今回は、グループ通算制度に関する事業年度の特例のうち
月次決算期間・会計期間の特例等を確認します。
目次
月次決算期間・会計期間の特例(法人税法14条8項)
規定が長いため、カッコ書きを除いて、要約しています。
内容 | 規定 | 要約 |
---|---|---|
要件1 | 内国法人が、通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなり、又は親法人の申請特例年度の期間内に当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係を有することとなつた場合において、 | 通算親法人(見込みを含む)が100%支配した場合において、 |
期限 | 当該内国法人のこの項の規定の適用がないものとした場合に加入日の前日の属する事業年度に係る第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書の提出期限となる日までに、 | この特例を使わなかったときの確定申告期限までに、 |
要件2 | 当該通算親法人又は親法人がこの項の規定の適用を受ける旨、同号イ又はロに掲げる期間その他財務省令で定める事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出したときは、 | 通算親法人(見込みを含む)が一定の書類を提出したときは、 |
効果 | 第4項、第5項及び前二項(第6項、第7項)の規定の適用については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるところによる。 | 第4項1号、第5項2号、第6項、第7項については特例を適用します。 |
効果の4項~7項について
4項、法人税の事業年度の特例_グループ通算制度_通算子法人の特例等
5項、法人税の事業年度の特例_グループ通算制度_親法人の申請特例年度に関する子法人の事業年度の特例
6項、7項、法人税の事業年度の特例_グループ通算制度_親法人の申請特例年度について通算承認を受けなかった場合等
月次決算期間・会計期間の特例を使用する場合は、
4項~7項の規定については、次の区分に応じて変わります。
次の区分 | 次の定め | 要約 |
---|---|---|
1号、当該加入日から当該加入日の前日の属する特例決算期間(次に掲げる期間のうち当該書類に記載された期間をいう。以下この号において同じ。)の末日まで継続して当該内国法人と当該通算親法人等との間に当該通算親法人等による完全支配関係がある場合 | 当該内国法人及び当該内国法人が発行済株式又は出資を直接又は間接に保有する他の内国法人(当該加入日から当該末日までの間に当該通算親法人等との間に完全支配関係を有することとなつたものに限る。次号において「他の内国法人」という。)については、当該加入日の前日の属する特例決算期間の末日の翌日をもつて第四項第一号又は第五項第二号に定める日とする。この場合において、当該翌日が申請特例年度終了の日後であるときは、当該末日を申請特例年度終了の日とみなして、第六項の規定を適用する。 イ 当該内国法人の月次決算期間(会計期間をその開始の日以後一月ごとに区分した各期間(最後に一月未満の期間を生じたときは、その一月未満の期間)をいう。) ロ 当該内国法人の会計期間 | 加入日~特例決算期間の末日まで100%支配関係がある場合、内国法人グループについては、その特例決算期間の末日の翌日をもって第4項1号又は第5項2号に定める日とします。 この場合に、その翌日が申請特例年度終了の日「後」であるときは、その末日を申請特例年度終了の日と「みなして」、第6項を適用する。 イ、その内国法人の月次決算期間 ロ、その内国法人の会計期間 |
二 前号に掲げる場合以外の場合 | 当該内国法人及び他の内国法人については、第四項(第一号に係る部分に限る。)及び第五項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。 | 1号以外の場合、内国法人グループについては、第4項1号、第5項2号は適用しません。 |
注1、加入日とは、100%支配関係が生じた日です。
注2、特例決算期間
次の期間のうち一定の書類に記載された期間をいいます。
A、月次決算期間(会計期間開始以後1月ごとに区切った期間)
B、会計期間
100%支配が継続している場合(1号)
3月決算法人が6/25に通算グループに加入した場合、
4/1~4/30、5/1~5/31、6/1~6/30、以後1月ごとに区切った期間が
月次決算期間となります。会計期間は4/1~3/31となります。
いずれかの期間を書類に記載して特例決算期間を選択します。その期間末日まで継続して100%支配関係がある場合、その内国法人グループについては、その加入日(6/25)の前日(6/24)の属する特例決算期間(6/1~6/30)の末日(6/30)の翌日(7/1)をもって、第4項1号又は第5項2号に定める日となります。
6/25ではなく7/1を基準に事業年度が変わります。
会計期間を選択した場合、その内国法人グループについては、その加入日(6/25)の前日(6/24)の属する特例決算期間(4/1~3/31)の末日(翌年3/31)の翌日(翌年4/1)をもって、第4項1号又は第5項2号に定める日となります。
6/25ではなく翌年4/1を基準に事業年度が変わります。
第4項1号に定める日
1、100%支配関係が発生した場合
法人が通算親法人に100%支配されたときは、その法人の事業年度はその支配日の前日に終了し、その支配日から事業年度がスタートします。
第5項2号に定める日
2、親法人の申請特例年度の途中に100%支配関係が発生した場合
親法人の申請特例年度の期間内にその親法人との間にその親法人による100%支配関係が発生した法人については、その発生した日の前日に事業年度が終了し、その発生した日から事業年度がスタートします。
原則として加入日を基準に事業年度が変わりますが、月次決算以外の日に事業年度が変わると決算・申告が煩雑になるため、月次(年次)決算末日の翌日を基準に事業年度を変更することが可能です。
100%支配が継続していない場合(2号)
2号は「前号に掲げる場合以外の場合」とあります。加入日~特例決算期間の末日まで継続して100%支配関係がない場合です。この場合は、内国法人グループについては、第4項1号、第5項2号の規定は適用されません。
通算親法人に100%支配された場合(4項1号)、親法人に100%支配された場合(5項2号)を適用できないということは、支配日を基準に事業年度が修正されないということです。事業年度は打ち切られずに継続します。
特例決算末日の翌日が申請特例年度終了の日より後になる場合(後段)
「この場合において、当該翌日<特例決算期間の末日の翌日>が申請特例年度終了の日後であるときは、当該末日<特例決算期間の末日>を申請特例年度終了の日とみなして、第六項の規定を適用する。」とあります。
月次決算期間・会計期間の特例を使用すると、本来の加入日より後に加入したように取り扱われるので、親法人の申請特例年度終了の日より後になるケースが生じることがあります。
例えば、次の場合です。
1、子法人の加入日 6/15
2、親法人の申請特例年度終了の日 6/20
3、子法人の特例決算期間の末日 6/30
→ 申請特例年度終了の日と「みなして」第6項を適用します。
4、翌日 7/1 子法人の月次決算期間の特例を選択 6/30
第6項は、「親法人の申請特例年度について通算承認を受けなかった場合と
開始(加入)時価評価法人の取扱い(法法14⑥)」です。これらの場合は原則として、申請特例年度終了の日(6/20)に事業年度が終了します。
事業年度が6/20で終わると月次決算期間・会計期間の特例の意味がなくなるため、6/30(月次決算日)を申請特例年度終了の日とみなして、6/30の決算ができるように規定しています。
通算承認を受けなかった場合と開始(加入)時価評価法人に該当する場合なので、親法人と事業年度を合わせる必要がないのでしょう。
参考規定
5 次の各号に掲げる内国法人の事業年度は、当該各号に定める日の前日に終了し、これに続く事業年度は、当該各号に定める日から開始するものとする。
法人税法14条、事業年度の特例
一 親法人(第六十四条の九第一項に規定する親法人をいう。以下この条において同じ。)の申請特例年度(第六十四条の九第九項に規定する申請特例年度をいう。以下この条において同じ。)開始の時に当該親法人との間に完全支配関係がある内国法人 その申請特例年度開始の日
二 親法人の申請特例年度の期間内に当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係を有することとなつた内国法人 その有することとなつた日
6 前項の場合において、同項各号に掲げる内国法人が第六十四条の九第一項の規定による承認を受けなかつたとき、又は前項各号に掲げる内国法人が同条第十項第一号若しくは第十二項第一号に掲げる法人に該当するときは、これらの内国法人の前項各号に定める日から開始する事業年度は、申請特例年度終了の日(同日前にこれらの内国法人の合併による解散又は残余財産の確定により当該各号の親法人との間に完全支配関係を有しなくなつた場合(以下この項において「合併による解散等の場合」という。)には、その有しなくなつた日の前日。次項において「終了等の日」という。)に終了し、これに続く事業年度は、合併による解散等の場合を除き、当該申請特例年度終了の日の翌日から開始するものとする。
法人税法14条、事業年度の特例
まとめ
月次決算期間・会計期間の特例をまとめます。
- 100%支配関係がある。
- 確定申告期限までに、一定の書類を提出する。
- 4項1号、5項2号、6項、7項については修正して適用する。
1号、100%支配関係が継続している場合。
4項1号と5項2号を修正して適用します。6項と7項は適用できます。
特例により親法人の決算日の後に子法人の決算日が到来する場合は、
子法人の決算日を優先して、6項を適用します。
2号、100%支配関係が継続していない場合。
4項1号と5項2号は適用できません。6項と7項は適用できます。
参考規定など
参考、国税庁、[手続名]完全支配関係を有することとなった旨を記載した書類及びグループ通算制度への加入時期の特例を適用する旨を記載した書類の提出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/renketsu/annai/11.htm
月次決算期間・会計期間の特例
8 内国法人が、通算親法人との間に当該通算親法人による完全支配関係を有することとなり、又は親法人の申請特例年度の期間内に当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係を有することとなつた場合において、当該内国法人のこの項の規定の適用がないものとした場合に加入日(これらの完全支配関係を有することとなつた日をいう。第一号において同じ。)の前日の属する事業年度に係る第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書の提出期限となる日までに、当該通算親法人又は親法人(第一号において「通算親法人等」という。)がこの項の規定の適用を受ける旨、同号イ又はロに掲げる期間その他財務省令で定める事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出したときは、第四項(第一号に係る部分に限る。)、第五項(第二号に係る部分に限る。)及び前二項の規定の適用については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるところによる。
法人税法14条、事業年度の特例
一 当該加入日から当該加入日の前日の属する特例決算期間(次に掲げる期間のうち当該書類に記載された期間をいう。以下この号において同じ。)の末日まで継続して当該内国法人と当該通算親法人等との間に当該通算親法人等による完全支配関係がある場合 当該内国法人及び当該内国法人が発行済株式又は出資を直接又は間接に保有する他の内国法人(当該加入日から当該末日までの間に当該通算親法人等との間に完全支配関係を有することとなつたものに限る。次号において「他の内国法人」という。)については、当該加入日の前日の属する特例決算期間の末日の翌日をもつて第四項第一号又は第五項第二号に定める日とする。この場合において、当該翌日が申請特例年度終了の日後であるときは、当該末日を申請特例年度終了の日とみなして、第六項の規定を適用する。
イ 当該内国法人の月次決算期間(会計期間をその開始の日以後一月ごとに区分した各期間(最後に一月未満の期間を生じたときは、その一月未満の期間)をいう。)
ロ 当該内国法人の会計期間
二 前号に掲げる場合以外の場合 当該内国法人及び他の内国法人については、第四項(第一号に係る部分に限る。)及び第五項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。