特例対象外の貸付用の減価償却資産_所得税


今回は、減価償却資産の特例が使用できない「貸付用」について確認します。

貸付けに関する規定の関係

所得税法施行令では、「当該対象資産(貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)」とあり、単なる貸付けは特例の対象外、主要業務貸付けは特例の対象となります。今回確認する規定は、所得税法施行規則第34条の2(※)です。

(※)所得税法施行規則34条の2
(少額の減価償却資産の主要な業務として行う貸付けの判定)は、取得価額10万円未満の減価償却資産に関する規定です。一括償却資産(取得価額20万円未満)については、34条の2を準用する規定(所規34条の3)が設けられています。

主要業務貸付けに該当するもの(所規34条の2、1項)

形式的には主要業務でない貸付けであっても、
主要業務貸付けとして認められるものが次の3つです。

一 当該居住者に対して資産の譲渡又は役務の提供を行う者の当該資産の譲渡又は役務の提供の業務の用に専ら供する資産の貸付け

例えば、次のような場合
自分 → 固定資産の貸付け → 下請業者など
                  ↓
自分 ← サービス提供など ← 下請業者などが固定資産を利用

自分で固定資産を利用しないで、下請業者に固定資産を貸して、
その下請業者からサービスの提供を受ける場合などです。

固定資産を他人に貸していますが、その貸した利益が自分に戻ってきています。
租税回避目的ではないため、減価償却の特例が利用できます。

二 継続的に当該居住者の経営資源(業務の用に供される設備(その貸付けの用に供する資産を除く。)、業務に関する当該居住者又はその従業者の有する技能又は知識(租税に関するものを除く。)その他これらに準ずるものをいう。)を活用して行い、又は行うことが見込まれる業務としての資産の貸付け

かなり理解しづらいです。
カッコ書きを飛ばして読むと、

継続的に当該居住者の経営資源(※)を活用して行い、又は
行うことが見込まれる業務としての資産の貸付け

(※)経営資源とは、
業務用設備、業務に関する本人、従業員の有する技能や知識
その他これらに準ずるものをいいます。

継続的に本人の業務用設備などを活用して行う業務としての資産の貸付け、
だと理解しやすくなるかもしれません。

具体的な例については、所得税基本通達49-39の3にあります。

例えば、小売店舗の横にある駐車場の余ったスペースを利用して、
自転車などを貸し付ける事業が挙げられています。
(レアケースのような……)

三 当該居住者が行う主要な業務に付随して行う資産の貸付け

所得税基本通達では、建物を貸し付ける際の家具、電気機器などを貸す行為が挙げられています。考えてみたのが、建物を貸し付ける際の駐車場の貸付けでした。金額的に駐車場(構築物)が少額の固定資産になることはほとんどないでしょうし、駐車場だけで賃貸できることもあります。駐車場だと主要な業務そのものになるのでしょうね。

建物の貸付け=主要業務
家具、電気機器の貸付け=主要業務付随(家具だけ貸すことはない)
駐車場の貸付け=主要業務(駐車場だけ貸すことが可能)

主要業務貸付けに該当しないもの(所規34条の2、2項)

形式的に主要業務貸付けに該当するものであっても、
実質的に主要業務貸付けに該当しないものについては、
特例が利用できません。

具体的には、次のいずれか1つとAに該当すると
主要業務貸付けに該当しません。

1、資産を貸した後に、譲渡人がその資産を買い取る場合(買戻し)
2、資産を貸した後に、第3者が買い取るようにあっせんする旨の契約がある場合
A、貸付けの対価+資産の買取金額>本人の固定資産の取得価額×90%

金額をあてはめてみると、
B、本人の固定資産の取得価額 合計1000万円
C、貸付の対価+資産の買取金額=950万円
C>B×90% → 主要業務貸付けに該当しない。
となります。

本人が負担した金額について、貸付と譲渡で90%以上回収できることが約束されている状況です。形式的には主要業務貸付けですが、リスクを負わずに租税回避が可能であるため、上記の条件に該当する場合は、主要業務貸付けに含まないこととなります。

まとめ

まとめますと、〇が特例あり、×が特例なしです。
1、貸付け以外の用 〇
2、貸付けの用
 1、主要業務以外(単なる貸付け) ×
 2、主要業務、実質的(リスクあり、1項) 〇
 3、主要業務、形式的(リスクなし、2項) ×

参考規定など

(一括償却資産の必要経費算入)
第百三十九条 居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの(第百二十条第一項第六号及び第百二十条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条第一項の規定の適用があるものを除く。以下この項において「対象資産」という。)については、その居住者が当該対象資産(貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)の全部又は特定の一部を一括したもの(以下この項及び次項において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年以後三年間の各年の費用の額とする方法を選択したときは、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、当該一括償却資産につき当該各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該一括償却資産の取得価額の合計額(次項及び第三項において「一括償却対象額」という。)を三で除して計算した金額とする。

所得税法施行令

(少額の減価償却資産の主要な業務として行う貸付けの判定)
第三十四条の二 次に掲げる貸付け(次項の規定に該当する貸付けを除く。)は、令第百三十八条第一項(少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入)に規定する主要な業務として行われる貸付けに該当するものとする。

一 当該居住者に対して資産の譲渡又は役務の提供を行う者の当該資産の譲渡又は役務の提供の業務の用に専ら供する資産の貸付け

二 継続的に当該居住者の経営資源(業務の用に供される設備(その貸付けの用に供する資産を除く。)、業務に関する当該居住者又はその従業者の有する技能又は知識(租税に関するものを除く。)その他これらに準ずるものをいう。)を活用して行い、又は行うことが見込まれる業務としての資産の貸付け

三 当該居住者が行う主要な業務に付随して行う資産の貸付け

2 資産の貸付け後に譲渡人(当該居住者に対して当該資産を譲渡した者をいう。)その他の者が当該資産を買い取り、又は当該資産を第三者に買い取らせることをあつせんする旨の契約が締結されている場合(当該貸付けの対価の額及び当該資産の買取りの対価の額(当該対価の額が確定していない場合には、当該対価の額として見込まれる金額)の合計額が当該居住者の当該資産の取得価額のおおむね百分の九十に相当する金額を超える場合に限る。)における当該貸付けは、令第百三十八条第一項に規定する主要な業務として行われる貸付けに該当しないものとする。

(一括償却資産の主要な業務として行う貸付けの判定)
第三十四条の三 前条の規定は、令第百三十九条第一項(一括償却資産の必要経費算入)に規定する主要な業務として行われる貸付けに該当するかどうかの判定について準用する。

所得税法施行規則、施行日令和5年1月1日

(一時的に貸付けの用に供した減価償却資産)
49-39の2 令第138条又は第139条の規定の適用上、居住者が減価償却資産を貸付けの用に供したかどうかはその減価償却資産の使用目的、使用状況等を総合勘案して判定されるものであるから、例えば、一時的に貸付けの用に供したような場合において、その貸付けの用に供した事実のみをもって、その減価償却資産がこれらの規定に規定する貸付けの用に供したものに該当するとはいえないことに留意する。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

所得税基本通達

(主要な業務として行われる貸付けの例示)
49-39の3 規則第34条の2((少額の減価償却資産の主要な業務として行う貸付けの判定))(規則第34条の3((一括償却資産の主要な業務として行う貸付けの判定))において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用上、次に掲げる貸付けには、例えば、それぞれ次に定めるような行為が該当する。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

(1) 規則第34条の2第1項第1号に掲げる貸付け 居住者が自己の下請業者に対して、当該下請業者の専ら当該居住者のためにする製品の加工等の用に供される減価償却資産を貸し付ける行為

(2) 同項第2号に掲げる貸付け 小売業を営む居住者がその小売店の駐車場の遊休スペースを活用して自転車その他の減価償却資産を貸し付ける行為

(3) 同項第3号に掲げる貸付け 不動産貸付業を営む居住者がその貸し付ける建物の賃借人に対して、家具、電気機器その他の減価償却資産を貸し付ける行為

(注) 本文の(1)から(3)までに定める行為であっても、同条第2項に規定する場合に該当するものは、令第138条第1項又は第139条第1項に規定する主要な業務として行われる貸付けに該当しないことに留意する。

所得税基本通達

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