特例輸入者の納期限の延長


今回は、特例輸入者の納期限の延長に関する法案を確認してみましょう。

特例輸入者の納期限の延長

法案はこちら↓

3 特例輸入者(関税法第七条の二第一項(申告の特例)に規定する特例輸入者をいう。以下この項において同じ。)が、特例申告書をその提出期限までに提出した場合において、当該特例申告書に記載した第四十七条第一項第二号に掲げる消費税額の合計額の全部又は一部の納期限に関し、当該特例申告書の提出期限までにその延長を受けたい旨の申請書を同項の税関長に提出したときは、当該税関長は、当該課税貨物に係る消費税については、前条第一項の規定にかかわらず、その納期限を二月以内に限り延長することができる。この場合において、当該税関長は、消費税の保全のために必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該特例輸入者に対し、当該特例申告書に記載した消費税額の全部又は一部に相当する額の担保の提供を命ずることができる。

所得税法等の一部を改正する法律案

現行の納期限の延長規定は、次の3つです。
1、個別延長
2、包括延長
3、特例申告の延長

改正により上記3の延長規定が2つに分かれます。
1、個別延長
2、包括延長
3、特例輸入者の延長(新設)
4、特例委託輸入者の延長(範囲縮小)

特例輸入者制度についてはこちら↓

参考情報
税関、1901 特例輸入者制度の概要及びメリット(カスタムスアンサー)
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1901_jr.htm

ジェトロ、特例輸入申告制度のメリット:日本
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000A41.html

変更点は次の部分です。

「この場合において、当該税関長は、消費税の保全のために必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該特例輸入者に対し、当該特例申告書に記載した消費税額の全部又は一部に相当する額の担保の提供を命ずることができる。」

「消費税の保全のために必要があるとき認めるときは、
担保の提供を命ずることができる」が追加されていますので、
特例輸入者については、原則として担保提供が不要となります。

「保全のために必要があると認めるとき」は、
関税法基本通達7の8-1に規定されています。

(1)同項に規定する「保全のため必要があると認めるとき」は、例えば次の場合とする。
イ 過去1年間において、過少申告加算税又は無申告加算税の加算税を課された場合
ロ 過去1年間において、期限後特例申告を行った場合
ハ 直近の決算(四半期決算を含む。)時における流動比率が 100%を下回り、かつ、自己資本比率が 30%を下回っている場合

関税法基本通達

消費税も同様の基準ができるのでしょう。

特例委託輸入者については、
改正されていないため引き続き担保提供が必要です。

改正理由など

財務省、特例申告納期限延長に係る担保の取扱い緩和
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-of_customs/proceedings_customs/material/20231130/kana20231130siryo2-2.pdf

関税法の取扱い
・特例申告の原則は、保全担保(必要であれば担保提供を求める)
・特例申告の納期限延長は、必要担保
となっています。

改正により特例申告の納期限延長が、
必要担保から保全担保に緩和されるため、
消費税法も関税法に合わせて
必要担保から保全担保に緩和されます。

特例委託輸入者については、通関手続きのプロであっても、
財務状況等の確認を行っていないため、緩和措置の対象外となります。

帳簿の備付け等

消費税法の「特例輸入者」の定義が変わりますので、
帳簿の備付え等の規定についても
特例輸入者から「特例申告者」に変わります。
帳簿の備付け義務の対象者は同じです。

参考規定

関税法

(申告の特例)
第七条の二 貨物を輸入しようとする者であつて、あらかじめいずれかの税関長の承認を受けた者(以下「特例輸入者」という。)又は当該貨物の輸入に係る通関手続(通関業法(昭和四十二年法律第百二十二号)第二条第一号イ(1)(定義)に規定する通関手続をいう。以下同じ。)を認定通関業者(第七十九条の二(規則等に関する改善措置)に規定する認定通関業者をいう。第六十三条の二第一項、第六十三条の七第一項第三号イ及び第六十七条の三第一項第二号において同じ。)に委託した者(以下「特例委託輸入者」という。)は、申告納税方式が適用される貨物について、前条第二項の規定にかかわらず、当該貨物に係る課税標準、税額その他必要な事項を記載した申告書(以下「特例申告書」という。)を税関長に提出することによつて、同条第一項の申告を行うことができる。

関税法

・税関長の承認を受けた人を「特例輸入者」
・輸入の通関手続を認定通関業者に委託した人を「特例委託輸入者」
といいます。

2つをまとめて消費税法では、特例輸入者としていましたが、
・特例輸入者は保全担保
・特例委託輸入者は必要担保
と分ける必要が生じたため、
定義を特例輸入者から特例申告者に変更しています。


PAGE TOP