特定公益信託等と公益信託の消費税の改正


今回は、特定公益信託等と公益信託の消費税の改正を確認してみましょう。

公益信託に関する法律の改正

公益信託に関する法律の改正が予定されています。

公益信託に関する法律案の概要
https://www.cao.go.jp/houan/pdf/213/213gaiyou_3.pdf

公益信託が公益法人と比べて利用されていないため、
使いやすい制度に改めることが目的です。

消費税の取扱い

信託取引については、
実際に取引した人と消費税の計算をする人が異なります。
(法人税や所得税も同じ。)

改正前の取扱いを確認してみましょう。

(信託財産に係る資産の譲渡等の帰属)
第十四条 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に係る資産等取引(資産の譲渡等、課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りをいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)は当該受益者の資産等取引とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、法人税法第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託若しくは同項第二号に規定する特定公益信託等の信託財産に属する資産及び当該信託財産に係る資産等取引については、この限りでない。

消費税法第14条、施行日令和6年2月1日

「特定公益信託等」という定義が出てきます。
定義を確認してみましょう。

二 特定公益信託等 第三十七条第六項(寄附金の損金不算入)に規定する特定公益信託及び社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二条第十一項(定義)に規定する加入者保護信託をいう。

法人税法第12条第4項第2号、施行日令和6年2月1日

特定公益信託と加入者保護信託を合わせて、
特定公益信託等といいます。
(加入者保護信託は別の信託制度なので省略)

改正されると特定公益信託等が
「公益信託若しくは加入者保護信託」に変わります。

法人税では、
公益信託と加入者保護信託を合わせて
「公益信託等」といいます。

法人税法の特定公益信託等の定義が、

二 公益信託等
公益信託に関する法律(令和6年法律第_号)第2条第1項第1号(定義)に規定する公益信託

に改正されます。

公益信託の定義を確認してみましょう。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 公益信託 この法律の定めるところによりする受益者の定め(受益者を定める方法の定めを含む。第四条第三項において同じ。)のない信託であって、公益事務を行うことのみを目的とするものをいう。
二 公益事務 学術の振興、福祉の向上その他の不特定かつ多数の者の利益の増進を目的とする事務として別表各号に掲げる事務をいう。

公益信託に関する法律案

ポイントは2つです。
・受益者の定めのない信託
・公益事務を行うことのみを目的

公益事務については、別表に23個規定されています。
公益目的事業の23個と併せているのでしょう。

消費税では、公益信託等の定義がないため、
「公益信託若しくは加入者保護信託」と改正され、
「公益信託等」という定義は出てきません。

公益信託の特例の廃止

公益信託の特例が廃止されます。
附則を確認してみましょう。

(公益信託の特例)
第十九条の二 公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託(法人税法第三十七条第六項(寄附金の損金不算入)に規定する特定公益信託を除く。)をいう。以下この条において同じ。)の委託者又はその相続人その他の一般承継人(以下この項において「委託者等」という。)は当該公益信託の信託財産に属する資産を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に係る資産等取引(資産の譲渡等、課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りをいう。以下この項において同じ。)は当該委託者等の資産等取引とみなして、この法律の規定を適用する。
2 公益信託は、第十四条第一項ただし書に規定する法人課税信託に該当しないものとする。

消費税法附則第19条の2

特定公益信託に該当しない公益信託については、
「委託者」が信託財産に関する資産を有するものとして、
消費税の計算などを取り扱います。この特例が廃止されます。

法人課税信託等

消費税法の定義が、
「法人課税信託」から「法人課税信託等」に変更されます。
等は、公益信託を指します。

改正後の規定を確認してみましょう。

法人課税信託等の受託者に関するこの法律の適用

第十五条 前条第一項ただし書に規定する法人課税信託又は同項ただし書に規定する公益信託(以下この条において「法人課税信託等」という。)受託者は、各法人課税信託等の信託資産等(信託財産に属する資産及び当該信託財産に係る資産等取引をいう。以下この条において同じ。)及び固有資産等法人課税信託等の信託資産等以外の資産及び資産等取引をいう。以下この条において同じ。)ごとに、それぞれ別の者とみなして、この法律(第五条、前条、第二十条から第二十七条まで、第四十七条、第五十条及び第五十一条並びに第六章を除く。以下この条において同じ。)の規定を適用する。

新消費税法第15条

公益信託の特例が廃止されて、
法人課税信託と同じ取扱いになるのかと思いましたが、
改正後は、公益信託に限定されています。

ということは、
委託者に対する課税ではなく、
受益者に対する課税に変わるのでしょう。

課税関係
公益信託に該当する→法人課税信託と同じ。
公益信託に該当しない→受益者等課税信託と同じ。

移行制度

公益法人の移行制度と同様に
公益信託についても移行制度が設けられています。

参考情報

公益信託、一般社団法人信託協会
https://www.moj.go.jp/content/001187489.pdf

現行法、公益信託ニ関スル法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000062


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