中途において合併により解散したことその合併の日の前日
三 内国法人である公益法人等又は人格のない社団等が事業年度の中途において新たに収益事業を開始したこと(人格のない社団等にあつては、前条第四項に規定する場合に該当する場合を除く。)その開始した日の前日
四 公益法人等が事業年度の中途において普通法人若しくは協同組合等に該当することとなつたこと又は普通法人若しくは協同組合等が事業年度の中途において公益法人等に該当することとなつたことその事実が生じた日の前日
五 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定したことその残余財産の確定の日
六 清算中の内国法人が事業年度の中途において継続したことその継続の日の前日
事業年度の特例

事業年度の特例で、「第2号又は第5号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする。」とあります。2号は合併解散、5号は残余財産の確定です。終了日の翌日から開始したとしても終了しないため、2号と5号は除かれています。

解散(1号、2号)について

事業年度の中途に解散した場合は、解散の日に事業年度が終了します。ただし、合併により解散した場合は、合併の日の前日に事業年度が終了します。

9/30に解散した場合は、9/30に事業年度が終了します。
9/30に合併により解散した場合は、9/29に事業年度が終了します。

参考規定、解散の事由

(解散の事由)
第四百七十一条 株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判

会社法
公益法人等(3号、4号)について

公益法人等については法人税の課税範囲が異なりますので、解散以外にも事業年度の特例が設けられています。3号では、事業年度の中途において新たに収益事業を開始した場合、その開始日の前日に事業年度が終了します。

4号では、公益法人等が事業年度の中途において普通法人等に該当した場合や、普通法人等が事業年度の中途において公益法人等に該当した場合は、その該当した日の前日に事業年度が終了します。

3号の開始日、4号の該当日が10/1の場合、9/30に事業年度が終了します。

清算(5号、6号)について

会社が解散すると、会社が所有する固定資産を売却したり、債権債務を整理したりします。残余財産が確定した場合は、その確定日に事業年度が終了します。一度解散をした後に、解散を止めて株式会社を継続することも可能です。この場合は継続日の前日に事業年度が終了します。

参考規定、清算の開始原因

(清算の開始原因)
第四百七十五条 株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

(清算株式会社の能力)
第四百七十六条 前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

会社法

1号かっこ書きにある「会社法471条4号」は合併による解散した場合です。

参考規定、株式会社の継続

(株式会社の継続)
第四百七十三条 株式会社は、第四百七十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合(前条第一項の規定により解散したものとみなされた場合を含む。)には、次章の規定による清算が結了するまで(同項の規定により解散したものとみなされた場合にあっては、解散したものとみなされた後三年以内に限る。)、株主総会の決議によって、株式会社を継続することができる。

会社法
休眠会社のみなし解散(会社法472)

株式会社であって、その株式会社の登記が最後にあった日から12年を経過したものを「休眠会社」といいます。休眠会社は、法務大臣が一定の公告をした場合に、事業を廃止していない旨の届出をしないときは、2月経過後に解散したものとみなされます。

解散とみなされた場合は、事業年度が変わります。

(休眠会社のみなし解散)
第四百七十二条 休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し二箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その二箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。

2 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠会社に対し、その旨の通知を発しなければならない。

会社法
消費税法との関係

消費税の計算期間は「課税期間」といいます。
原則として、課税期間は法人の「事業年度」と同じです。

消費税の事業年度は、法人税法13条(今回確認した規定)と14条(事業年度の特例)に規定する事業年度となります。

そのため、法人税の事業年度の特例により事業年度が変更されたときは、消費税の課税期間も一緒に変更されることになります。

事業年度を変更した場合の届出(法法15)

会計期間を変更した場合や会計期間を定めた場合は、
・変更前の会計期間、変更後の会計期間
・定めた会計期間
を税務署長に届け出る必要があります。

国税庁[手続名]異動事項に関する届出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_5.htm

通常、会計期間を変更すると事業年度も課税期間も一緒に変更されますので、異動届出書は法人税・消費税の兼用で提出できるようになっています。

参考規定、事業年度を変更した場合等の届出

(事業年度を変更した場合等の届出)
第十五条 法人がその定款等に定める会計期間を変更し、又はその定款等において新たに会計期間を定めた場合には、遅滞なく、その変更前の会計期間及び変更後の会計期間又はその定めた会計期間を納税地の所轄税務署長に届け出なければならない。

法人税法
参考規定

事業年度の特例

(事業年度の特例)
第十四条 次の各号に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた法人の事業年度は、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める日に終了し、これに続く事業年度は、第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする。
一 内国法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をしたこと その解散の日
二 法人が事業年度の中途において合併により解散したこと その合併の日の前日
三 内国法人である公益法人等又は人格のない社団等が事業年度の中途において新たに収益事業を開始したこと(人格のない社団等にあつては、前条第四項に規定する場合に該当する場合を除く。) その開始した日の前日
四 公益法人等が事業年度の中途において普通法人若しくは協同組合等に該当することとなつたこと又は普通法人若しくは協同組合等が事業年度の中途において公益法人等に該当することとなつたこと その事実が生じた日の前日
五 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定したこと その残余財産の確定の日
六 清算中の内国法人が事業年度の中途において継続したこと その継続の日の前日
七 恒久的施設を有しない外国法人が事業年度の中途において恒久的施設を有することとなつたこと その有することとなつた日の前日
八 恒久的施設を有する外国法人が事業年度の中途において恒久的施設を有しないこととなつたこと その有しないこととなつた日
九 恒久的施設を有しない外国法人が、事業年度の中途において、国内において新たに第百三十八条第一項第四号(国内源泉所得)に規定する事業を開始し、又は当該事業を廃止したこと 当該事業の開始の日の前日又は当該事業の廃止の日

法人税法

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