源泉所得税を多く納付してしまった場合


今回は、源泉所得税を誤って多く納付してしまった場合の
還付手続きについて確認します。

内容

所得税を誤って多く納付してしまった場合、「更正の請求」が可能です。
更正の請求は、税務署長に対して訂正してくださいねと請求する手続きです。

源泉所得税を多く納付してしまった場合、同じ所得税という名前ですが、
「更正の請求」ではなく、「誤納額の還付請求」という手続きを行います。

[手続名]源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_22.htm

細かい内容ですが、源泉所得税については税額が給与等の支払額に応じて自動的に確定します。そのため、源泉徴収義務者が「誤納額の還付請求」をしなくても、税務署長等が多く受け取りすぎた源泉所得税(過誤納金)を還付しなければならないルールとなっています。

規定上、税務署長等に還付義務がありますが、通常多く受け取っていることを知らないため、基本的には源泉徴収義務者が還付請求する必要があります。

給与等に関する特例

誤って多く納付した源泉所得税が給与等に関するものであれば、
後日納付する給与等に関する源泉所得税と充当することができます。

[手続名]源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の充当届出https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_23.htm

例えば、8月10日の源泉所得税の納付状況が次の場合
正しい金額 12,000円
間違った金額 15,000円
過誤納金 3,000円(誤って3,000円多く納付してしまった。)

8月17日、誤りに気がついて充当届出書を提出

9月10日の源泉所得税の納付
正しい金額 20,000円
8月分充当 ▲3,000円
納付する金額 17,000円

誤った3,000円を9月の納付時に充当することができます。

ただし、充当期間がおおむね3か月以上にわたる場合や
給与等ではなく報酬等の過誤納金の場合は、還付請求が必要です。

参考規定

国税局長等の還付

(還付)
第五十六条 国税局長、税務署長又は税関長は、還付金又は国税に係る過誤納金(以下「還付金等」という。)があるときは、遅滞なく、金銭で還付しなければならない。
 国税局長は、必要があると認めるときは、その管轄区域内の地域を所轄する税務署長からその還付すべき還付金等について還付の引継ぎを受けることができる。

国税通則法

源泉徴収税額に係る過誤納金の還付

(源泉徴収税額に係る過誤納金の還付)
181~223共-6 源泉徴収税額に係る次に掲げる過誤納金は、当該源泉徴収税額を納付した徴収義務者に還付するものとする。この場合において、当該過誤納金が給与等に係るものであるときは、当該源泉徴収税額に係る納税地の所轄税務署長は、通則法第56条《還付》の規定による還付に代えて、当該徴収義務者から届出書を提出させ、当該過誤納金に相当する金額を、当該届出書を提出した日以後に当該徴収義務者が納付すべきこととなる給与等に対する源泉徴収税額(当該過誤納金の生じた給与等の支払をした事務所等に係るものに限る。)から控除させることにより、当該過誤納金を還付することができるものとする。

(1) 徴収義務者が源泉徴収税額として正当税額を超えて納付した場合におけるその納付した金額と正当税額との差額に係る過誤納金

(2) 源泉徴収の対象となった支払額が誤払等により過大であったため徴収義務者が返還を受けた場合におけるその返還を受ける前の支払額に対する税額その支払額からその返還を受けた金額を控除した後の支払額に対する税額の差額に係る過誤納金

(3) 源泉徴収の対象となった支払額が条件付の支払によるものであったため、その条件の成否により徴収義務者が既に支払った金額の全部又は一部の返還を受けた場合におけるその返還を受ける前の支払額に対する税額その支払額からその返還を受けた金額を控除した後の支払額に対する税額の差額に係る過誤納金

所得税基本通達

上記内容をまとめると

(1)について
給与等の支払額は正しい。源泉徴収税額も正しい。
単純に誤って過大に納付してしまった場合。

(2)について
給与等の支払額が過大。その結果、源泉徴収税額も納付額も過大。
後日、給与等の返還がある場合に差額が生じる場合。

(3)について
給与等の支払について条件がある場合。先に給与等を支払って、
条件未達等により給与等の返還を受けた場合に差額が生じるとき。

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