法人課税信託と特定新規設立法人の特例との関係_判定対象者が個人の場合_前年上半期判定


今回は、法人課税信託と特定新規設立法人の特例との関係を確認してみましょう。

判定対象者が固有事業者や受託事業者の場合

消費税を納める必要があるかどうかの判定の1つに
・特定新規設立法人の特例
があります。

この特例に法人課税信託が追加された場合、
規定の読替えが必要となります。

読替規定を確認してみましょう。

6 固有事業者又は受託事業者が第二十五条の四第一項に規定する判定対象者である場合における当該固有事業者又は受託事業者に係る同条の規定の適用については、次に定めるところによる。

消費税法施行令第27条第6項柱書き、施行日令和6年4月1日

「固有事業者や受託事業者が特例の判定対象者となる場合」が前提となります。固有事業者は受託者本人、受託事業者は受託した人のことです。
同じ人ですが、税金を計算するときに別の人として取り扱います。

上記の読替規定は、判定対象者が
・個人の場合(1号・2号・3号)
・法人の場合(4号・5号・6号)
でそれぞれ3つずつあります。

今回は、個人の場合の3号規定を確認してみましょう。

三 当該固有事業者が個人である場合であつて、第二十五条の四第二項第一号ハに掲げる場合に該当するときは、同条第一項中「者をいう」とあるのは「者をいい、固有事業者(法第十五条第四項に規定する固有事業者をいう。)であるものに限る」と、「金額)」とあるのは「金額)に、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に当該判定対象者に係る各法人課税信託(法第十五条第一項に規定する法人課税信託をいう。)の受託事業者(法第十五条第三項に規定する受託事業者をいう。以下この項において同じ。)の六月の期間(事業年度(六月以下であるものを除く。)開始の日以後六月の期間をいい、当該六月の期間の末日を第三項において準用する第二十条の六第一項に規定する六月の期間の末日とみなした場合において同項各号に掲げる場合に該当するときは同項の規定によりみなされた期間とする。以下この項において同じ。)の末日が到来する場合には当該六月の期間における課税売上高(当該六月の期間を法第九条の二第二項に規定する特定期間とみなした場合における同項に規定する残額をいう。)の合計額を加算し、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に終了した当該受託事業者(当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に六月の期間の末日が到来する受託事業者を除く。)の各事業年度がある場合には当該各事業年度における課税売上高(第二十二条第一項に規定する各事業年度における課税売上高をいう。)の合計額(当該受託事業者の各事業年度の月数の合計数が六を超える場合には、当該合計額を当該合計数で除し、これに六を乗じて計算した金額)の合計額を加算した金額」とする。

消費税法施行令第27条第6項第3号、施行日令和6年4月1日

最初の「第25条の4」は、「基準期間相当期間」に関する規定です。

「第25条の4第2項第1号ハに掲げる場合に該当するときは、」とありますので、規定を確認してみましょう。

2 前項に規定する基準期間相当期間とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める期間をいう。
一 当該判定対象者が個人である場合 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める期間
ハ 新規設立法人の新設開始日の一年前の日の前日から当該新設開始日の前日までの間に六月三十日が到来する年(同日の翌日から当該新設開始日の前日までの期間が二月未満であるものを除く。)において当該判定対象者が個人事業者であつた場合(イ又はロに掲げる場合に該当し、かつ、当該イ又はロに定める期間に係る前項に規定する基準期間相当期間における課税売上高が五億円を超える場合を除く。) 当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間

消費税法施行令第25条の4第2項第1号ハ、施行日令和6年4月1日

新規設立法人の
・1年前の日の前日から
・新設開設日の前日まで
の間に6月30日が到来する年(注1)において、
当該判定対象者が個人事業者であった場合(注2)

注1、7月1日から新設開設日の前日までの期間が2月未満であるものを除く。
注2、イやロに該当し、イやロの期間の金額を5億円を超える場合を除く。
(イは前々年判定、ロは前年判定です。)

を指しています。

注1は、判定するための期間が短いため除外されます。
注2は、イやロが優先されるため除外されます。

読替規定に戻って、「同条第一項中「者をいう」とあるのは」とあります。同条は、消費税法施行令第25条の4(特定新規設立法人の特例)を指しています。

読替規定の内容

消費税法施行令第25条の4(特定新規設立法人の特例)を読み替えてみましょう。

(特定新規設立法人の納税義務の免除の特例)
第二十五条の四 法第十二条の三第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、判定対象者(前条第二項第一号に規定する他の者及び当該他の者と同条第一項に規定する政令で定める特殊な関係にある法人のうちいずれかの者をいい、固有事業者(法第十五条第四項に規定する固有事業者をいう。)であるものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の基準期間相当期間における課税売上高(当該基準期間相当期間の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額(当該判定対象者の基準期間相当期間が次項第二号イ又はロに定める期間に該当する場合には、当該残額を当該基準期間相当期間の月数で除し、これに十二を乗じて計算した金額)に、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に当該判定対象者に係る各法人課税信託(法第十五条第一項に規定する法人課税信託をいう。)の受託事業者(法第十五条第三項に規定する受託事業者をいう。以下この項において同じ。)の六月の期間(事業年度(六月以下であるものを除く。)開始の日以後六月の期間をいい、当該六月の期間の末日を第三項において準用する第二十条の六第一項に規定する六月の期間の末日とみなした場合において同項各号に掲げる場合に該当するときは同項の規定によりみなされた期間とする。以下この項において同じ。)の末日が到来する場合には当該六月の期間における課税売上高(当該六月の期間を法第九条の二第二項に規定する特定期間とみなした場合における同項に規定する残額をいう。)の合計額を加算し、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に終了した当該受託事業者(当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に六月の期間の末日が到来する受託事業者を除く。)の各事業年度がある場合には当該各事業年度における課税売上高(第二十二条第一項に規定する各事業年度における課税売上高をいう。)の合計額(当該受託事業者の各事業年度の月数の合計数が六を超える場合には、当該合計額を当該合計数で除し、これに六を乗じて計算した金額)の合計額を加算した金額をいう。)とする。
一 当該基準期間相当期間において行つた法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額(当該基準期間相当期間において行つた第十九条に規定する輸出取引等に係る対価の返還等の金額を含む。)
二 当該基準期間相当期間において行つた法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額

ポイントは、2つです。
・判定対象者は、固有事業者に限ります。
・受託事業者の課税売上高をプラスする。

カッコ書きを外してみます。

第二十五条の四 法第十二条の三第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、判定対象者(注1)の基準期間相当期間における課税売上高(注2)とする。

注1、前条第二項第一号に規定する他の者及び当該他の者と同条第一項に規定する政令で定める特殊な関係にある法人のうちいずれかの者をいい、固有事業者(法第十五条第四項に規定する固有事業者をいう。)であるものに限る。以下この項及び次項において同じ。

注2、当該基準期間相当期間の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額(注2-1)に、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に当該判定対象者に係る各法人課税信託(注2-2)の受託事業者(注2-3)の六月の期間(注2-4)の末日が到来する場合には当該六月の期間における課税売上高(注2-5)の合計額を加算し、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に終了した当該受託事業者(注2-6)の各事業年度がある場合には当該各事業年度における課税売上高(注2-7)の合計額(注2-8)の合計額を加算した金額をいう。

注2-1、当該判定対象者の基準期間相当期間が次項第二号イ又はロに定める期間に該当する場合には、当該残額を当該基準期間相当期間の月数で除し、これに十二を乗じて計算した金額

注2-2、法第十五条第一項に規定する法人課税信託をいう。

注2-3、法第十五条第三項に規定する受託事業者をいう。以下この項において同じ。

注2-4、事業年度(六月以下であるものを除く。)開始の日以後六月の期間をいい、当該六月の期間の末日を第三項において準用する第二十条の六第一項に規定する六月の期間の末日とみなした場合において同項各号に掲げる場合に該当するときは同項の規定によりみなされた期間とする。以下この項において同じ。

注2-5、当該六月の期間を法第九条の二第二項に規定する特定期間とみなした場合における同項に規定する残額をいう。

注2-6、当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に六月の期間の末日が到来する受託事業者を除く。

注2-7、第二十二条第一項に規定する各事業年度における課税売上高をいう。

注2-8、当該受託事業者の各事業年度の月数の合計数が六を超える場合には、当該合計額を当該合計数で除し、これに六を乗じて計算した金額

注1で、判定対象者が固有事業者に限定されます。

注2は、基準期間相当期間の課税売上高に関する規定です。
固有事業者の計算と受託事業者の計算が規定されています。

固有事業者の計算と受託事業者の計算は、イやロの場合と考え方は同じです。

イは、新設開設日から見て原則として2期前
ロは、新設開設日から見て原則として1期前
で判定する規定です。

イやロでは、12月31日が基準日となりますが、
ハ(今回確認している規定)では、6月30日が基準日となります。

固有事業者の計算は、変わりません。

受託事業者の計算

受託事業者の計算規定を確認してみましょう。

次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に当該判定対象者に係る各法人課税信託(注2-2)の受託事業者(注2-3)の六月の期間(注2-4)の末日が到来する場合には当該六月の期間における課税売上高(注2-5)の合計額を加算し、次項第一号ハに定める当該六月三十日の属する年の一月一日から六月三十日までの期間中に終了した当該受託事業者(注2-6)の各事業年度がある場合には当該各事業年度における課税売上高(注2-7)の合計額(注2-8)の合計額を加算した金額をいう。

2つの計算が規定されています。

A、1月1日から6月30日までの期間中に
・受託事業者の6月期間の末日
が到来する場合には、その6月期間の課税売上高をプラスします。
(6月期間の計算は、特例による6月期間を含みます。)

B、1月1日から6月30日までの期間中に終了した
・受託事業者の各事業年度
がある場合には、その各事業年度の課税売上高をプラスします。
(各事業年度の合計月数が6月を超える場合は、6月相当に換算します。)

AとBが重複する場合は、Aが優先となります。

イの判定は2期前、ロの判定は1期前、ハの判定は1期前の上半期となります。

ロの期間は1年間、ハの期間は6月となるため、1年で要件を満たさないものが、6月で要件を満たす場合もあるのかと考えました。判定期間(2月未満)が短い場合は、ロの1年間で判定できないため、ハの規定を設けているのでしょう。6月判定は、特定期間の考え方に合わせています。

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