法人税の外国税額の控除


今回は、法人税の外国税額控除の概要を確認します。

外国税額控除の趣旨

外国税額控除の趣旨は、2重課税の排除です。

2重課税が発生する理由
日本に本店がある法人は稼いだ利益に対して日本の法人税が課されます。日本で稼いだ利益か外国で稼いだ利益かは問いません。また、外国で稼いだ利益については外国の法人税も課されます。

例えば、日本で稼いだ利益70、外国で稼いだ利益30、利益合計が100であれば、
100に対して日本の法人税が課されます。
仮に税率が20%であれば法人税が20発生します。

外国で稼いだ利益30については外国の法人税が課されます。
仮に税率が20%であれば法人税が6発生します。

外国で稼いだ利益30については、
日本の法人税20と外国の法人税6が2重にかかります。

日本の法人税20+外国の法人税6=法人税合計26

この2重課税を排除するために、「日本の法人税20」から「外国の法人税6」を控除する制度を「外国税額控除」といいます。外国税額控除を使用すると合計法人税26▲外国の法人税6=日本の法人税20となり、2重課税が排除できます。

外国税額控除の概要

日本法人が外国法人税を支払う場合には、一定の方法で計算した金額(控除限度額)を限度として、その外国法人税を当期の法人税から控除します。

上記の外国税額控除は2つ問題点があります。
1、当期の外国法人税<当期の法人税の場合
 控除する外国法人税が少ないため、控除できる枠(控除限度額)が残ります。
2、当期の外国法人税>当期の法人税の場合
 控除する外国法人税が多いため、控除できない外国法人税が残ります。

上記の余った控除限度額や、控除できない外国法人税については、
翌年以後3年間繰越しができます。

控除限度額の繰越し

控除限度額の繰越しとは、外国法人税が少なく、法人税から控除できなかった場合に、余った控除枠(繰越控除限度額)を3年間繰り越して、外国法人税を控除する制度です。

例えば、次のような場合です。
前期、外国法人税70<法人税100(控除枠が30余った)
当期、外国法人税200>法人税180(外国法人税が20引けなかった)

前期の控除枠の余り30のうち20を使って、当期の控除できない外国法人税20を当期の法人税から控除できます。使用しなかった控除枠の余り10は、翌年に繰越しします。

外国税額の繰越し

控除限度額の繰越しの逆の場合です。外国税額の繰越しとは、外国法人税が多く、法人税から控除しきれない場合に、控除できなかった外国法人税(繰越控除対象外国法人税額)を3年間繰り越して、外国法人税を控除する制度です。

例えば、次のような場合です。
前期、外国法人税100>法人税70(控除できない外国法人税が30発生した)
当期、外国法人税40<法人税60(控除枠が20余った)

当期の余った控除枠20を使って、前期の控除できない外国法人税20を当期の法人税から控除できます。使用しなかった控除できない外国法人税10は、翌年に繰越しします。

手続き

外国税額の控除については、
申告書等に明細書の添付と外国法人税の証明書の保存が必要です。

繰越しの控除については、
過去の申告書等に計算書類の添付、当期の申告書等に計算書類の添付、
外国法人税の証明書の保存が必要です。

参考規定

 内国法人が各事業年度において外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう。以下この項及び第十二項において同じ。)を納付することとなる場合には、当該事業年度の所得の金額につき第六十六条第一項から第三項まで(各事業年度の所得に対する法人税の税率)の規定を適用して計算した金額のうち当該事業年度の国外所得金額(国外源泉所得に係る所得のみについて各事業年度の所得に対する法人税を課するものとした場合に課税標準となるべき当該事業年度の所得の金額に相当するものとして政令で定める金額をいう。第十四項において同じ。)に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(以下この条において「控除限度額」という。)を限度として、その外国法人税の額(その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額、内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対して課される外国法人税の額、内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法人税の額その他政令で定める外国法人税の額を除く。以下この条において「控除対象外国法人税の額」という。)を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する。

法人税法69条1項

23 外国税額控除の手続き

 第一項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書(次項、第二十五項及び第二十九項において「申告書等」という。)に第一項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類並びに控除対象外国法人税の額の計算に関する明細その他の財務省令で定める事項を記載した書類(以下この項において「明細書」という。)添付があり、かつ、控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第一項の規定による控除をされるべき金額の計算の基礎となる控除対象外国法人税の額その他の財務省令で定める金額は、税務署長において特別の事情があると認める場合を除くほか、当該明細書に当該金額として記載された金額を限度とする。

法人税法69条23項(当時)

24 繰越しの外国税額控除の手続き

 第二項及び第三項の規定は、繰越控除限度額又は繰越控除対象外国法人税額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の申告書等に当該各事業年度の控除限度額及び当該各事業年度において納付することとなつた控除対象外国法人税の額を記載した書類の添付があり、かつ、これらの規定の適用を受けようとする事業年度の申告書等にこれらの規定による控除を受けるべき金額を記載した書類及び繰越控除限度額又は繰越控除対象外国法人税額の計算の基礎となるべき事項その他の財務省令で定める事項を記載した書類の添付があり、かつ、これらの規定による控除を受けるべき金額に係る控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、これらの規定による控除をされるべき金額の計算の基礎となる当該各事業年度の控除限度額及び当該各事業年度において納付することとなつた控除対象外国法人税の額その他の財務省令で定める金額は、税務署長において特別の事情があると認める場合を除くほか、当該各事業年度の申告書等にこの項前段の規定により添付された書類に当該計算の基礎となる金額として記載された金額を限度とする。

法人税法69条24項(当時)
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