消費税の納税義務者


 前回、「預かった消費税」からを「支払った消費税」をマイナスできる要件(仕入税額控除)を確認しました。今回は、預かった消費税からを支払った消費税をマイナスした残りの消費税について確認します。

1_預った消費税(売上に係る消費税)
2_支払った消費税(仕入に係る消費税)
3_1-2=残りの消費税(納める消費税)←ここ

事業者が「残りの消費税」を確定申告して国に納めるんでしょう?と思いますよね。そうではなく、消費税を納める必要がある人(課税事業者)と必要でない人(免税事業者)に分かれます。

 この「課税事業者」と「免税事業者」は、以前お伝えした取引の「課税取引」「免税取引」とはまったく別物ですので、注意しましょう。

消費税を納める必要がある人(課税事業者)

 消費税を納める必要がある人(納税義務者)は、日本で「課税資産の譲渡等※」をした事業者です。※有料で物を売ったり、物を貸したり、サービスを行うこと。消費者は、消費税を直接国に納めることはありません。

 日本の消費税は、日本国内で消費した物やサービスの支出について税金をかける仕組みです。事業者が有料で物を売ったら、売った分だけ消費税が発生します。

 例えば、A事業者がボールペンを110円で販売した場合、10円の消費税が発生します。A事業者は消費者から10円の消費税を預っているため、この10円を国に納めるために、確定申告を行う必要が生じます。

 この煩雑な作業を避けるため、小規模事業者については、発生する消費税(預った消費税)を国に納めなくてもよい制度(免税事業者)があります。

消費税を納める必要がない人(免税事業者)

 納める人と納めない人とのボーダーラインは、1000万円です。「2年前」の「課税売上高」が1000万円以下であれば、消費税を納める必要がありません。

 税金を納めなくてもいいと思うと何だか得したような気分になりますが、消費税の難しいところは、納税義務者の判定です。この内容についてはまた後日。この判定のポイントは2つあります。

ポイント1
 「課税売上高」とは、課税資産の譲渡等を行ったときに受け取った金額(税抜金額)をいいます。

ポイント2
 消費税の納税義務は、当年分の課税売上高ではなく2年前の課税売上高で判定します。例えば、令和元年分の課税売上高が900万円(1000万円以下)であれば、令和3年分の課税売上高が1200万円(1000万円超)であっても、令和3年分の消費税を納める必要がありません。

 令和5年分の判定は、令和3年分の課税売上高で行います。例えば、令和3年分の課税売上高が1200万円(1000万円超)であれば、令和5年分の課税売上高が900万円(1000万円以下)であっても、令和5年分の消費税を納める必要があります。

 仮に令和元年に開業した個人事業者の判定は、次のとおりです。

年分課税
売上高
判定
令和1年分900万円平成29年の課税売上高0円のため
免税事業者(納税義務なし)
令和2年分1100万円平成30年の課税売上高0円のため
免税事業者(納税義務なし)
令和3年分1200万円令和1年分の課税売上高900万円のため
免税事業者(納税義務なし)
令和4年分800万円令和2年分の課税売上高1100万円のため
課税事業者(納税義務あり)
令和5年分900万円令和3年分の課税売上高1200万円のため
課税事業者(納税義務あり)
納税義務の判定
補助金などの受け取った場合

 令和3年中に新型コロナウイルスに関する補助金・給付金・時短要請協力金など受け取っている事業者が多いと思います。これらの補助金などは、国や市に物を販売して受け取ったお金ではありません(課税資産の譲渡等ではない)ので、消費税が発生しません(預った消費税がない)。

 消費税の納税義務は、2年前の課税売上高が1000万円以下であれば免除されます。仮に令和3年中に補助金を1100万円受け取ったとしても、補助金1100万円は課税売上げではないため、令和5年は免税事業者となります。

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