法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置


今回は、「法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置」を確認します。

内容

特定税額控除規定の不適用の判定では、前期の金額と当期の金額を用います。通常、前期12月と当期12月でそのまま比較・判定することができます。以前確認した、期中に課税関係が変わるケース(全所得課税と収益事業課税など)は特殊なケースでしたが、もう1つ特殊なケースがあります。グループ通算制度の場合です。経過措置の規定が長いため、分割して確認します。

前事業年度から連結事業年度を除く。

先に規定を載せます。

(法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置)
第四十五条の三 新租税特別措置法施行令第二十七条の十三の規定の適用については、新租税特別措置法第四十二条の十三第五項に規定する法人(改正法附則第二十九条第一項の規定により新法人税法第六十四条の九第一項の規定による承認(以下この項及び第三項第一号において「通算承認」という。)があったものとみなされた新租税特別措置法第二条第二項第十号の六に規定する通算法人(以下この条において「経過通算法人」という。)除く。)の租税特別措置法施行令第二十七条の十三第六項第一号の対象年度開始の日(以下この項において「開始日」という。)前一年(当該対象年度が一年に満たない場合には、当該対象年度の期間。以下この項において同じ。)以内に終了した各事業年度に連結事業年度に該当する事業年度がある場合における同号に規定する前事業年度は当該開始日前一年以内に終了した各連結事業年度のうち最も新しい連結事業年度終了の日後に終了した各事業年度に限るものとし、
省略

措置法施行令附則(令和二年三月三一日政令第一二一号)

「新租税特別措置法施行令第二十七条の十三の規定」とは、
「法人税の額から控除される特別控除額の特例」のことです。

「新租税特別措置法第四十二条の十三第五項に規定する法人」を確認します。

5 法人(第四十二条の四第十九項第七号に規定する中小企業者(同項第八号に規定する適用除外事業者又は同項第八号の二に規定する通算適用除外事業者に該当するものを除く。)又は同項第九号に規定する農業協同組合等を除く。第一号及び第二号において同じ。)

措置法42条の13、5項

法人から次の2つの法人を除きます。
1、中小企業者(適用除外事業者・通算適用除外事業者を除く)
2、農業協同組合等

上記の法人からは、「経過通算法人」を除きます
「経過通算法人」とは、法人税法の附則29条で、
連結法人から自動的に通算法人に移行した法人をいいます。

(通算承認に関する経過措置)
第二十九条 令和四年三月三十一日において連結親法人に該当する内国法人(同日後に附則第十六条第一項又は第二項の規定によりなお従前の例により旧法人税法第四条の二の承認を取り消されたもの及び同日の属する連結親法人事業年度の期間内に旧法人税法第四条の五第三項の承認を受けたもの(附則第十六条第三項の規定によりなお従前の例により旧法人税法第四条の五第三項の承認を受けたものを含む。)を除く。)及び同日の属する連結親法人事業年度終了の日において当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結子法人については、同日の翌日において、新法人税法第六十四条の九第一項の規定による承認があったものとみなす。この場合において、その承認は、同日から、その効力を生ずる。

法人税法附則(令和二年三月三一日法律第八号)、29条

規定の続き

(法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置)
第四十五条の三、省略
租税特別措置法施行令第二十七条の十三第六項第一号の対象年度開始の日(以下この項において「開始日」という。)前一年(当該対象年度が一年に満たない場合には、当該対象年度の期間。以下この項において同じ。)以内に終了した各事業年度に連結事業年度に該当する事業年度がある場合における同号に規定する前事業年度は当該開始日前一年以内に終了した各連結事業年度のうち最も新しい連結事業年度終了の日後に終了した各事業年度に限るものとし、省略

措置法施行令附則(令和二年三月三一日政令第一二一号)

1つ目の経過措置は、「経過通算法人」を除きます
連結法人から通算法人に移行しなかった法人がこの経過措置の対象です。

前期に連結事業年度がある場合は、前事業年度が限定されます。

親        開始日
|ーーーーーーーーー|ーーーーーーーーー|

子    離脱
|ーーーー×ーーーー|ーーーーーーーーー|
  連結 → 単体   単体
      (限る)

マーカー部分が前事業年度に該当するということでしょうね。
(前事業年度から連結事業年度を除きます。)

対象年度の定義

平成三十年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(以下この条において「対象年度」という。)

措置法42条の13、5項の一部
前事業年度から単体事業年度を除く。

先に規定を載せます。

(法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置)
第四十五条の三 省略
経過通算法人に該当する新租税特別措置法第四十二条の十三第五項に規定する法人の開始日前一年以内に終了した各事業年度に単体事業年度(連結事業年度に該当しない事業年度のうち改正法附則第二十九条第一項の規定により通算承認があったものとみなされたことにより通算承認の効力が生じた日前に終了した事業年度をいう。以下この項及び第三項第二号において同じ。)がある場合における同令第二十七条の十三第六項第一号に規定する前事業年度は当該各事業年度のうち最も新しい単体事業年度終了の日後に終了した各事業年度に限るものとし、
省略

措置法施行令附則(令和二年三月三一日政令第一二一号)

1つ目の経過措置と似ていますが、こちらの方が確認しやすいと思います。
前期に単体事業年度がある場合は、前事業年度が限定されます。

単体事業年度とは、
連結事業年度に該当しない事業年度のうち、
通算承認があったものとみなされたことにより、
通算承認の効力が生じた日「前」に終了した事業年度をいいます。

親        開始日
|ーーーーーーーーー|ーーーーーーーーー|

子    加入
|ーーーー×ーーーー|ーーーーーーーーー|
  単体 → 連結 → 通算
      (限る)

マーカー部分が前事業年度に該当するということでしょうね。
(前事業年度から単体事業年度を除きます。)

合併等の事実に、自動的に通算承認を受けたことを含まない。

先に規定を載せます。

(法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置)
第四十五条の三 省略
同条第八項第一号に掲げる事実には新租税特別措置法第四十二条の十三第六項の法人経過通算法人に該当する場合における改正法附則第二十九条第一項の規定により通算承認があったものとみなされたことにより通算承認の効力が生じたことを含まないものとし、

同令第二十七条の十三第八項第二号に掲げる事実には新租税特別措置法第四十二条の十三第六項の法人経過通算法人に該当する場合における改正法附則第二十九条第一項の規定により通算承認があったものとみなされたことにより通算完全支配関係(新租税特別措置法第二条第二項第十号の七に規定する通算完全支配関係をいう。第三項において同じ。)を有することとなったことを含まないものとし、省略

措置法施行令附則(令和二年三月三一日政令第一二一号)

2つ規定されています。

1、同条第八項第一号に掲げる事実には、一定の事実を含みません。
2、同令第二十七条の十三第八項第二号に掲げる事実には、一定の事実を含みません。

それぞれの事実を確認します。

8 法第四十二条の十三第六項に規定する政令で定める場合は、同項の法人に次の各号に掲げる事実のいずれかが生じた場合とし、同項に規定する政令で定める日は、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める日とする。
一 法人税法第六十四条の九第一項に規定する親法人である当該法人について同項の規定による承認の効力が生じたこと その承認の効力が生じた日
二 当該法人が通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなつたこと その有することとなつた日
三 当該法人が通算親法人(当該法人が通算親法人である場合には、他の通算法人の全て)との間に通算完全支配関係を有しなくなつたこと その有しなくなつた日

措置法施行令27条の13

1号事実とは、グループ通算承認の効力が生じたことです。
「新租税特別措置法第四十二条の十三第六項の法人」を確認します。

6 前項に規定する合併等事業年度とは、同項に規定する法人が、合併、分割若しくは現物出資(分割又は現物出資にあつては、事業を移転するものに限る。以下この項において「合併等」という。)に係る合併法人、分割法人若しくは分割承継法人若しくは現物出資法人若しくは被現物出資法人であり、事業の譲渡若しくは譲受け(以下この項において「譲渡等」という。)に係る当該事業の移転をした法人若しくは当該事業の譲受けをした法人であり、又は特別の法律に基づく承継に係る被承継法人若しくは承継法人である場合その他政令で定める場合における当該合併等の日、当該譲渡等の日又は当該承継の日を含む事業年度その他政令で定める日を含む事業年度(当該法人の設立事業年度を除く。)をいう。

措置法42条の13、6項

6項の法人とは、5項に規定する法人の合併法人、分割法人などをいいます。

参考、5項の法人
法人から次の2つの法人を除きます。
1、中小企業者(適用除外事業者・通算適用除外事業者を除く)
2、農業協同組合等

合併等事業年度については、合併、分割、現物出資などの他に、
1、グループ通算の承認を受けたこと
2、通算完全支配関係を有すること
3、通算完全支配関係を有しないこと
の3つが政令で定める場合として規定されています。

連結納税から自動的にグループ通算制度に移行した法人を「経過通算法人」といいます。この経過通算法人については、グループ通算の承認を受けていますが、「上記1の事実には含めない」という意味です。
事実が生じなかった→合併等が生じなかった→
合併等事業年度がないことになります。

「経過通算法人」に該当しない場合(後から通算グループに加入した場合)は、政令で定める場合に該当し、合併等の事実がある(合併等事業年度がある)に該当します。

2号事実とは、子法人の通算完全支配関係が発生したことです。
1号事実が親法人、2号事実が子法人のことで、
2号の内容は、1号の内容(合併等事業年度がない)と同じでしょうね。

合併等の事実に、連結完全支配関係がなくなったことを含む。

先に規定を載せます。

(法人税の額から控除される特別控除額の特例に関する経過措置)
第四十五条の三 省略
同令第二十七条の十三第八項第三号に掲げる事実には新租税特別措置法第四十二条の十三第六項の法人経過通算法人を除く。)が連結親法人(当該法人が連結親法人である場合には、連結子法人の全て)との間に連結完全支配関係を有しなくなったことを含むものとし、同号に定める日には当該連結完全支配関係を有しなくなった場合におけるその有しなくなった日を含むものとする。

措置法施行令附則(令和二年三月三一日政令第一二一号)

3号事実とは、グループ通算制度から離脱したことです。
3号事実については、経過通算法人を除きます。
自動的にグループ通算制度に移行しなかったパターンです。

親        開始日
|ーーーーーーーーー|ーーーーーーーーー|
  連結        単体OR通算

子    離脱
|ーーーー×ーーーー|ーーーーーーーーー|
  連結 → 単体   単体

3号規定は、グループ通算制度の内容しか規定されていませんので、
通算完全支配関係には、連結完全支配関係がなくなったことを含み
その有しなくなつた日には、連結完全支配関係がなくなった日を含めることになります。

連結完全支配関係がなくなった場合は、
合併等の事実がある(合併等事業年度がある)ということですね。

まとめ

4つの経過措置をまとめました。

内容取扱い
1つ目、経過通算法人でない法人
(自動的に移行しなかった)
前1年以内の連結事業年度が含まれる場合は、連結事業年度を前事業年度に含めない。
(単体同士で比較するため。)
2つ目、経過通算法人である法人
(自動的に移行した)
前1年以内の単体事業年度が含まれる場合は、単体事業年度を前事業年度に含めない。
(連結と通算で比較するため。)
3つ目、経過通算法人である法人
(自動的に移行した)
グループ通算の承認を受けたこと、通算完全支配関係を有することに「自動的に移行した場合」を含まない。
→ 合併等の事実と
合併等事業年度がない。
4つ目、経過通算法人でない法人
(自動的に移行しなかった)
通算完全支配関係を有しないことに「連結完全支配関係を有しないこと」を含める。
→ 合併等の事実と
合併等事業年度がある。
経過措置のまとめ
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