消費税法改正のお知らせ_令和4年4月


今回は、「消費税法改正のお知らせ」を確認します。

消費税法改正のお知らせ(令和4年4月、国税庁)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r04kaisei.pdf

インボイス発行事業者の登録の経過措置(期間延長)

下記の記事の問4、問5と重複する内容です。
インボイス制度の「お問合せの多いご質問」について

消費税法の改正のお知らせ(国税庁パンフレット)をまとめます。

  • 免税事業者について「登録日からインボイス発行事業者になれる経過措置期間」が、令和5年10月1日の属する課税期間中だけではなく、令和11年9月30日までの日の属する課税期間まで延長されました。
  • 上記の延長された期間中に、インボイスの登録申請を行った場合は、2年縛りがあり、すぐに免税事業者に戻れません。
  • 延長されなかった元からある期間(令和5年10月1日の属する課税期間)については、2年縛りがなく、すぐに免税事業者に戻れます。
  • 経過措置(特例)によりインボイスの登録を受けた場合、簡易課税制度を事後に選択できます。原則は事前選択です。
納税管理人の届出を行っていない場合の登録拒否と取消し等

この改正は、一般的な個人事業者や法人については関係ありませんので、省略します。

インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置の見直し

インボイスを入手できない場合、経過措置期間(6年間)については、前半3年間は80%の消費税控除、後半3年間は50%の消費税控除が可能です。

この経過措置の消費税控除については、区分記載請求書(紙)の保存が必要ですが、紙ではなくデータの受領について規定されていませんでした。今回の改正で、データの受領と保存についても、消費税控除が認められるようになっています。

仕入明細書等による仕入税額控除の適用要件の見直し

これは実務上影響があるので要注意です。改正前の規定では、売り手側の条件がなかったと思いますが、改正により、売り手側の条件として「課税資産の譲渡等に該当すること」が追加されています。

改正前であれば、売り手に条件がなかったため、仮に売り手が消費者であっても、買い手において消費税控除が可能でした。改正により売り手側の条件として「課税資産の譲渡等に該当すること」が追加されていますので、売り手が消費者の場合は、買い手において消費税控除ができなくなります。

課税資産の譲渡等は売り手が事業者であることが前提です。売り手が事業者でない消費者については、課税資産の譲渡等はできません。

課税資産の譲渡等の定義を確認します。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 資産の譲渡等
 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。

 課税資産の譲渡等
 資産の譲渡等のうち、第六条第一項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。

消費税法

改正後の「仕入明細書等による仕入税額控除に関する請求書等」の規定を確認します。

 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類及び電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第二条第三号(定義)に規定する電磁的記録をいう。第二号において同じ。)をいう。

 事業者がその行つた課税仕入れ他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当するものに限るものとし、当該課税資産の譲渡等のうち、第五十七条の四第一項ただし書又は第五十七条の六第一項本文の規定の適用を受けるものを除く。につき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で課税仕入れの相手方の氏名又は名称その他の政令で定める事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)

消費税法(インボイス改正後)

「課税仕入れ」について2つ条件が追加されています。

  • 他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当するものに限る
  • 当該課税資産の譲渡等のうち、第五十七条の四第一項ただし書又は第五十七条の六第一項本文の規定の適用を受けるものを除く。

上記1個目の「限る」が、今回の改正に伴うものでしょう。
2つ目の「除く」を確認します。

消費税法57条の4、第1項ただし書き

ただし、当該適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、この限りでない。

消費税法57条の4、第1項ただし書き

インボイスを発行しなくてもよい場合のことです。

以前、確認した「インボイスの交付義務が免除される場合」の内容です。

 売り手において、インボイスが交付義務が免除されるため、買い手においてもインボイスの保存義務がありません(帳簿の保存のみで足りる)。この場合、買い手の消費税控除についてインボイスの保存義務がないため、買い手において仕入明細書等を作成して、売り手の確認を受ける必要があるのかというと、確認を受ける必要がないことになります。

消費税法第57条の6、第1項本文

民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項(組合契約)に規定する組合契約によつて成立する組合、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第二条第二項(定義)に規定する投資事業有限責任組合若しくは有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第二条(定義)に規定する有限責任事業組合又は外国の法令に基づいて設立された団体であつてこれらの組合に類似するもの(以下この条において「任意組合等」という。)の組合員である適格請求書発行事業者は、第五十七条の四第一項本文、第二項又は第五項の規定にかかわらず、当該任意組合等の事業として国内において行つた課税資産の譲渡等につき適格請求書若しくは適格簡易請求書を交付し、又はこれらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供してはならない。

消費税法57条の6、本文 

本文規定について

上記規定は、任意組合等のインボイス交付禁止規定です。任意組合等については、原則としてインボイスの交付が禁止されています。インボイス発行事業者とインボイス発行事業者以外の事業者が混在するからです。

ただし書き(引用していません)について

ただし、任意組合等の全員がインボイス発行事業者であることについて、届出書を提出した場合は、インボイスを発行することができます。

上記本文の規定が適用される場合は、消費者の場合と同様、売り手においてインボイスが交付されないため、買い手においてインボイスが保存できません。

「インボイスを発行しなくてよい場合」と異なり、帳簿のみの保存で消費税控除ができる取扱いがありません(規定未確認)。原則どおり、インボイス発行が禁止されている任意組合等からの課税仕入れについては、消費税控除ができません。

経過措置期間における棚卸資産に係る消費税控除の調整規定の見直し

免税事業者が課税事業者になった場合、棚卸資産の消費税控除の調整規定があります。現行法では、課税事業者となる初日の前日に有する棚卸資産の消費税について、インボイス発行事業者からの課税仕入れに限定されていたのでしょうか。

改正により、インボイス発行事業者からの課税仕入れであるかに関係なく、棚卸資産の消費税控除の調整ができるように改正されています。現実問題として、前日に所有する棚卸資産がインボイス発行事業者から仕入れたものか、インボイス発行事業者以外の事業者から仕入れたものか、判別できないからでしょう。

特定収入を課税仕入れに充てた場合の仕入税額控除の調整規定の整備

一般の個人事業者や法人には関係がない改正です。

一定の法人(消費税法別表第3法人、公益法人など)については、受け取った補助金(対価性のない収入)について、消費税控除が制限される特例があります。

この消費税控除についてはインボイス制度の改正が考慮されていないため、インボイス制度が導入されると、2重制限(国等の特例計算とインボイスがないことによる消費税控除ができない)がかかるため、一定の調整規定が整備されています。詳しくは、下記の記事をご確認願います。

取戻し対象特定収入の改正_国等の特例の改正
取戻し対象特定収入の計算例_個別対応方式
取戻し対象特定収入の計算例_一括比例配分方式

PAGE TOP