今回は、消費税の国内取引の判定のうち、有価証券関係を2つを確認してみましょう。
資産の取扱い
消費税は国内取引にかかります。国外取引については消費税がかかりません。
参考規定
3 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。
消費税法第4条第3項、令和7年6月20日施行
一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)
以下省略
資産の売却や貸付けの場合は、
・その売却や貸し付けたタイミングで、その資産が所在していた場所
で国内取引がどうかを判定します。
ただし、所在していた場所が明らかでないものについては、政令(消費税法施行令)を確認する必要があります。
9つ目の有価証券などについては、さらに6つに分かれます。今回は、2つ確認してみましょう。
振替機関等が取り扱う有価証券等
3つ目は、振替機関等が取り扱う有価証券等です。
ハ 社債、株式等の振替に関する法律第二条第二項(定義)に規定する振替機関(同法第四十八条(日本銀行が国債の振替に関する業務を営む場合の特例)の規定により振替機関とみなされる者を含む。ハにおいて「国内振替機関」という。)及びこれに類する外国の機関(ハにおいて「振替機関等」という。)が取り扱う法別表第二第二号に規定する有価証券(ヘに掲げるゴルフ場利用株式等を除く。)又は第九条第一項第一号に掲げる権利(登録国債を除く。)若しくは同項第二号に掲げる持分(ハにおいて「有価証券等」という。) 当該振替機関等の所在地(複数の振替機関等により取り扱われる有価証券等(ハにおいて「重複上場有価証券等」という。)のうち当該重複上場有価証券等の売買の決済に際して振替に係る業務が国内振替機関又は国内振替機関に係る同法第二条第四項に規定する口座管理機関において行われるものにあつては当該国内振替機関の所在地とし、当該重複上場有価証券等以外の重複上場有価証券等にあつては当該外国の機関の所在地とする。)
長いのでカッコ書きを外してみましょう。
ハ 社債、株式等の振替に関する法律第二条第二項(注1)に規定する振替機関(注2)及びこれに類する外国の機関(注3)が取り扱う法別表第二第二号に規定する有価証券(注4)又は第九条第一項第一号に掲げる権利(注5)若しくは同項第二号に掲げる持分(注6) 当該振替機関等の所在地(注7)
改行します。
社債、株式等の振替に関する法律第二条第二項(注1)に規定する振替機関(注2)及びこれに類する外国の機関(注3)が取り扱う
1、法別表第二第二号に規定する有価証券(注4)
2、第九条第一項第一号に掲げる権利(注5)
3、同項第二号に掲げる持分(注6)
振替機関等が取り扱う
1、有価証券
2、権利
3、持分
の3つについては、振替機関等の所在地で判定します。
有価証券
1の有価証券については、法別表第2第2号とありますので、規定を確認してみましょう。非課税に関する規定です。
二 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項(定義)に規定する有価証券その他これに類するものとして政令で定めるもの(ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に係るものとして政令で定めるものを除く。)及び外国為替及び外国貿易法第六条第一項第七号(定義)に規定する支払手段(収集品その他の政令で定めるものを除く。)その他これに類するものとして政令で定めるもの(別表第二の二において「有価証券等」という。)の譲渡
消費税法別表第2第2号、令和7年6月20日施行
振替機関等が取り扱う有価証券については、振替機関等の所在地で判定します。ただし、ゴルフ場利用株式等については除外されます。
(ゴルフ場利用株式等については、施設の所在地で判定します。)
有価証券に表示されるべき権利
2の権利については、第9条第1項第1号とありますので、規定を確認してみましょう。非課税に関する規定です。
(有価証券に類するものの範囲等)
消費税法施行令第9条第1項第1号、令和7年4月1日施行
第九条 法別表第二第二号に規定する有価証券に類するものとして政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 金融商品取引法第二条第一項第一号から第十五号まで(定義)に掲げる有価証券及び同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利(これらの有価証券が発行されていないものに限るものとし、電子決済手段(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する電子決済手段をいう。第四号及び第四項並びに第十一条において同じ。)に該当するものを除く。)
振替機関等が取り扱う有価証券に表示されるべき権利については、振替機関等の所在地で判定します。有価証券が発行されていないものに限定され、電子決済手段に該当するものは除外されます。
登録国債については、登録機関の所在地で判定しますので、カッコ書きで除外されています。
持分
3の持分については、同項(第9条第1項)第2号とありますので、規定を確認してみましょう。非課税に関する規定です。
二 合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、法人税法第二条第七号(定義)に規定する協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分
消費税法施行令第9条第1項第2号、令和7年4月1日施行
振替機関等が取り扱う
・合名会社、合資会社、合同会社の社員の持分
・法人税法に規定する協同組合等の組合員や会員の持分
・その他法人の出資者の持分
については、振替機関等の所在地で判定します。
振替機関等が取り扱う
1、有価証券
2、有価証券に表示されるべき権利
3、持分
の3つを併せて、有価証券等といいます。
振替機関等が取り扱わない有価証券等
4つ目は、振替機関等が取り扱わない有価証券等です。
ニ 第九条第一項第一号若しくは第三号に掲げる権利(登録国債を除く。)又は同項第二号に掲げる持分(ハに掲げる有価証券等を除く。) これらの権利又は持分に係る法人の本店、主たる事務所その他これらに準ずるものの所在地
・第9条第1項第1号や第3号の権利
・第9条第1項第2号の持分
については、権利や持分の法人の
・本店
・主たる事務所
・これらに準ずるもの
の所在地で判定します。
登録国債については、登録機関の所在地で判定しますので、カッコ書きで除外されています。ハに掲げる有価証券等は、振替機関等が取り扱う有価証券等のことで、振替機関等の所在地で判定しますので、カッコ書きで除外されています。
参考情報、消費税法施行令第9条第1項第3号、非課税に関する規定
三 株主又は投資主(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十六項(定義)に規定する投資主をいう。)となる権利、優先出資者(協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)第十三条第一項(優先出資者となる時期等)の優先出資者をいう。)となる権利、特定社員(資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第五項(定義)に規定する特定社員をいう。)又は優先出資社員(同法第二十六条(社員)に規定する優先出資社員をいう。)となる権利その他法人の出資者となる権利
消費税法施行令第9条第1項第3号、令和7年4月1日施行
まとめ、資産と判定場所
・振替機関等が取り扱う有価証券等 振替機関等の所在地
・上記以外の有価証券等 本店等の所在地
・登録国債 登録機関の所在地
・ゴルフ場利用株式等 施設の所在地
参考情報
重複上場有価証券等の取扱い
振替機関等の所在地のカッコ書きを確認してみましょう。
複数の振替機関等により取り扱われる有価証券等(ハにおいて「重複上場有価証券等」という。)のうち当該重複上場有価証券等の売買の決済に際して振替に係る業務が国内振替機関又は国内振替機関に係る同法第二条第四項に規定する口座管理機関において行われるものにあつては当該国内振替機関の所在地とし、当該重複上場有価証券等以外の重複上場有価証券等にあつては当該外国の機関の所在地とする。
複数の振替機関等により取り扱われる有価証券等を「重複上場有価証券等」といいます。
重複上場有価証券等の売買の決済に際して振替に係る業務が
・国内振替機関
・国内振替機関に係る同法第二条第四項に規定する口座管理機関
において行われるものは、その国内振替機関の所在地で判定します。
上記以外の重複上場有価証券等については、国内振替機関に類する外国の機関の所在地で判定します。
金融商品取引法、有価証券の定義
(定義)
金融商品取引法第2条第1項、令和7年6月1日施行
第二条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。
一 国債証券
二 地方債証券
三 特別の法律により法人の発行する債券(次号及び第十一号に掲げるものを除く。)
四 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)に規定する特定社債券
五 社債券(相互会社の社債券を含む。以下同じ。)
六 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券(次号、第八号及び第十一号に掲げるものを除く。)
七 協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号。以下「優先出資法」という。)に規定する優先出資証券
八 資産の流動化に関する法律に規定する優先出資証券又は新優先出資引受権を表示する証券
九 株券又は新株予約権証券
十 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)に規定する投資信託又は外国投資信託の受益証券
十一 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資証券、新投資口予約権証券若しくは投資法人債券又は外国投資証券
十二 貸付信託の受益証券
十三 資産の流動化に関する法律に規定する特定目的信託の受益証券
十四 信託法(平成十八年法律第百八号)に規定する受益証券発行信託の受益証券
十五 法人が事業に必要な資金を調達するために発行する約束手形のうち、内閣府令で定めるもの
十六 抵当証券法(昭和六年法律第十五号)に規定する抵当証券
十七 外国又は外国の者の発行する証券又は証書で第一号から第九号まで又は第十二号から前号までに掲げる証券又は証書の性質を有するもの(次号に掲げるものを除く。)
十八 外国の者の発行する証券又は証書で銀行業を営む者その他の金銭の貸付けを業として行う者の貸付債権を信託する信託の受益権又はこれに類する権利を表示するもののうち、内閣府令で定めるもの
十九 金融商品市場において金融商品市場を開設する者の定める基準及び方法に従い行う第二十一項第三号に掲げる取引に係る権利、外国金融商品市場(第八項第三号ロに規定する外国金融商品市場をいう。以下この号において同じ。)において行う取引であつて第二十一項第三号に掲げる取引と類似の取引(金融商品(第二十四項第三号の三に掲げるものに限る。)又は金融指標(当該金融商品の価格及びこれに基づいて算出した数値に限る。)に係るものを除く。)に係る権利又は金融商品市場及び外国金融商品市場によらないで行う第二十二項第三号若しくは第四号に掲げる取引に係る権利(以下「オプション」という。)を表示する証券又は証書
二十 前各号に掲げる証券又は証書の預託を受けた者が当該証券又は証書の発行された国以外の国において発行する証券又は証書で、当該預託を受けた証券又は証書に係る権利を表示するもの
二十一 前各号に掲げるもののほか、流通性その他の事情を勘案し、公益又は投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定める証券又は証書