今回は、災害等により法人税の中間申告の期限が延長される場合を確認してみましょう。
国税通則法の取扱い
法人税の中間申告の期限は、原則として事業年度が始まった日から6月を経過した日から2月以内です。
例えば、事業年度の開始日がX年4月1日の場合、6月を経過した日がX年10月1日となり、その日から2月以内となりますので、X年11月30日が中間申告の期限となります。
災害などが発生している場合は、災害の内容に応じて、法人税の中間申告の期限が延長されます。この取扱いは、法人税や中間申告に限らないため、国税通則法(国税に関する一般的なルール)に定められています。
参考規定はこちら↓
(災害等による期限の延長)
国税通則法第11条、令和7年4月1日施行
第十一条 国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる
防衛特別法人税の取扱い
防衛特別法人税の規定を確認してみましょう。
(通算法人の災害等による防衛特別法人税中間申告書の提出期限の延長)
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法第23条、令和8年4月1日施行
第二十三条 国税通則法第十一条の規定により通算法人の第二十一条第一項の規定による申告書の提出期限が延長された場合には、政令で定めるところにより、他の通算法人についても、同法第十一条の規定により同項の規定による申告書の提出期限が延長されたものとみなす。
出だしで「国税通則法第11条の規定により」とあります。前述の内容のことです。
「通算法人の第21条第1項の規定による申告書の提出期限が延長された場合」は、通算法人の防衛特別法人税の中間申告書の提出期限が延長された場合という意味です。
要件を満たした場合、他の通算法人についても国税通則法の規定により防衛特別法人税の中間申告書の提出期限が延長されたものとして取り扱われます。
法人税の取扱い
法人税についても同様の規定が設けられています。
(通算法人の災害等による中間申告書の提出期限の延長)
法人税法第72条の2、令和7年4月1日施行
第七十二条の二 国税通則法第十一条(災害等による期限の延長)の規定により通算法人の第七十一条第一項(中間申告)の規定による申告書の提出期限が延長された場合には、政令で定めるところにより、他の通算法人についても、同法第十一条の規定により同項の規定による申告書の提出期限が延長されたものとみなす。
法人税法施行令を確認してみましょう。
(通算法人の災害等による申告書の提出期限の延長)
法人税法施行令第150条の3第1項、令和7年4月1日
第百五十条の三 国税通則法第十一条(災害等による期限の延長)の規定により通算法人の法第七十一条第一項(中間申告)の規定による申告書の提出期限が延長された場合には、他の通算法人についても、その延長された申告書に係る国税通則法施行令(昭和三十七年政令第百三十五号)第三条第一項から第三項まで(災害等による期限の延長)の規定により指定された期日まで、国税通則法第十一条の規定により法第七十一条第一項の規定による申告書(その延長された申告書に係る同項に規定する六月経過日の前日に終了する当該他の通算法人の同項第一号に規定する中間期間に係るものに限る。以下この項において同じ。)の提出期限が延長されたものとみなす。ただし、当該指定された期日が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限前の日である場合は、この限りでない。
期限の延長は、3つあります。
1、地域と期日を指定するもの
2、対象者の範囲と期日を指定するもの
3、期日を指定するもの
ある通算法人が上記1により申告期限が3月延長された場合、別の通算法人についても申告期限が3月延長されます。
延長期間が異なる場合
延長期間が異なる場合はどうなるのでしょうか?
例えば、次の場合で考えてみましょう。
・通算法人Aの延長期間 2月
・通算法人Bの延長期間 3月
・通算法人Cの延長期間 4月
誤っているかもしれませんが1つの考え方をメモしておきます。
この場合、4月延長(一番長い延長期間)に統一されます。ただし書きを確認してみましょう。
「ただし、当該指定された期日が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限前の日である場合は、この限りでない。」
「指定された期日が他の通算法人の中間申告書の提出期限前の日」となる場合が思いつきません。1つの通算法人の期限が延長された場合、他の通算法人の期限も延長されるからです。
以下、「ただし、当該指定された期日が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限(延長された後)前の日である場合は、この限りでない。」であると仮定します。
・延長される前の申告期限 11月30日
・通算法人Aの指定期日 1月31日(2月延長)
・通算法人Bの指定期日 2月28日(3月延長)
・通算法人Cの指定期日 3月31日(4月延長)
の場合、
当該指定された期日(Aの1月31日)が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限(Bの2月28日とCの3月31日)前の日である場合
該当しますので、他の通算法人BとCはみなされません。
指定期日
A、1月31日
B、2月28日 → そのまま
C、3月31日 → そのまま
当該指定された期日(Bの2月28日)が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限(Aの1月31日とCの3月31日)前の日である場合
該当しますので、他の通算法人Cはみなされません。
該当しませんので、他の通算法人Aはみなされます。
指定期日
A、1月31日 → 2月28日とみなされる。
B、2月28日
C、3月31日 → そのまま
当該指定された期日(Cの3月31日)が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限(Aの1月31日とBの2月28日)前の日である場合
該当しませんので、他の通算法人AとBはみなされます。
指定期日
A、1月31日 → 2月28日 → 3月31日とみなされる。
B、2月28日 → 3月31日とみなされる。
C、3月31日
結果、一番長い延長期間の4月に統一されると考えることができます。
「ただし、当該指定された期日が当該他の通算法人の同条第一項の規定による申告書の提出期限(延長される前)前の日である場合は、この限りでない。」
と考えることもできますが、この場合、通算法人の中で異なる期限(延長される期限と延長されない期限)が設定されることになり、仮決算による中間申告が難しくなると思います。
単にただし書きがない場合は、異なる延長期間をそれぞれの通算法人がみなし合うことになりますので、延長期間を揃えるための規定だと考えています。
もう1つの考え方は、通算法人であっても中間申告の期限延長の影響を受けない場合があり、期限が指定されることによって本来の申告期限が前倒しになることはないという意味です。
参考規定
防衛特別法人税に関する政令
(通算法人の災害等による防衛特別法人税中間申告書の提出期限の延長)
防衛特別法人税に関する政令第6条、令和8年4月1日施行
第六条 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第十一条の規定により通算法人の防衛特別法人税中間申告書の提出期限が延長された場合には、他の通算法人についても、その延長された防衛特別法人税中間申告書に係る国税通則法施行令(昭和三十七年政令第百三十五号)第三条第一項から第三項までの規定により指定された期日まで、同法第十一条の規定により防衛特別法人税中間申告書(その延長された防衛特別法人税中間申告書に係る法第二十一条第一項に規定する六月経過日の前日に終了する当該他の通算法人の同項第一号に規定する中間期間に係るものに限る。以下この条において同じ。)の提出期限が延長されたものとみなす。ただし、当該指定された期日が当該他の通算法人の防衛特別法人税中間申告書の提出期限前の日である場合は、この限りでない。
おまけ、防衛特別法人税の確定申告についても中間申告と同様の取扱いがあります。
(通算法人の災害等による防衛特別法人税確定申告書の提出期限の延長)
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法第26条、令和8年4月1日施行
第二十六条 国税通則法第十一条の規定により通算法人の前条第一項の規定による申告書の提出期限が延長された場合には、政令で定めるところにより、他の通算法人についても、同法第十一条の規定により同項の規定による申告書の提出期限が延長されたものとみなす。