今回は、法人税の経過リース資産の評価換え等があった場合を確認してみましょう。
評価替え等
法人税の計算では、原則として資産の評価換えによる帳簿価額の増減が認められていません。ただし、例外の要件を満たす場合は、帳簿価額の増減が可能です。
経過リース資産について、評価替えがあった場合はどうなるでしょうか?
経過措置を確認してみましょう。
5 第二項本文の規定の適用を受けている経過リース資産につき法人税法施行令第四十八条第五項第三号に規定する評価換え等が行われたことによりその帳簿価額が増額され、又は減額された場合には、当該評価換え等が行われた事業年度後の各事業年度(当該評価換え等が同項第四号に規定する期中評価換え等である場合には、当該期中評価換え等が行われた事業年度以後の各事業年度)における当該経過リース資産に係る第二項に規定する除して計算した金額は、当該経過リース資産の当該評価換え等の直後の帳簿価額を当該経過リース資産の同項に規定する改定リース期間のうち当該評価換え等が行われた事業年度終了の日後の期間(当該評価換え等が同条第五項第四号に規定する期中評価換え等である場合には、当該期中評価換え等が行われた事業年度開始の日(当該事業年度が当該経過リース資産を事業の用に供した日の属する事業年度である場合には、同日)以後の期間)の月数で除して計算した金額とする。
法人税法施行令附則(令和七年三月三一日政令第一二一号)抄第7条第5項
要件は、2つです。
1、経過リース資産の特例を受けている。
2、施行令第48条第5項第3号の評価換え等が行われている。
経過リース資産の計算は、選択できる制度ですので、
経過措置を選択している必要があります。
施行令第48条第5項第3号の評価換え等は、次の5つです。
1、資産の評価益による評価換え
2、資産の評価損による評価変え
3、民事再生等評価換え
4、非適格株式交換等時価評価
5、通算時価評価
取扱い
取扱いの部分については、カッコ書きを省略して確認してみましょう。
当該評価換え等が行われた事業年度後の各事業年度()における当該経過リース資産に係る第二項に規定する除して計算した金額は、当該経過リース資産の当該評価換え等の直後の帳簿価額を当該経過リース資産の同項に規定する改定リース期間のうち当該評価換え等が行われた事業年度終了の日後の期間()の月数で除して計算した金額とする。
「当該経過リース資産に係る第2項に規定する除して計算した金額」は、
経過リース期間定額法の分母の計算のことです。
償却限度額=
経過リース資産の改定取得価額÷改定リース期間の月数
×事業年度における当該改定リース期間の月数
(太文字部分)
分母の計算については、
評価換え等をした後の帳簿価額を
評価換え等をした事業年度が終了した後の期間の月数で
割った金額
となります。
計算例
例えば、次の場合で計算してみましょう。
・経過リース資産の取得価額 1200万円
・残価保証額 200万円
・過去の損金算入額 400万円
・リース期間 5年
残価保証額を考慮する場合の計算
・取得価額1200万円-残価保証額200万円=1000万円÷5年=200万円
・2年計算した場合、200万円×2年=400万円
取得価額(1200万円)-損金算入額(400万円)
=改定取得価額(800万円)となります。
改定リース期間は、
経過リース資産の適用を受ける
最初の事業年度が始まった日以後の期間をいいます。
上記の例だと、リース期間が5年で2年間計算が済んでいますので、
改定リース期間は3年となります。
実際に計算してみましょう。
経過リース資産の改定取得価額 800万円
÷改定リース期間の月数 36月
×事業年度における改定リース期間の月数 12月
=約266.7万円となります。
改定取得価額 800万円
・1年目の減価償却費 約266.7万円、簿価 約533.3万円
・2年目の減価償却費 約266.7万円
・3年目の減価償却費 約266.6万円
1年目の簿価が約533.3万円ですが、評価換えにより
帳簿価額が480万円に減少した場合を確認してみましょう。
評価換え等をした後の帳簿価額(480万円)を
評価換え等をした事業年度が終了した後の期間の月数(24月)で
割った金額(480万円÷24月=20万円)
となります。
上記の計算は、分母の計算ですので、
最後に事業年度の月数(12月)をかけます。
20万円×12月=240万円となります。
改定取得価額 800万円
・1年目の減価償却費 約266.7万円、簿価 約533.3万円→480万円
・2年目の減価償却費 240万円、簿価 240万円
・3年目の減価償却費 240万円、簿価 0円
帳簿価額が720万円に増加した場合を確認してみましょう。
評価換え等をした後の帳簿価額(720万円)を
評価換え等をした事業年度が終了した後の期間の月数(24月)で
割った金額(720万円÷24月=30万円)
となります。
上記の計算は、分母の計算ですので、
最後に事業年度の月数(12月)をかけます。
30万円×12月=360万円となります。
改定取得価額 800万円
・1年目の減価償却費 約266.7万円、簿価 約533.3万円→720万円
・2年目の減価償却費 360万円、簿価 360万円
・3年目の減価償却費 360万円、簿価 0円